あらすじ
天明の浅間焼け(大噴火)で土石流に襲われた鎌原村。村人の8割が死に、高台の観音堂に避難した者など93人だけが生き残った。現地に派遣された幕府勘定吟味役の根岸九郎左衛門は、残された村人を組み合わせて家族を作り直し、故郷を再建しようとするも、住民達の心の傷は大きく難航していた。出世頭の若き代官・原田清右衛門が進言するとおり、廃村と移住を選択すべきなのか、根岸は苦悩する。さらに幕府側にも不穏な動きが――。「故郷」と「生きる意味」を問い直す物語。
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Posted by ブクログ
予約本借りに行ったついでに新刊コーナーから適当に選んだ一冊でした。偶然の出会いは大切です。こんな良本を引き当てるんですからね!
さて、登場人物を見ると実際の人物で、実は妖怪本「耳袋」の著者でもあると知って驚きで、話の後半にその件も書かれていて二度びっくりでした。
浅間山の噴火による被害で村ごと飲まれ人も村も失われたそんなところを再建しようとする公人の奇特さともいえる人情が読んでいて心が熱くなった。ばらばらになった被災者同士で新たな家族づくりという提案には驚きだったが、一人ひとりの立ち直りの様を夢中で読み、ずーっと心を閉ざした人物が最後殻を割った瞬間はじわっと来た。損得なく支援に乗り出す市民、そして田沼氏、なにより最後の手伝普請のやり取りは感涙もので、どこまでが実際の話なのかはさておきこれを古き良き日本人の物語でいい本読んだなぁと嬉しくなった。
今の日本では絶対ありえないよね。期待もしていないけど。
ただ、こういった災害の歴史は何度も繰り返し、東北の地震・津波もそうだし、浅間山の噴火も記憶に新しい、こういった繰り返される災害があってもその土地に住まう人の根強さを想う。さて、関西の南海トラフ地震まで生きていることやら。