あらすじ
ホテルで行きずりの女を殺してしまった吉行は、車で逃げる山中で不思議な少年と幼女に出会う。「和子」と名乗る幼女の家に帰る途中だという。なりゆきで乗せてやることになった車内で、無邪気に話す和子の声を聞きながら、ふと吉行は自分の過去を振り返る。夜の闇が迫りひどい疲労感に襲われた吉行は、親子と偽り小さな旅館に宿をとる。穏やかな夕食と温泉。まるで本当の親子のようだ、そう独り言ちる吉行の目に飛び込んできたのは、膝に乗ってきた和子の首に残る、一筋の赤い線だった。過去の記憶がよみがえり苛む……。大人のサスペンス・ミステリ!
(※本書は、2012年9月講談社より刊行された単行本『白兎1 透明な旅路と』を加筆修正し、改題の上文庫化したものです)
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Posted by ブクログ
本作は、長らく在庫切れだった『白兎1 透明な旅路と』(講談社)を著者が全面見直しし、加筆修正、改題の上文庫化したものらしく、読んだ記憶がやはりありました。で、前回読んだときは伏線がわからなく、あまりピンとこなかったが、読み直して納得しました。
Posted by ブクログ
少年の名前が白兎だったので、主人公は騙されて滑稽な感じで終わるのかなと思いましたが、違いました。因幡の白兎ではなかった。
人でないものの扱いが斬新で面白かったです。少しづつ増えていく謎が、いろいろな登場人物の過去と混ざり合っていて、それが繋がっていく展開にドキドキしました。過去の事実と出会うたびに揺さぶられていく主人公が、不審に思いながらも、女の子を大切に扱っているところが虚しさを誘ってきます。妄想だと言われた時の絶望感を一緒に味わいました。
背負った罪は消えないと言いつつも、最後は、捕らわれた過去と決別できそうな希望で終わります。過ちや罪は、その過程で希望があるからこそ、重さを知ることになるのかもしれません。償いは、生きていればこそできるものなのだと感じました。
Posted by ブクログ
どこまでが幻でどこからが現なのか、読者をも幻惑する。
行きずりの女を殺して逃亡を図る男の前に現れた、少年と幼女。
彼らはいったい何者なのか。
その正体を知りたくて、ひたすら頁を捲ってしまう。
『バッテリー』などの青春ものとは一線を画す、人間の心の闇を描く『弥勒の月』シリーズに位置するものだろう。
白兎シリーズともいうのだろうか、後の3篇も読まなくては。
Posted by ブクログ
一 月夜 二 雷光 三 漆黒
四 出発 五 黎明 六 燭光
山中で出会った少年と幼女。出会いから不思議さが増していく。吉行の認識は現実なのか、彼の意識が狂っているのか、茫漠とした中で時は過ぎる。
そして残ったのは……
Posted by ブクログ
白兎シリーズとでも言うのだろうか、第一弾。
山下和美さんのコミックであった不思議ナ少年のようでもあるが、やはり、あさのあつこさんは違う。大人をかく時のこの作家さんは妙な色気があると思う。妖艶というか、決してイヤなエロではなく明治大正昭和初期の文豪の持つエロチシズムとでも言うのか。内容はしっかり骨太な生と死に絡むサスペンスだった。ただの逃亡者だけではない、主人公の最後に余韻が残る。
Posted by ブクログ
※
不思議な少年、白兎の物語2冊目。
まるで透明な膜を纏っているかのように
現実離れした雰囲気の白兎と和子という名の幼女、
チグハグな二人に真っ暗な山中で遭遇した吉行の
3人が進む珍道中。
理由もなく人を殺め逃避行をしていた吉行は、
二人と関わるうちに人への無関心さは薄れて
次第に血の通った人らしく変化していく。
吉行の過去と和子の時間が交錯して
此岸と彼岸の境目が揺らぐ様子や、
その仲立ちというか船頭的な白兎が放つ
不可思議さが魅力的な物語でした。
Posted by ブクログ
ミステリというよりは幻想小説。
ホテルで行きずりの女を殺してしまった男が車で逃亡中、山奥で少年と少女を拾う。
彼らは兄妹ではなく、少女を家に送り届けるために一緒にいたらしい。
少女の家は、男の故郷のさらに奥。
雨のため温泉旅館へ泊り、少女と過ごすうちに思い返される男の過去。
不思議な少年と無邪気な少女。彼らは一体何者なのか。
男の兄が山に入った理由はわからないままだった。
山に呼ばれたということなんだろうか。
どうやらシリーズものらしい。
作者のファンなら楽しめるのではないだろうか。
Posted by ブクログ
うーむ…
あまり好きではないかも。
書店で「白磁の薔薇」を手に取って、シリーズと言うことだったので、まずは本書を購入。
「大人のサスペンス・ミステリー」という裏表紙の解説で読み進んでいったが、ちょっとちゃうのでは?
次を読むかどうか微妙…
Posted by ブクログ
白兎シリーズ第1作目の「透明な旅路と」を文庫化した作品です。
「バッテリー」や「THE MANZAI」、時代劇ものなど若者を主人公にした青春小説を多く描いているあさのあつこさんがミステリー?それも殺人を犯した大人が主人公?という二度見してしまったくらい衝撃的でしたので、読んでみました。
白兎シリーズは知らなかったのですが、結果的には白兎が主人公でしょうか。最後まで謎めいた少年?でしたが、最初の段階ではこれはホラーなの?と疑っていました。
殺人を犯した主人公・吉行は逃避行の途中、山中で謎の少年と幼女に出会う。二人の関係が他人同士。少年は少年らしからぬ素振りや佇まいにどんな物語になっていくのか、次々と疑惑なことが出てくるので、予測不能でした。大人向けの小説ですが、文章は読みやすく、あっという間に読めました。
吉行だけでなく、少年・白兎と幼女のキャラクター性も際立っていて、印象に残りました。そういった描写は、さすがだなと感じました。
時折、吉行の過去と行き来しながら、次第に幼女の正体が明らかになるのですが、少年の方は結局わからずに終了するので、消化不良になりました。そもそも、この物語もどこからが現実で、どこまでが幻なのか、ずーっと霧のようなぼやけた空間で読んでいた感じがしました。
最後ら辺の色んなことがあったけれども、人を犯したことへの罪は罪であることには深い何かを感じました。
全4部作だそうなので、白兎の正体が何なのか、次作を楽しみにしたいと思いました。