【感想・ネタバレ】精神医療の現実のレビュー

あらすじ

躁うつ病や統合失調症はもとより、いまや「発達障害」も一般名称化した。もはや「心の病」は特殊ではない風潮の一方、医療現場では何が変わり、何が変わらず、何が起こっているのか。最前線を走り続ける現役医師が、精神医療「内部」の諸問題、精神医療と「外部」事象との問題、精神医療と心理社会的な問題との関連を批評・露呈させる。

第1章 医療の中の精神科
第2章 流行の病
第3章 精神病院の風景
第4章 精神鑑定のウソ
第5章 カウンセリングと精神分析
第6章 ヒステリーと神経症
第7章 精神療法のワナ
第8章 精神疾患の治療法
第9章 特異な精神症状

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Posted by ブクログ

たまたまメディアで岩波明氏のことを知り、本書『精神医療の現実』の著者として紹介されていたのをきっかけに本書を読んだ。精神医療に関して全く知識がなかったが、本書の明快な文章に引き込まれて、一気に読んでしまった。
まず、精神医療の歴史をたどって説明しているところが素晴らしい。精神医療は他の医療以上に、また他の科学以上に紆余曲折があった。例えば、フロイトの精神分析は「有効性がない」ことが明らかになり、現在は使われなくなっているが、多くの心理療法や臨床心理学のベースになっているのはフロイトの理論であり、最近はやっている「認知行動療法」は精神分析の実質的な後継者であると喝破している。
また、精神医療をより大きな枠組みから捉え直しているところも面白い。実はフロイトの精神分析はマルクス主義と相性が良いと言う。フロイトは精神分析を科学にしようと試みた。つまり、精神を物質のように扱うことを試みた。そして、マルクス主義の唯物論はもちろん、心も精神も物質的な説明を試みる。
フロイトの精神分析は人文科学系の分野にも影響を与えた。ミシェル・フーコーやジャック・ラカンなどの哲学に影響を与え、レヴィ・ストロースの構造人類学にも影響を与えた。
本書の全てを鵜呑みにする気はないが、大変勉強になる一冊であった。

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2025年08月31日

Posted by ブクログ

久しぶりに岩波明の本を読んだ。
新書ということもあってか、ここまで毒舌家だったっけと感じるくらいの毒舌ぶり。
特に、
新型うつは医師でもあるタレントの香山リカが命名した
てなくだりは、思わず吹き出してしまった。他にも読んでいて失笑する場面が多々。
まあ素人の私ですら「トラウマ」とか「サイコパス」とか、巷では全く違う意味で用いられているよな、と常々感じているから、専門家の岩波先生にはその誤用が腹に据えかねているのでしょうね、きっと。
そうそう件のフジテレビの元女子アナの「トラウマ」が診断名として確立したときのそのままの心的外傷だったら、そりゃまごう事なき「性暴力」の被害者ですわなあ。(分かってくださる方々がいると固く信じています)

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2025年06月17日

Posted by ブクログ

最近会社でも制度やルールを守れない、スケジュールも遵守できず、納期など関係無しに帰ってしまうなど少し困った社員がいると、発達障害ではないか、といった会話がなされる事がある。専門的な知識も何も無く、ただ書籍やテレビで見た程度の情報源で、ADHDだとかASDだとか、はたまた自分はそういうちょっとした仕草や言動に敏感すぎるからHSPなんだとか、かなり好き勝手に素人診断話をする人も多い。更に何かショッキングな出来事があると、それが本人には全く影響ない様な出来事であっても、あたかも自分に対して作用したかの様にトラウマになった事を訴え、重要な仕事があってもメールで休みを告げてくる社員もいる。確かに世の中ショックな出来事は多いし、ニュースでも目を伏せたくなる様な凄惨な事件を伝えたりする(勿論規制上、そうした映像が流れるわけではないが)。それに一々自分ごとで共感、更には自分が被害者の気分になってしまったら。恐らくまともに生きることすら難しいし、会社に来て成果を上げる仕事をしろ、というのは無理がある。最近はインターネット上の映像から、かなり凄惨なシーンが見えてしまう事もあるから、昔よりも一層そうした目に見える形で直接の体験に近いように入ってくるのも事実ではあるが。
その様な中、たまに部下を叱った際など、昨今のハラスメント研修やら管理職研修は強烈に厳しく言動にも精神にも相当の規制がかかるから、かなり気をつけて接したにも関わらず、稀に部下の方が取り乱して真っ赤な顔で反論してくる事もあった。しかも内容は支離滅裂、たった1分の発言でも最初と最後が真逆になって矛盾だらけ、最後には「それ以上言うとハラスメントですよ!」と叫ばれた事もある。勿論自分が採用した張本人ではなく、何故同じ職場に入れたのかなと自分の職場に疑問を持つことすらある。長く観察していると、段々と精神的に幼くなってきていると感じる社員も多い。
まさかそうした人々が何らかの精神的な病に陥っているとは思いたくないが、人間誰しも少しは精神に欠陥があるものだとも感じる。それは自分に対してもそうだが、本書の様な精神医療や心理学に関する本も多いから、余計にどれかしらに当て嵌まると感じる事が多い。もしかしたら周りもそうした書籍から、既に自身に一定の諦めをもって自由に振る舞っているとも言えなくはないが。
本書は精神医療の今について新書サイズにしては十分に詳しく説明すると共に、それら医学的、学術的な成り立ちや現在の最新研究による定義、対処法の現実についても述べられていく。その過程において、前述した様な、素人とは言えないまでも、本来的な定義とは離れてよりセンセーショナルに、若しくは誰にでも当てはまりそうで興味を惹く様な解釈に改変されてなされる、報道や書籍に警鐘を鳴らす。我々がワイドショーや週刊誌レベルから得られる情報を鵜呑みにすれば、いずれ誰しも自分が一定の異常状態、更には早々に諦めて努力しなくなる社会になってしまわないか。そうした安易な病名づけは危険であり、正確な対処に結びつく事はない。それらへの誤解を解き、本来的に我々が社会でどの様に受け止め、受け入れ、又は自身がそうした状況に陥ってしまわない様に知っておくべき知識であると感じた。後半は近年流行している脱法ドラッグにもかなりのページを割くと共に、現代人も抜け出せないギャンブル依存症についても触れる。スマホゲームに大量課金を繰り返す様な人も、ある意味この依存状態に陥っていると思うし、それらから上手く抜け出す為の知識としても使えると感じた。
誰しも心の内に弱い部分は持っている。触れてほしくない部分もある。それを上手に表に出ない様にコントロールし、社会・会社組織に於いて協調・協力して目標達成するには、自分と周りへの理解が重要だ。人手は足りない。互いを理解して、適切な場所と時間で働ける場所を作る。心をなるべく健康で明るい状態を維持し、多少の負担や不安も一緒に乗り越えられる様な職場づくりに活かしたいと思える内容である。

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2024年05月29日

Posted by ブクログ

精神科医療の現実と精神病について、実例や傾向を挙げながら解説している。
うつ病は流行りのようだが、単にうつと言っても色々なケースがあるようだ。
最終章では様々な依存症もあげ、発達障害についても解説している。

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2023年05月23日

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