あらすじ
明治三十八年、岡山。名家・大鹿家に拾われた一人の赤子。保和と名付けられた彼は、大鹿の養子として乳母の春に育てられることに。春の語る残酷な怪異譚を聞きながら、愛憎渦巻く名家で青年となった彼は、この世ならざるものを感じることができた。昭和四年、失踪していた文学の師で放蕩者の作家・金光から保和に帳面が届く。そこには、自ら殺し、そして蘇らせた妻とのおぞましくも妖しい旅行記がつづられていた。金光の記録に魅せられ、読みこんでいくうちに精神を浸食される保和。日常さえも次第に歪められていく中、彼はことの真相を確かめるべく、金光夫妻が逗留しているという新嘉坡へ向かう。
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Posted by ブクログ
志麻子先生のフィクションかつ長編は久し振りではないでしょうか。(書き下ろしでの発行は2年前です。私が気が付かんかっただけでそれでも間が空いてた)
この作品は金子光晴リスペクトですね。
妻を連れて南洋、巴里へと放浪する作家。
怪奇と汚濁、退廃と幻覚と。
作中を通じて足許もあやうい螺旋階段を昇っているのか降りているのか。最後の1行になっても何も終わっていずどこかにまだ続いている。
志麻子ワールド復活の1作でした。読み応えあり。
私はほんとうに影響を受けやすいので東南アジアへの旅費を調べ始めた。現在のシンガポールは作中のとイメージ違うけどマレーシアは金子はどういうふうに滞在してたっけ?調べ直そう