あらすじ
桃地政念(ももち・まさむね)は、海上保安官の中でも調理・経理・庶務などを担当する縁の下の力持ち部門「主計」の専門官。海上保安官といえど、海猿でもヒーローでもなく、小柄でメタボが気になる独身彼女ナシの中年だ。
霞が関勤務の彼がある日、学生時代のマドンナ・高浜彩子から呼び出された。彩子は女性ヘリ操縦士の草分け的存在で、桃地とはある因縁を持つ。
ドキドキしながら向かった待ち合わせ先で告げられたのは「肝臓がんで余命一年」。京都府舞鶴市の病院に入院するという。シングルマザーの彩子は、息子の悠希が春から舞鶴の海上保安学校に入る予定で、そのそばで過ごすためのようだった。
彼女のために現地への異動を企てた桃地は同校の教官として赴任することに。船舶運航システム課程主計コース3組の担任となったが、腐れ縁の校長・比内から、ある事情がクラスに重い影を落としていることを聞かされ……。
命と向き合う機会の多い、海上保安官という仕事。明るく人間味あふれる桃地の、学生たち、そして愛する人とのかかわりの日々に、感涙間違いなし!
装画=西川真以子
推薦コメントが届きました!
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海上保安学校での生活を巧みに描きつつ、生きることの意味を考えさせられる秀逸な作品。
寮生活や訓練、そして命の現場となる乗船実習。相手を思い自分を見つめ、過去と未来、そして公私の狭間で試練を乗り越えて成長し決断していく過程がリアルに描かれている。
自分の進むべき道を探している人に是非読んでもらいたい。
海上保安学校 前校長 江口圭三さん
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感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
タイトルと表紙のイメージでは、普段は手に取らない感じの本だが、
みなさんの高評価が多いので読みたくなった。
登場人物が魅力的で、誰もが他の誰かを思いやって苦悩している。
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鐵教官が妊娠し、宿った命を犠牲にしようとしている場面。
鐵:「私は、女性初の生活指導教官として、投げ出すわけにはいかない。
私がここで産休を取ったら、女性が生活指導教官をやるのは無理だと永遠に言われます。」
桃地:「後輩たちは迷惑極まりねえよ。誰がそんな険しい道を通るか。
目一杯、育児休暇を取ってでかい顔して復帰して、周囲に迷惑をかけろよ!
それを普通のこと、組織の当たり前のこととする。あんたがすべ きはそっちの努力だ。
あんたがいまお腹の赤ん坊を堕ろして生活指導教官の仕事を全うするってことは、後に続く女性海上保安官たちの道を狭くすることになると、早く気づけよ!」
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…もう、感動しかない、泣
私事で、シチュエーションも違うけれど、
ちょうど、上司への忖度に悩んでいる。
これを正さず通してしまうと、前例となり、今後も「良い」ことになる。
そして、後任の者達も同じ苦悩をすることが考えられる。
…この本に背中を押された気がする。
吉川英梨さんの他の作品も是非読んでみたい。
Posted by ブクログ
一途。
メタボな中年桃地と、海上保安庁の学生たちが共鳴する、教官・学生の立場を超えた、それぞれの青春物語。
こうしたい、こうありたい。
成就しても、その途中で挫折したとしても、その姿はとても美しく羨ましく尊い。
大切な人を何年も思い続ける気持ち、世の中や、人の役に立ちたいという信念から職業を志すということ。
とても眩しくて、これぞ、小説が存在する意義なのだ、と感じ、2回続けて読み返してしまった。
読みたい、と思わせてくれた、フォロワーさんたちのレビューに、改めて感謝したい。
Posted by ブクログ
45歳メタボ中年男の桃地政念は、肝臓がんで余命一年を宣告された女性ヘリ操縦士のシングルマザー彩子を追って、舞鶴にある海上保安学校の教官に。
命と向き合いながら、彩子や学生たちに寄り添う日々、熱くて真っ直ぐな桃ちゃんに何度も涙してしまった。五森祭での桃ちゃんの『私の主張』は、圧巻! 彩子の夫だった当真の死、罪悪感、そして死者に対する決別と彩子へのプロポーズ。彩子も悠希も後悔することなくてよかった。
涙だけでなく笑いも随所にある良書だった。
Posted by ブクログ
感想
海保学校の熱血物語。主人公の桃地はちょっと頼りないところがあるものの決める時は決める姿がかっこよかった。
あらすじ
桃地は海上保安庁の主計に勤めて、20年、独身だ。ある日同期のマドンナでヘリの操縦士の高浜彩子が訪ねてきた。彩子は肝臓がんで余命1年だという。桃地は居ても立っても居られなず、彩子の入院する舞鶴に異動願いを出す。
赴任した桃地は自殺者が出たクラスの担任をすることになる。学生の1人から彩子の病気を治す方法として生体肝移植を知らされる。家族が肝臓を提供できるため、桃地はダイエットして脂肪肝を治すことと、彩子にプロポーズを受け入れてもらうため努力する。また、彩子の息子が海保学校に入る予定だったが、母親のために断念するというところを桃地が説得して入学を果たす。
彩子と無事結婚して、肝臓の適合を調べるも、桃地とは不適合であり、移植を諦める。残された道は息子から肝臓をもらうことであったが、息子の身体を傷つけたくないと彩子は頑なに受け入れないのであった。
桃地はクラスの学生が卒業出来るように導きつつ、彩子が生きられる道を模索する。