あらすじ
演出家として成功し、子どもの誕生を間近にする夏川レイジは、不慮の事故により、失っていた20年前の記憶を取り戻す。当時天才子役としてもてはやされていたレイジの現実は、ただの孤独な少年だった。同級生にいじめられ、母親とも心が通わなかったが、渋谷の宮下公園で出会った心優しきホームレスとドラッグクイーンと奇妙な友情を築くうちに、冷め切った心は溶け始める。しかし、本物の感情を知るうちに、機械のように精密だった彼の演技は鈍り始め……。
愛と家族の本質に迫る、一人の少年の成長物語。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
およそ子供らしくない10歳の子役のレイジと、脚本家となった30歳のレイジとで交互に話が展開していく構成。
10歳の頃のレイジは、役になりきることが天才的(役というソフトをインストールすると表現されている)だが、どこか人間らしい感情のようなものが欠落しているような少年。徳さんとローズに出逢ったことで徐々に少年らしく、人間らしくなっていき、徳さんとローズをクラスメイトに貶された時の感情を爆発させるシーンは、前半を読んでいたからこそグッとくるものがあった。特に「右向け右で右を見る君達は機械と同じだ」というセリフをレイジが言ったことに、徳さんたちの影響力を垣間見た気がした。
死んだ時の質量の減少量が21gを下回るように、魂を燃やして生きたいと思った。
Posted by ブクログ
読んでいる最中、人が沢山死ぬなぁと思っていた。
どうやら家族をテーマにしているようだったので、家族ならば生まれて死ぬまでを描くのは当然か。
加藤シゲアキさんの本を読むのはこれで七冊目になるが、どれも面白い。
あまりテレビを見ないから芸能界にも詳しくないし、興味もあまりないので芸能が絡んでくるとどうにも難しく感じてしまうが、それを感じさせないくらいに読みやすさもあるし、ちゃんと本を読んだと満足感もある。
小説家一本ではなくアイドルとの兼業で一冊を書き上げているのが凄いな。
Posted by ブクログ
いつ読んでも「加藤シゲアキは小説家に向いてるな」という感想しか出てこない。設定も人物も奇抜なようでいて落ち着きがあるし、結末もうまくて安心して読める。当初の記憶を失ってる云々だけが状況も作中にどう生かされているのかも腑に落ちなかった。
Posted by ブクログ
子供時代のレイジと、演出家として成功し子供の誕生を控え幸せの絶頂にいたレイジの、過去と現在が交互に描かれていく。
少年と、大人になり父親になる男の成長の物語であった。
「閃光スクランブル」もタイトルがいいなぁ、と思ったけれど、こちらのタイトル「Burn-バーン-」もいいタイトルだな、と思いました。
Posted by ブクログ
加藤シゲアキ渋谷三部作、三作目。
〚ピンクとグレー〛〚閃光スクランブル〛でも感じていたが、現在と過去を交差しながら物語が進む展開なのにまどろっこしさがない。
子供らしい疑問、社会の不条理さ、社会と離れて生きる大人からの愛情を感じ成長する彼と、その出来事を心に鍵をかけ記憶をなくし大人になった彼の世界が交差していく。
どの登場人物にも共感できないのに、どこか自分でも感じていた言語化するには難しい社会への嫌悪感を、言語化してくれたような、解き放ってくれたようなそんな感覚になった。
そして物語の途中でタイトル「Burn.」の意味を理解した時に戦慄した。
Posted by ブクログ
加藤シゲアキさんのBuran
子役とホームレスとドラグクィーン。どんな風に物語が進むのだろうかと思いながら読み進めましたが、子役のレイジ。人間らしい感情を二人の出会いにより学んでいく。親子だけで無く他者の大人と出会い大切なことを学ぶ。普遍的に大事な事だとおもいます。過去と現在のシンクロさせ、描き方が素敵でほっこりしながら読めました。
Posted by ブクログ
舞台劇作家の表彰式から始まり、帰りに奥さんと事故にあってしまう。その病院で天才子役時代に知り合ったドラァグクイーンと出会い、子役時代の話と過去と現在を行ったり来たり。人生においていろんな人との出会いがあるが、過去を含めて今の自分がある。中々良い作品でした。
Posted by ブクログ
劇作家のレイジは元天才子役として活躍していたが、その頃の記憶が無い。レイジは奥さんと共に交通事項にあう。病院で子供時代に知り合ったドラッグクイーンのローズと再会する。ローズとの再会で過去の自分を思い出す。
天才子役だった時は子供らしさがなくいじめられても嫌だと否定できない機械的だった。その時にローズとホームレスの徳さんと知り合う。2人と出会って家族みたいに過ごしていた。そこから子供らしさを取り戻す。
レイジが機械的な子供から子供らしさを取り戻す、お母さんとの関係を取り戻す、奥さんとの間に子供が生まれ自身が親となる。家族だったり自身が生まれ変わるがテーマである。機械的な人間から子供へ、子供から大人へ、大人から親へ。
今回も芸能界と渋谷が舞台。
加藤シゲアキくんの小説は3冊目でこちらもスラスラ読めた。
過去と現在、行き来する話の構成で読みやすい。
ピンクとグレー、閃光スクランブルとは違い、心が温かくなるような話だった。
Posted by ブクログ
最近文庫を買っても先延ばしになり、ようやく夏休みだし、ゆったりどっぷりあっちの世界に浸ろう、と心に決めたものの。
手にとって読み始めたのは、長編ファンタジーでも、大作歴史小説でもない、彼の3作目。
色眼鏡なしで割りと好きなので、あらすじ見ずに購入したのだけど、腰落ち着けて読む感じでもないかな。と思いつつ、泣きそうになる目頭を押さえながら、カフェでじっくり読み終えてしまった。
レイジの20年前の記憶の甦りと現代とのマッチがいいように絡んでて。
ドラマで観てみたいなと思った。
Posted by ブクログ
またもや職場の人に加藤シゲアキ作品借りました。
前の「なれのはて」に比べると文章になんか若さみたいなものを感じましたが、全体的に読みやすいし、内容も分かりやすくスラスラ読めました。
でも、徳さんもローズも悲しかった。お子ちゃん見せたかったな。舞台を見に来てくれたってゆうシーンは思わず泣けましたね。
まだまだ推し作品あるみたいなので、どんどん読んでいきたいです。
Posted by ブクログ
過去の記憶の描写と、
現在の自分の境遇を
交互に描いているので
展開にテンポがあって
飽きさせない。
感動ってわけじゃないけど
普通に面白うございました。
Posted by ブクログ
よくある感動シーンを寄越さず、当たり前のようにそっといなくなってることとか、信念を貫くためなのか譲れないものがあって突然今の大事な人がいるだろって人を残して死んでいくとか、気取ったところがない構成だった。
文章の節々に出てくる言葉には作者の知性を感じた。
読みやすいって感覚は間違いないんだなと、最後の対談読んで確認した。
Posted by ブクログ
2018.3.7
やはり彼の作品は好きだなぁと思う。
言葉がわかりやすいし、何より登場人物の葛藤に言葉が尽くしてあって良い。あと、いつも思うけど、登場人物が魅力的。
ホームレスの徳さんと、ドラッククイーンのローズ。
末期癌患者と生命の誕生。
それが、演出家である彼と、天才子役であった彼を通して書かれていて、人生の平凡な一瞬が、輝いて見えた