あらすじ
異国から来た少女は、眠りの世界で魔女修行をする。「夜の都」を望む異界を訪れて。
魔女の「クダン」から教わるのは、妖精の鱗粉を触媒とした、月の姫から授かりし魔術。
亡者どもを追い払う任務を、世界を守る役目を、図らずも背負わされた少女の運命は。
圧倒的な想像力が世界を創造する、あまりにも美しく苛烈な、ヒストリカル・ネオファンタジー×魔法少女物語。
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1920年代前半(大正時代)、父と義母とともに、『ガリヴァー旅行記』に登場する東洋の島国を訪れた14歳の少女・ライラ。
7日間を保養地のホテルで過ごすことになったライラだが、古い祠として祀られていた岩井戸で、底から湧き出た星のような小さな光の粉が眼に入ってしまう。
部屋に帰り猛烈な睡魔に襲われた彼女がベッドに倒れ込むと、なぜかそのまま真っ暗闇の空間を落下し、気が付くと見知らぬ場所にいた。
月のように巨大なシャンデリア、大理石の環状列柱が支える絢爛の大広間。
夢だと思ったライラが不思議な空間をさまようと、何処かで電話機のベルが鳴っている。
応答したライラに語り掛けてきた相手は、「月の姫より直々に眠りの魔術を授かりし禍の魔女」で「クダン」と自らを呼ぶようにと言った。
クダンはここが「星の界の異界」であり、空の彼方に屹立する摩天楼群を「夜の都」だと語るのだが……。
日本ホラー小説大賞出身作家、待望の第2作。
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装画=朱華 「眠る島」 2021
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Posted by ブクログ
ようやく出たぞ、第2作。
第一次世界大戦後の日本をモデルとしたパラレルワールドもの…? と冒頭で感じつつ読み進めたら、ライラという何か別の作品を連想してしまいそうな名を持つ主人公の少女が、異界と現世を行き来するという、よくある設定のファンタジーに突入していったな…と、一抹の不安とまでは言えぬが何やらアラートのようなものに捉われる…。
が、終わってみれば、昔話のかぐや姫伝説に始まり、果ては関東大震災にタイタニック号のエピソードという史実まで、風呂敷を広げて欲張りにも取り込んだ、高い視座を持つ物語であり、読み応えがあった。
後半、姉弟子のトキが”リッチ”と化し、次いで師匠であるクダンは”レイス”になぞらえられた上で、ライラが彼女たちと互いに魔術を繰り出しながら戦う場面では、前作「迷い家」でも見られた、RPG的な要素が強く感じられ、嗜好が同じ向きには面白く受け止められるだろう。
始めから終いまでことごとく平仄を合わせてカタルシスをもたらす緻密な類の作品ではなく、善悪や正邪といった二分論に縛られない混沌とした価値観の下で展開される、妖しくも美しい幻想世界に耽溺することこそが、この小説を味わう真髄であるように思う。
Posted by ブクログ
前作「迷い家」がとても好みだったので第二作を楽しみにしてました。
やはり面白い!
今回は魔術の話がベースだけれど、人智を超えた現象や、ダークファンタジーなところ、バトルシーン(?)などは共通だと思いました。
ライラの真面目なところ、知識欲旺盛なところ、プライドの高いところなど…とにかく気が強くて自信のあるところが好きだし、やばい弟子育っちゃったって感じがまたよかったです。
非現実なモチーフなのだけど、タイタニック号沈没事故や関東大震災など、実際に起こったことも描かれているのでイメージがふわふわせずピタッとはまってくれました。
もうすでに次の作品が待ち遠しいです。
Posted by ブクログ
多感で勝気な教養のある女の子、継母との関係、異国での出来事
設定は完璧
ただなにかが引っかかってうまく世界に入り込めず
そこに思い至る感情が不足してしまったようだ