あらすじ
協調性がなくてマイペース、それでいて人畜無害な、いい人――そんな羽野未知生が不慮の事故に遭い、41歳の若さで突然この世を去った。葬儀に参列した高校の同級生や大学時代の元カノ、会社員時代の同期や上司は、在りし日の想い出を振り返りながら、自分自身の〈今〉を見つめ直す。そして遺された家族もまた、未知生のいない日常を歩みはじめるが――。 イマイチつかみどころの無いキャラの未知生と、生前うっかり関わってしまった者たちの〈これから〉を描く書き下ろし長編小説。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
異色の作品。未知生さんがすべての鍵なのに、いつまでたっても顔がわからない。装丁画のように顔が見えない。たくさん話している場面があるのに、さっぱりだ。でも、そこがいい。
Posted by ブクログ
未知生さんの事が頭から離れない。
空気が読めなくて、どんくさい。
でも現実にいそうだなとも思える。
物語は、41歳にして不慮の事故で亡くなった羽野未知生に生前関わった男女七人の視点で綴られる。
未知生に出逢った人達、それぞれの物語も面白い。
皆の語りで、おぼろげだった未知生さんの輪郭が徐々に形成されていったが、終盤で彼の抱えていたものを知り、それまでに抱いた印象は一変。
元カノに向けた言葉も、通勤電車内で繰り返された光景も、肝試しビルで起きた出来事も、全てに理由があったなんて。
読後は未知生さんの苦悩と献身に胸が一杯。
Posted by ブクログ
全体的に不思議なあっさりとした著者の文章が好きです。
主人公について、多くの人物の観点で語られたり、それぞれの人生にどのような関わりがあったのかを淡々と読んでく感じが面白く、ついつい読み進めてしまいます。
かといって、もう今日はここまで、って思った時点で読書をやめても、次はまた新しい気持ちで読める、やっぱり不思議な本で、私は好きです。
Posted by ブクログ
連作短編。亡くなったみちおさんの思い出を振り返る話。
読み進めていくうちにだんだんと彼のことが分かっってきて、みちおさんの掴みきれないキャラクターに惹かれた。
最後の章は少し驚いた。
Posted by ブクログ
他人から見た自分なんて人それぞれなんだなー。
いい人のつもりでもそうじゃないと思われる場合もあるし、悩みとか隠してたら悩みない人、とか。
未知生さんってタイトルが全てを物語っているではないか!
人との付き合いはある意味都合のよい思い込みかも‥
Posted by ブクログ
不思議な小説。
でも、嫌いじゃないよ、むしろ好き❤️
不慮の事故…息子さんを助ける代わりに亡くなった一人の男性の思い出話を、いろんな人が語る…的なお話で、
まあ、主人公が、小説のタイトル未知生くんね。
淡々とした、ちょっと変わった人なんだけど、本当にいい人みたいで、ちょっと憧れる感じ。
Posted by ブクログ
もう亡くなってしまっているのだ、未知生さんは。
それも読み始めたと同時に、最初の行の最初の一文で。
そしてそこから始まるのは、未知生さんという男を知るための物語だ。
色々な人によって語られていく未知生さんを知るたびに、とらえどころのない未知生さんにどんどん惹かれていく。
物語が終って、私の中に私だけの未知生さんが出来上がったとき
猛烈に淋しくなるのだ。
あぁ、未知生さんはもう亡くなってしまったのかと。
Posted by ブクログ
不慮の事故で亡くなった羽野未知生41歳。協調性がなくマイペース、人にものを頼めないけど人から頼まれると受け入れる、周りに対してだけじゃなく自分のことにも無頓着、そんな未知生とうっかり関わってしまった同級生、元カノ、会社の同期と上司、そして家族目線で描かれる七つの物語。
設定からして「横道世之介」をなんとなく思い出してしまう。人を庇っての電車のホームからの転落死というのも同じ。だからか、同じような感動を期待して読んだ。
「横道〜」と違うのはあちらが世之介が常に主人公であるのに対し、こっちは未知生さんと関わった人物の“今”により重点が置かれていること。
掴みどころがなく、そばにいてもやり過ごしてしまうか、むしろイラッとしそうな人物だけど、実はとてもピュアで、人を受け入れるという一点において関わった人に大きな影響を与える人物。
それぞれの目線から、未知生の人物像が描き出されるが、そのどれもが捉えどころがない。
鈍臭くてうっかりビルから落ちたと同級生から思われているけど、真実はそうではなかったこと。その時の彼の胸の内が、たまたま跨線橋で会った無関係な高校生に語られたこと。
人は人を自分が見たようにしか理解できないんだなぁとしみじみ思う。
それでも、最後に路斗が感じた思い、
「ぼくはぼくの知らないたくさんの誰かと知らない未知生さんを分かち合って生きている。未知生さんがどんな人だったかなんて、誰にも分からないのだ。もしかしたら本人も分かっていなかったのかもしれない」
というくだりには深く納得。
13年の歳月をかけて、父親の死を乗り越えた路斗の話で締めくくられた希望ある物語で読後も良き。