あらすじ
ソウルで奔放に育ったはずのホンヨン。家父長制が根強く残る大邱(テグ)からの脱出を試みるコンジュ。ふたりの女の乾いた涙の跡にうつしだされる「友情」の物語。
人気漫画家ソン・アラムの代表作を『韓国が嫌いで』の訳者、吉良佳奈江が全訳。
東京・下北沢でグラフィックノベル専門書店「BSEアーカイブ」を主宰する町山広美のコラムを収録。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
大邱の夜。ソウルで若い時を共にした親友ふたり、
懐かしく思い出すあの時が、実は漠然と不安だったことを今は知ってるから。
私たちがあれほど飽きるほど未来について話していたのは、怖かったからだと、うまく通り過ぎてきたとコンジュに話してあげたい。
先に結婚し先に出産し子どもは可愛いけど夫婦仲、結婚生活はつまらないもので仕事と家事と育児に追われそれでもブチ切れたリ離婚まではいかない、まあこんなもんかと日々に追われて過ごし、後から、同じような人生が親友にもやってくる。
私も自分のことのようにわかると思った。
何もなしえてないし夢も叶ってないけど、うまくとおりすぎてきたんじゃないか、と。
ソウルの夜。大邱からソウルに来るまでのいろいろ、大邱でお母さんを看取ったがそのベースとなる家族の話。ソウルでの親友との出会い。
安全な監獄よりも危険な自由を選んだという自負心を最後まで捨てられなかった、
とコンジュの独白がささる。
職場ではセクハラパワハラ。
夫の実家で名前では呼ばれず、夫の妻もしくは子どものママと呼ばれる。
そして作家の言葉あとがき。
二人の女の話ではない、一人の女の話だった、と。家族と社会と絶え間なく葛藤し器用に折り合えない女の話。
全員がバービーの、バービー映画を思い出した。
作家はあとがきでいう。一人の女の話でありながら一人の人間の話であることを願いながら、と。
無数のバービーたち。私の知りうる多くの女の友達たち、みな一人の人としての物語、人生を届きそうで届かない樹木の蒼い葉っぱをつかみあぐねるように、探している。そこに着地することも葉っぱに触れることもないだろうと思いながら。時に勇敢に時に臆病で自信ないままに。