あらすじ
「ひとでなしなのは、私の方だった。」
夏の盛りを過ぎ2学期が始まった校内では、秋の文化祭に向け準備が進む。
自らの望みを叶えるためには変わらなければならない、と改めて決意した比名子は、
汐莉や美胡と共に精力的に準備活動に勤しんでいた。
そんな準備中に起きた妖怪の襲撃事件をきっかけに、
比名子は遂に、自分を喰べる契約をしてくれた汐莉が抱く感情を理解してしまう…。
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Posted by ブクログ
夏休みが終わっても文化祭が近付く秋の入口、学生的には楽しいイベントはまだまだ終わらないといった印象
だからか、比名子も珍しく少し楽しそうにしているし、美胡は楽しさを盛り上げる為に奔走。そんな二人を他所に汐莉は表情を微かに曇らせてるなぁ…
汐莉の心情的には比名子に日常を楽しんで欲しい気持ちはある。けれど、彼女が完全に明るさを取り戻した時は別れの時。比名子は希望へと少しずつ近付いている状況で、汐莉は絶望へと少しずつ近付いている状況で
43話までの描写は表情に出さない形で傷を増やす汐莉を見ていられない印象でしたよ…!
それだけに44話のもう慣れた展開とも思える異形に襲われる流れにて比名子が気付きを得るとは思わなかったな
これまで何度も汐莉は比名子を異形から助けてきた。序盤においてその理由は比名子を食べる為かと思われた。次は彼女に生きて欲しいからだと判明した
そして汐莉は強い。そこらの異形なら敵わない程に。そしてどんな時でも滅多に表情を変えない
だから全く気付かなかった。比名子が異形に襲われそうな時に汐莉がどのような心境で居るかなんて
心臓の音とはつまり生きている証のようなもの。それを通じて汐莉が抱く比名子に生きていて欲しいという願いが真の意味でようやく伝わる展開はとても良いものでしたよ……
けれど、生きて欲しいという願いの先に待ち受ける約束に伴う感情は比名子がかつて経験した痛み。汐莉への理解はつまり自信への失望に繋がってしまうのか……
更にその痛みの理解は美胡にも向いてしまうというのはね…
比名子は本当に辛い経験をした。だから痛みに耐えきれず他者に理不尽な言動を放ってしまうのは仕方なかったのかもしれない
ただ、理不尽な振る舞いだったと一度でも気付いてしまえば後悔は消せないばかりで
それだけに沢山の別れも出逢いも経験してきた美胡が喪失の痛みを認めつつ比名子を愛していると伝えてくれたのは良かったな。あの言葉はきっと己の不甲斐なさに失望していた比名子を認めてくれる言葉となるだろうから
そのように純心を伝えてくれる美胡の言葉だから、汐莉が抱く純心への想像も比名子は出来るようになる
これまで何度も寄り添う大切さを伝えてくれた美胡だけど、今度の言葉はとびっきりの温もりに満ちたものだったね
これから行われるは改めての対話。7巻の時は比名子の側に寄り添う準備が無かったから汐莉が望まぬ約束を交わすしかなった
けれど今の比名子は汐莉が直面している痛みを理解・想像できる。その姿勢で臨む対話は比名子と汐莉に齎されるものが少しでも本当の希望に繋がる何かであればと願ってしまうけれど……