【感想・ネタバレ】夏の朝のレビュー

あらすじ

住む人を失い、取り壊されるのを待つばかりとなった祖父が暮らした家。祖父の一周忌でその家を訪れた莉子は、庭の蓮池が見える広縁で、老婦人からふしぎな話を聞く。「あのつぼみの中には何が入っているか、ご存じ?」そして、蓮の花が開くとき、時間を越え、少女はいつかの夏へと旅をする。それは、かつてこの家で暮らした人々の想いをたどる旅でもあった。タイムファンタジーのオールタイムベストが、ここに誕生しました。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

蓮が咲くころに想い出しては読みたくなる物語です。
装画は美しい蓮の花が描かれ、半透明のカバー越しに蓮がぼんやりと透けるようにみえる。それは蓮にまつわる不思議な物語にいざなう扉のよう。
 
莉子がおばあちゃんの家で時を遡る5日間の物語。
そこで出会うのは祖父。
祖父にとっては少年期、青年期、壮年期、老年期、そして最期を迎える時と人生全般で5回出会った少女。その少女は孫だったのだと気づく祖父のもうひとつの物語がまたおもしろい。

莉子の過去への旅は偶然ではなく必然だったのだろうか?
祖父亡き後、壊されようとしている家や蓮の池は『あるべき場所にあるはずのもの』が消えようとしている。
祖父から莉子へと手渡された想いを受け止めることで、物が消えても家族の「想い」や「物語」は消えないことを莉子は知る。
母親を亡くした莉子は、母の存在が消えてしまう淋しさを抱えていた。
過去への旅は、母の写真がなくなっても母の想い、母の物語はなくならない。その確認の旅だったのかもしれない。
「蓮のつぼみの中には『想い』が詰まっている。言葉になることができなくて、空をさまよっていた誰かの想い。露と一緒に蓮の中に沁み込んで根や茎を巡り、最後は蕾に溜まって、開花とともに再び空へ放たれるのです。受け取ってくれる人が現れるまで、同じことが何度も繰り返されます。」
蓮の花を観る度に思い描くフレーズになりました。

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2021年07月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

梅雨明けの少し前から真夏へと向かう季節に咲く蓮の花。
四日の命といわれるその花は、早朝に蕾をほどき始め、陽が高くなる前には再び花を閉じてしまい、四日を過ぎれば散りじたくを始めてしまう。
あまりにも儚い命。
けれどその潔い生き様に、見る者は毎夏のように魅せられている。
次の夏も、また次の夏も。
毎夏変わらぬ色鮮やかな紅色の花びらと甘い香りは、遠い夏の記憶を呼び起こす。

今は亡き祖父の庭で、蓮の蕾の中に隠されている"想い"を受け取った中学2年生の莉子。
それは自分のルーツを遡る時空を超えた旅だった。
亡き母や祖父母との再会は少女を"大人"へと導いていく。
莉子はこの夏の貴い記憶をいつまでも忘れないだろう。
言葉数は少ないけれど、じわりと伝わってくる祖父の優しさが胸に染み入る。
声には出さないけれど、いつでも莉子を想い見守っている。

莉子に向けられた祖父の温かな眼差しに、私も今は亡き祖父の温もりを思い出した。
挿絵の美しさにもため息がもれる。
中学校の課題図書という本作、多くの中学生に届くといいな。

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2020年10月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すごいよかった

おじいちゃんが亡くなって家も庭もなくなっちゃう
遺品整理におばさんと家に泊まる
蓮の花が開く朝タイムスリップする

懐かしい家の様子とか
変わっていく家とか(長く住んでるとあるある)
昔ながらのあったかい家族仲良し四姉妹とか
さかのぼる因果とか

ノスタルジーでおじいちゃんステキで
なんだかとってもよかった

はすごはんたべたい
はすみたい
と思った

いいはなし

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2015年06月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

もやの中から蓮を見ているような素敵な装丁に惹かれて読み始め。

亡くなったおじいちゃんの家の整理で泊まっていた主人公の莉子が、毎晩おじいちゃんの過去の夢を見ていく話。
日を重ねるごとに夢の時代は過去に遡って行って、この家の人と蓮の思い出を知っていく。

不思議な展開が表紙と相まって、穏やかに進んでいくのが読んでいて心地よかった。
蓮の実ごはんの炊ける匂いも、味も気になる。

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2024年04月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

子供の夏休みの課題図書として購入した本ですが、大人が読んでも面白い話だと思います。ただお話としては良くあるパターンのタイムトラベルものです。SFではなく文学として書かれているところがポイントですが、それでもどこかで読んだ感があるストーリー展開です。
ちょっと面白いなと思ったのは、主人公が時間を行ったり来たりする中で、「今」でない時代、昔に行って体験したことを「今」の時代の人に話をする部分です。しかもその人はその昔にも若い人物として登場しているのです。
その人はどう反応するのかと思って読み進めると、意外とすんなり受け止めて主人公の相談にのったり、話を聞くのを楽しんだりしているというのが妙に新鮮な感じでした。
後は子供がこの話をどう理解して読書感想文を仕上げるのかが心配です。

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2015年08月25日

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