あらすじ
死は平等である。富める者にも貧しき者にも。だが時に異形となる哀れな魂があり、それを葬る少女がいた。
モリア=メメント。かつて術師の血を継ぐ王族の姫だった娘。特別な力をもち、今は刻渡りの死神シヤンとともに、あるものを捜して旅をしていた。
シヤンのもつテンプス・フギトの時計に導かれ、あらゆる時と場に彼らは出向く。現代ニューヨーク、17世紀パリ、時代と場所が変わっても、そこには必ず、死してなお悪夢を見続ける悲しい亡霊たちがいた――。
死は等しく安らかに――祈りをこめてモリアは死者を葬る。永遠を生きる時の旅人がつむぐ、祈りと葬送の幻想譚。
【登場人物】
◆モリア=メメント
青い喪服を着た美少女。術師の血をひく王家の娘だったが、過酷な運命にもまれ、死神と契約をして永遠の命を得る。あるものを探すため、死者を弔いながら旅をする。
◆シヤン=ラウエレウム
美形の死神。「時」をつかさどり、テンプス・フギトの懐中時計を操って時空を移動する。強大な力を持つ存在だが、モリアの従者に。人間を哀れみ、時に面白がっている。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
死とは何かを追求していく物語だったように感じます。作中でも記されている通り、生は不平等でも、死は平等という価値観に納得します。時代や国を越えて死者を葬っていくモリアが、死に触れることで、様々な形の愛を知っていく物語で、とても面白かったです。エンタメとして派手なバトルシーンを追求するのではなく、死の切なさや悲しさを伝えることに全力を注いでいたのが良い味を出していたと思います。世界観はとても暗く、救いようのない現実の非常さが描かれる中で、もがき続けた先にある一筋の光明が、温かく尊いものであると教えてくれるような作品でした。
私の好きな台詞は「わたしたちは何処からでもあらわれ、何処にでも向かいます。死に至れなかった死がそこにあるかぎり。時間を渡り国境を跨ぎ距離を越え――いわば時の異邦人なのです」です。彼女の生きる様が如実に表されている気がします。
Posted by ブクログ
死について、とても繊細に丁寧に描写された作品。しっとりと湿った雰囲気をさせながらも、どこか神秘的で美しい世界観にどっぷりとハマりました。
世界は平等じゃない。けれど、死は誰にでも平等に訪れるべきである、と。死を踏みにじられた少女が、死にきれない死者を殺し、平等な死へと導く物語。
従者である悪魔が、最後まで悪魔らしかったのが良かった。
とにかく言葉選びが素敵な作品でした。物語性だけではなく、文章力も高く、芸術的な作品です。
遅読の私が、たった8時間ほどで読み終わってしまいました。
幻想的な、けれども残酷で生々しい世界観がお好きな方は是非読んで欲しい作品です。
Posted by ブクログ
容姿端麗の二人組が彼らしか解決できない問題に挑みつつ、西洋を巡り彼らの正体を紐解いて行くような話です。きれいな言葉で紡がれる世界観を堪能しつつ、しんみり悲しいストーリーを楽しむ大人向けの小説。
Posted by ブクログ
あるものを取り戻すために時代を渡るモリアとシヤン。
様々な時代、様々な場所を巡るのかと思いきや、読み終えてみると割と偏っていたなあと。
でも、その偏りは気にならないほど、特に後半は伏線も含めて盛り上がったと思う。
死は平等に訪れるもの。
その人の性別や年齢によらず、生前の行いによらず、善悪によらず。
その筈なのに。
どうも、その死を平等にしない者たちがいらっしゃるようで。
だからモリアは死者のために剣を取る。
風変わりな従僕を相棒に。
前述通り、後半のモリアの一族に纏わる因縁と対峙する話は本当に手に汗握る展開で面白かった。
これまでモリア側が圧倒的有利な状況での話ばかりだったから、ここで彼女の方が不利になるとは思いもしなかったので。
シヤンがそこでああいう態度を取ってくるのは予想はついてはいたが(何しろ普段からあまり従順ではない)いざされるとやはり心は折れるし。
それでも、心を折り切らず、シヤンの喜ぶ言葉でもって彼を引き留めたモリアは何だかんだで彼のことを理解していたのだろう。
全てではないけれど、ぽっと出の奴らより余程。
意外だったのは、彼女の探し物が細分化されていた件。
なので、今回ある程度見つかっても、旅はまだまだ続く。
過去の因縁とは一区切りついたが、シリーズ化しようと思えばできる作品だと思う。
彼女の探し物が全て集まる日は来るのだろうか。
できれば、それを見届けたいと思った。