あらすじ
最近部屋で、おかしなものを見るようになった夫婦。妻は彼らの視界に入り込むそれを「幽霊ではないか」と考え、考察し始める。なぜ自分たちなのか、幽霊はどこにとりついているのか、理系の妻とともに謎を追い始めた主人公は、思わぬ真相に辿りつく。その真相は、おそろしく哀しい反面、子どもを失って日が浅い彼らにとって救いをもたらすものだった――「世界で一番、みじかい小説」。その他、表題作の「私の頭が正常であったなら」や、「トランシーバー」「首なし鶏、夜をゆく」「酩酊SF」など全8篇。それぞれ何かを失った主人公たちが、この世ならざるものとの出会いや交流を通じて、日常から少しずつずれていく……。そのままこちらに帰ってこられなくなる者や、新たな日常に幸せを感じる者、哀しみを受け止め乗り越えていく者など、彼らの視点を通じて様々な悲哀が描かれる、おそろしくも美しい”喪失”の物語。【解説:宮部みゆき】
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Posted by ブクログ
淡々と綴られた一つ一つの物語の完成度が高く、どれも楽しんで読んだ。
ホラーな要素を漂わせ、死を扱っていながらどこか救われる気持ちになる短編集。切なくなるし、悲しくて心が追いつかないものもあるし、泣きたくなる。でも生きていかねばならない気持ちに寄り添い、色んな人生を肯定し昇華させる。そういう慈愛に満ちていると思った。
表題作とラストの「おやすみなさい子どもたち」が印象に残っているだろうか。生きる者への慰めを感じるいい物語だった。
Posted by ブクログ
表題作が本当によかった。少し泣いてしまった。失われた人は戻ってこないけど。主人公が頑張ってくれてよかった。
ほかのお話も面白く色んな仕掛けがしてあって好き!何回も読み返したくなる短編集。人間の嫌なとこ、素敵なとこが見えるお話たち。
Posted by ブクログ
「世界で一番、みじかい小説」が印象に残った。幽霊が目の前に現れるという状況を分析し、理由を解明していくというストーリー。
夫婦それぞれのキャラクターの違いも、課題に対しての向き合い方も、話に厚みを生み出していた。私はもし幽霊が日常的に現れるなら旦那さんのようになるかな…と思いました。
Posted by ブクログ
最近万城目学さん、今村夏子さんと不思議な世界の作品を続けて読んでいる (*´˘`*)
こちらも土瓶さんから教えて頂いた山白朝子さんの不思議な八つの短編集( ᜊ°-° )ᜊ
短編集は好みではないのだけれど、このジャンルは別
グロ描写も多いが色々な内容が詰まった話ばかり(⁎˃ᴗ˂⁎)
特に惹き込まれたのはこの四話
『首なし鶏、夜をゆく』
風子のおばさんに、首を手斧で切断された鶏の京太郎ε('ﻬ')зコケッ
首がないのに地面の餌を啄ばむ仕草をしたり、首の切断面に開いた小さな穴から餌や水を吸収する姿はグロテスクε('ﻬ')зコケッ
ある日を境に何故か風子が学校に来なくなる…
おばさんの狂気、風子の純粋さ、京太郎の不気味さと切なさにどんどん吸い込まれた
『子供を沈める』
これはちょっと不気味だった
学生時代に生田目頼子(いくためよりこ)をいじめて自殺に追いやったカヲルと友人達
産んだ友人達の赤ちゃんの顔がみんな生田目頼子にそっくり(; ꒪ö꒪)で、彼女達は自殺したり、我が子を殺してしまう
果たしてカヲルは、産んだ我が子を育て上げることができるのか。。。
自分が産んだ赤ちゃんが、自殺に追いやった人の顔にそっくりだなんて、生き地獄でしかない
๐·°(৹˃̵﹏˂̵৹)°·๐
オッパイあげて、寝かしつけて。。。
考えただけで身震いブルブル
カヲルの妄想なのか、生田目頼子の怨念、復讐、呪いなのか、くわばらくわばら…
『トランシーバー』
震災の津波で亡くなった妻と息子
酩酊状態になると、息子のお気に入りのおもちゃのトランシーバーから息子の声が聞こえてくる
…パパー……どこー……ちんちんおしっこー……
……パパいるー……うんちでたー……
……パパー、こっち来て!…いっしょにあそぼー…
現実なのか妄想なのかグレーの世界
愛する可愛い息子の声が聞けるなら酩酊し続けても構わないという親心と、変わらぬ無邪気な息子の声があまりにも切ない(꒪̥̥﹏꒪̥̥ )
そして表題作の『私の頭が正常であったなら』
死んだ娘の声が聞こえてくる
幻聴なのか?
野川沿いを散歩すると聞こえてくる、私にしか聞こえない声
私の頭がおかしいのか?!
精神が病んでいながらも、娘を思う気持ちが生んだ奇跡の話.˖٭*
土瓶さん、ありがとうございました(⁎˃ᴗ˂⁎)
読んでいる間、乙一さんの作品だったことを忘れていました
多才振りに圧倒されました