あらすじ
歴史総合は高校入学後はじめて学ぶことになる歴史科目です。でも、中学までの歴史とは少し違います。
まず、世界史と日本史を結び付けた全体的な歴史を学ぶことになります。また、歴史用語の暗記ではなく、歴史について考え、理解することが求められていますし、生徒自身が「問い」について話し合い、表現する機会も多くなります。
そこで! 高校教師の経験もある大学の先生が、歴史総合の考え方をお伝えします。問いと資料を使って「歴史的見方・考え方」を身につければ、怖いものは何もありません。
歴史総合という未知の世界へようこそ!
【内容】
はじめに
序章 歴史総合の見方・考え方をささえる5つの視点
コラム 18世紀までの世界と日本をどう学ぶか
<第1部 近代化と私たち>
第1章 工業化の光と影――産業革命
第2章 市民社会の成立――市民革命
第3章 近代国家の形成――国民国家とナショナリズム
第4章 アジアの開港と開国――世界市場と主権国家体制
第5章 アジア諸国の近代化――立憲制
第6章 世界分割の時代――帝国主義
コラム 冒頭の「問い」コーナーと「現代的な諸課題」コーナー
<第2部 国際秩序の変化や大衆化と私たち>
第7章 総力戦で変わる世界――第一次世界大戦
第8章 戦間期の国際秩序――ヴェルサイユ体制とワシントン体制
第9章 大衆化の光と影――民主主義とファシズム
第10章 国際秩序の崩壊と再生――第二次世界大戦と国際連合
コラム 大学入試は変わるのか
<第3部 グローバル化と私たち>
第11章 アジアとアフリカの独立――脱植民地化
第12章 グローバル化の光と影――高度経済成長と環境問題
第13章 国民国家をこえる挑戦――地域統合と地域連携
コラム 歴史学者が書いた本を読もう!
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Posted by ブクログ
とても勉強になる本。
先ず、歴史総合の考え方だが、歴史は過去から現在へとすすんでいるので、その順序どおりに学ぶべきだという「通史主義」が重視されていない。現代社会における課題から因果を紐解いていくアプローチなのだ。
高校生向けだが、歴史総合は2022年度の学習指導要領改正によって新設された科目のため、今の学生じゃないと通らなかった道。通史にも良さはあるが、課題からの逆引きのような学びの方が実用的だと思う。
なんで韓国と日本の今の関係は微妙なのか。なぜ、中国は模範から軽蔑すべき対象へと変わってしまったんだろうか。ヒトラーによる独裁は、民主主義の結果として生まれたのだろうか。
ー イギリスやフランスといったヨーロッパ諸国は、アフリカ西岸から黒人奴隷を買いつけてカリブ海地域まで移送し、それぞれの国の植民地にあるプランテーションの経営者に黒人奴隷を売る。プランテーションでは奴隷を働かせて砂糖などの商品をつくり、ヨーロッパに輸出する。砂糖は当時のヨーロッパでは高級品で、莫大な利益が出るんだ。これだけ大規模な貿易なら、たしかに大きな利益が出そうだ。だから17世紀後半くらいから、イギリスとフランスはこの貿易をめぐってはげしくあらそった。イギリスが、北アメリカ植民地などをめぐるフランスとの植民地抗争に勝利したのが18世紀なかばで、これで大西洋三角貿易の利益を独占することができるようになった。この貿易の利益が、産業革命を進めるための資本になっていった。だから18世紀後半に産業革命ができたんだね。
ー 劣悪な環境から労働者を救い出そうという議論は起こった。社会主義だ。社会主義は、「資本主義が労働者をどこまでも酷使する体制なので、これを転換させなければならない」という思想だ。もちろん環境問題だけでなく賃金や労働時間などの是正、そして資本主義社会そのものをひっくりかえそうという革命の思想にもなる。社会主義の主張は、現代でも過労死の問題などにつながっている。
ー フランス国会での首相の演説(1885年)ここで明らかにしたい第2の点は、この問題には人道的で文明論的な側面があるということです。優等人種は、劣等人種に対して、権利を保持しています。優等人種が権利を保持しているのは、優等人種には義務も課せられているからです。すなわち、劣等人種を文明化するという義務です。
この本を読んでいて思うのは、日本人の自虐史観というのは完全に無罪を主張する逆張りになってはならず、罪を否定せず、両極端になる事を避けなければならないという事だ。本書が左寄りという意味ではないが、右に左に、我々の議論は極端になりがちだ。
それと最後に引用するが、次の文章は極めて重要だと思う。日本人が全てに優先してこだわった「国体の正体」でもあったはずだ。
ー なぜ日本政府は、これほどまで共産主義をおそれたんだろうか?1920年代という時代を考えてみよう。共産主義について何か世界的な事件がなかった?「ロシア革命、ソ連の成立」一そうだ。1917年に社会主義革命が成功し、内戦がおこって日本はシベリア出兵までして、革命政権は崩壊するかと思ったらそうならず、1922年にソ連が成立した。その過程でロシア皇帝一家も処刑された。これは、いまの私たちが感じるよりもずっと直接的な恐怖を、天皇制をいただく大日本帝国にあたえたはずだ。
Posted by ブクログ
面白い問いも複数載ってる。高校生はもちろん、先生方にもぜひ。
科学的探求学習のようになっている部分も多々あり、授業のイメージも湧いてくる。
もはや、検定通っていただいて、これを教科書として使いたいレベル。
Posted by ブクログ
ドイツでは国民としての意識が先にあり、その後、統一国家が成立した。イタリアでは先に統一国家ができたが、国民としての意識は希薄だった。p.77
日米修好通商1858には、アヘンの日本への輸入は禁止と書いてある。約20年前にアヘン戦争1840があったから。p.101
ドイツの失業率。世界恐慌直後の1929年に10%、1930年に15%、1931年に25%、1932年に30%。ナチ党は1928年に議席数12、1930年に107、1932年に230、1933年に288。ドイツ人は失業して生活が困窮する中、ナチ党の経済政策に期待した。p.213
日本には独裁者が登場せず、軍部が力を握った。p.221
独ヒトラーはチェコの(ドイツ系が多く住む)ズデーテン地方の割譲を要求した。英仏はこれを受け入れた。英仏は反共のナチスドイツがソ連への対抗勢力になると期待していた。力をつけたドイツとの全面戦争は避けたかった。p.242
国際連合の加盟国は発足時わずか51カ国。ほとんどの国が植民地だったから。p.261
経済白書1956。戦後の経済成長は谷が深かったために大きく浮揚(ふよう)した。今までの成長は回復によるものであり、今からの成長は近代化によるものとなる。もはや「戦後」ではない。
ASEAN1967。ベトナム戦争が深刻化する中、反共親米の組織として始まる。ニクソンがドルと金の交換を停止1971し、アメリカの影響力が低下したあと、ASEANは米ソ対立にたいして中立を宣言。p.321
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『教養のグローバル・ヒストリー:大人のための世界史入門』★3