あらすじ
大陸の東半分を占める大帝国・尤(ゆう)。建国の祖・陶淵紫は紫がかった瞳をもつ美丈夫だったが、暗殺され非業の死を遂げる。
寵姫・劉昭儀は来世で淵紫に巡り会い、彼を護る力を得るため、神仙に自らの命を供物として捧げた。
――それから二百年後、尤の都・賀陽。
秘書省少監の一人娘・白花珠は、女ながら剣技に秀で、軍人として活躍している。
実は彼女は劉昭儀の生まれ変わり。前世の記憶を持ち、物心ついた頃から淵紫の姿を探し求めていた。
ある日、式典の警護に立った花珠は、若き皇帝・陶紫英を目にする。忘れ得ぬ愛しい人・淵紫と同じ、紫がかった彼の瞳に運命を感じる花珠。
式典の途中、何者かが紫英に矢を射かける! 彼女は身を挺してこれを守り、皇太后に能力を買われて皇帝の警護係として仕えることに。
しかし、宮廷内には彼の存在を疎む家臣たちがいるのか、紫英は頻繁に命を狙われ――。
陰謀渦巻く宮廷で、花珠は無事に皇帝を守り通すことができるのか? ロマンあふれる傑作中華ファンタジー!
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Posted by ブクログ
転生ものにはつきものの前世の縁を何処まで引きずるか問題。
特に今回は主人公側はしっかり覚えているけれど、相手は一切覚えていないというパターン。
しかも、相手は地位こそ同じ立場にいながら性格も政治に対するスタンスも正反対と言っていいほどの別人。
それでもあなたは、愛した人の転生した相手だからと同じように命を賭けて守れますかと。
この点の折り合いをつけるだけでも骨が折れそうなのに、皇帝の周りは「死」の気配が色濃く漂っている。
実際犠牲者は出るし、彼を襲う者は生者ばかりとは限らない。
それなのに、彼の周りはびっくりするほど信頼できる人がいない。
読んでいるこちらも、中盤までは誰が味方で誰が敵か分からず随分びくびくしながら読む羽目になった。
こういう時、優しい人ほど怪しかったりするし、露骨に怪しい人ほど逆に大丈夫だったりするし。
見極めが難しい。
それを皇帝はずっと一人で続けてきたのかと思うと、後に化け物とまで称される裏側になっても致し方なしと思う。
陛下に言い渡された予言の真意。
誰が本当の敵で、誰が本当の味方か。
そして、自分の命と引き換えに神様に願い転生を果たした主人公の想いと、彼女が選ぶ未来とは。
どれもそれだけで一本お話が書けそうな内容の濃さなのだが、それぞれを丁寧に、それでいて納得できる展開と答えを用意してくれたことが本当に見事。
そのままだと化け物になっていたかもしれない皇帝を「人」として留めた展開は特に痺れるほど良かった。
このエピソードのために、謎解きとしてはよりややこしい真実となったが、主人公が取ってきたスタンスが今後の皇帝にとっていいものになると確信できた展開になっていたので余計に。
これだけの内容を一冊にまとめてきて、破綻せずに魅力的な作品に仕上げているのだから、本当に凄いとしかいいいようがない。
これは必読の作品だと思う。
前作の『仙文閣』も痺れるほどよかったんですけど、それを上回ってくるなんて(個人的感覚では)
三川先生、恐るべし。
Posted by ブクログ
転生して最愛の人に再会して、相思相愛…とは全然いかない。曲者の大家。正直黒幕はわかりやすかったけど、花珠と紫英のやりとりが好きだったので全てよし。にゃんこはかわいいよね。