あらすじ
14世紀初頭、アルプス地方。イタリアへと通じるザンクト=ゴットハルト峠には、非情な番人が守る関所があった。難攻不落をもって知られるその場所を、人々はこう呼んだ。ヴォルフスムント――“狼の口”と。 残酷な代官ヴォルフラムが守るこの関所を、様々な手段で攻略しようとする主人公たち。圧倒的な作画によって再現される中世人の生活様式や、鎧甲冑、鎖帷子、武器、兵器の数々……。そして、圧政者に立ち向かう市井の人々の身を賭したドラマをダイナミックに描き上げた叛乱アクション巨編が装いも新たにrevised editionとしてカバーを久慈光久が描きおろし、ふたたび刊行!
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Posted by ブクログ
独立の4巻。
血と魂で勝ち取った独立。安っぽく魂とか使いたくはないのですが、自分たちの生まれ育った地を、自分たちのもとに取り戻すために、関わったすべての人々が命を擲つことを拒絶しなかった、という覚悟と執念を思うと、彼らを動かしたものは魂だったのではないか、と思ってしまいます。
多くの先達のもとに勝ち取った自らの国。
多くの時が過ぎても、いまだに他の国の侵略を許さず、独立を守り続けている誇り高さは、歴史としての重さはもちろんのこと、過去の出来事として肌感覚で感じているからでしょうね。圧政と服従の辛酸と、独立のための犠牲と尊厳を。
決戦となったモルガンテンの戦い。
「狼の口」の名付けをさらにここで回収。難攻不落で苦しめられた名乗りを、敵の大将を罠に嵌めたところで、あえて持ち出すのが素晴らしい。これまでの苦渋を、ここで全てやり返して、自分たちの土地から追い出すんだ、という気概の強さ。
このセリフを言わせたいがためのタイトルだったのではないか、と思ってしまいます。
立ち上がる民衆の心の中にある代官への復讐と独立への気概。
言葉にすると相反する気持ちであるようですが、お互いの感情に互いに燃料を与え続け、決して消えない炎となって、戦士たちを奮い立たせてゆく。
そこから生まれる戦いの残酷さは、直視に耐えないものでもあるのですが、その泥濘さを通してしか独立というものは、なし得ないものだったのだと思います。
だからこそ、その信念のもとに独立を保っているということが誇れる歴史になっているのではないでしょうか。
いい物語を読みました。