あらすじ
過疎化する町にある高校の教室で、一人の生徒が消えた。最初は家出と思われたが、失踪者は次々に増え、学校は騒然とする。だけど――僕だけは知っている。姿を消した三人が生きていることを。
それぞれの事情から逃げてきた三人は、僕の部屋でつかの間の休息を得て、日常に戻るはずだった。だが、「四人目」の失踪者が死体で発見されたことで、事態は急変する――僕らは誰かに狙われているのか?
壊れかけた世界で始まる犯人探し。大きなうねりが、後戻りできない僕らをのみこんでゆく。
発売直後から反響を呼び大重版が続き15万部を突破した『15歳のテロリスト』の松村涼哉がおくる、慟哭の衝撃ミステリー最新作!
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Posted by ブクログ
虐待、ヤングケアラー、生活保護、誹謗中傷、いじめ、現代社会の様々な問題にフォーカスされた考えさせられる話だった。
4人の中で友情ができたこと、そして何があってもゲームで4人が繋がれること、堀口の倫理観と優しさが本当に泣けた。
「犯人は僕だけが知っている」というタイトルの解釈が読後は180°変わっちゃったなと思う。
それから、「排除型社会」。「一人一人が違う」=「私とアナタは違う」他者への理解の放棄。これはかなり刺さった。個性とか多種多様な〜は今の時代重宝されているかもしれないけど、その中でも相手に対して理解することを怠らないことって大切だなと実感した。
とにかく最初から最後まで飽きない面白い話だった。
Posted by ブクログ
ちょっとはまっている村松涼哉先生
始まりは現実から逃げたい生徒たちの集まりって思ったけど、それぞれがとても辛い現実からの逃避にワタシだったらと思うと辛い。
ネット社会、介護、いじめ、ネグレスト、どれをとってみても社会問題になってることばかりだ。
でも、最後みんながみんなのために動いてくれて嬉しいラストだった。
欲を言えば、主人公のラストをもっと描いてほしかったな
Posted by ブクログ
ミステリーとして精緻な構成が練られていて、とても面白かった。
物語は、虐待やヤングケアラー、貧困、いじめ、ネットの炎上など、重めのテーマが盛りだくさんで、社会問題として解決されないものがそのまま若者に負担となっていることが如実に表れていた。
それぞれが抱えている課題と、それぞれの優しさが複雑に関係していた。
自分の見た自分の情報が1番正しい。「私だけが知っている」情報を頼りに、誰かを糾弾することで、排除し、安心を求める。
排除型社会というこの本のもう一つの軸も、最後まで関係していた。
4人それぞれが茨の道ではあると思うけど、前を向いて、逃げる道を全選択してでも、幸せに生きていてほしい。古林にも生きていてほしかった。
物語としてとても良かったけど、救われない。ただひたすらに悲しい。
これが現実で、松村さんらしい一冊だった。
Posted by ブクログ
「排除型社会」によって高校生が苦悩するミステリ小説。
※排除型社会とは経済成長がしにくくなった後、不安定化する社会のこと。経済格差が広がることによる貧困層の増加、その結果教育・医療・福祉などのサービスを受けられない人の増加するなどの問題を孕んでいる。
主人公の堀口は幼少期に母親からネグレクトを受け、精神にバグを持っている。
久米井は作曲家志望の元アイドルであったが、他を蹴落そうとするような悪意のある編集で都会でつぶされてしまう。
渡利は父親が生活保護を受け始めてからそれを原因に虐められる。
田貫はヤングケアラーとしての役割を期待され、自分の夢に挑戦できない。
排除型社会によって一般人を殺人犯たらしめること、また疑わしいだけで学校での居場所を奪われてしまうストーリーを見てしまうと心苦しい。
ゲームを作ることでこの排除型社会に向き合い、久米井・渡利・田貫の心のケアをする堀口は格好良かった。
Posted by ブクログ
戦うだけが正解ではない。
まさにそうだと思う。
昔は何かと力ずくで、勝ち負けや順位が全てで。
現代から見るとすごく暴力的な世の中に感じる。
負けはかっこわるい。
弱音は吐くな。
そういう集団意識が人を追い込んで、
助けを求められない、逃げれない人たちが沢山いたと思う。
勿論今も。
逃げたいときは逃げたらいい。
無理して自分の人生を無駄にしたって何もいいことはない。
逃げるのコマンドが正解に繋がるゲームはいいかもしれない。
Posted by ブクログ
過疎化が進み、いずれ消える町。ある高校の教室で、次々とそのクラスの生徒が消える。学校は騒然とするが、僕だけは知っている。
姿を消した3人は、生きていることを。
初読の作家さんで、文庫レーベルの先入観もあり軽めのミステリを予想していたんですが、想像以上に重い話でした。
過疎と高齢化で衰退していく町のなか、精一杯生きる高校生たち。彼らが抱える問題は、虐待、いじめ、晒し、ヤングケアラー、母子・父子家庭、生活保護と幅広く、失踪や中盤で起こる殺人事件の犯人を暴くミステリーとしてではなく、社会問題とその被害者である少年少女たちの生き方や友情を青春小説のような清廉な痛々しさで描いています。
問題にはみんな立ち向かえ、克服しろと言いがちですが、立ち向かうだけではなく、主人公の堀口が作るゲームのように逃げたり説得したり助けを呼んだり、色々な解決方法がある。ラストシーン、彼らの根深い問題は解決するわけではないですが、自分がその気になれば選べる選択肢は実は複数ある、と考え方を変える一助になるような、儚くも優しいお話でした。
***
こちらも失踪(消失)を扱った青春ミステリ。
→『消失グラデーション』 (角川文庫)/長沢樹
Posted by ブクログ
殺人の動機や、真相に無理がある。子供の目線ではいいが親の目線がなさすぎる。サスペンスのためにストーリーを作成した感じが共感できなかった。
若者の怒りや他社を排除したい欲求については理解できた。
様々な社会問題に立ち向かう一冊
ネグレクトや身体的虐待、虐め、ヤングケアラー、アンチからの逃避、様々な社会問題を抱えた登場人物たちが、それぞれのやり方で立ち向かっている描写がとても印象的で、主要人物全員に幸せが訪れてほしいと願いながら読んでいました。
現実とゲームの世界観を一体化させている部分もあるので、ゲーム好きな方は楽しく読めると思います。
『戦う』だけが人生ではない、『逃げる』ことも未来に繋げる手段の一つであることを、魂の叫びから伝えてくれる一冊です。
主人公の正義感と優しさには軽く惚れました。
彼が遠い世界で平穏に暮らしていますように。
続編求みます。