あらすじ
令王大学の名村准教授は若き天才研究者。人工知能(AI)を進化させるため、人の心の「なぜ?」を解きあかそうとしていた。特任助手の若葉とともに、不可解な事件の謎に挑む。遺品として見つかった出所不明の日本刀、慣れない登山に挑んだ青年の事故死、突然の婚約破棄、息子に殺人の罪をなすりつけた父親――名村がたどりついた驚きの真相とは!?
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Posted by ブクログ
氏の作品は動機の部分で強弱が比較的はっきり分かれる印象があり、好みの分かれるところだと思っていたんだけども、今回の作品はもろ「動機」がメインだから、人間の機微を掘り下げるという、ミステリーの重要な部分を堪能できたと思う。心理トリック、みたいなもんだろうかね。
ただ、特任助手が体のいいバイトみたいな感じで描かれてるけど、そんなわけはなく(笑)。もちろん雇う側にそういう意識をもった人がいないわけではないとも思うけど、そこはツッコんでもしょうがない。
全体としてまとまりのいい作品だったなと思う。
Posted by ブクログ
「あなたの不可解な謎を解き明かします。」
令王大学の准教授・名村詩朗は、人の行動の背景にある動機を解き明かし、心の動きをAIに学習させる事で進化させようとしていた。
勤めていた弁護士事務所が弁護士が高齢化に伴い閉鎖されてしまった鈴代若葉は、求人があった名村の元へ向かうが、何気ない動作が名村の興味を引き、助手として採用される…
喜怒哀楽が解らない名村と、好奇心旺盛の若葉のコンビが上手くマッチしていて良いコンビだと思います。
依頼された謎も、ささいな事から謎の真相へと導く名村の推理力と若葉の地道な捜査で解き明かすのがワクワクしました。
まだ始まったばかりのコンビなので、今後も期待しています。
Posted by ブクログ
人工知能にインプットする為に、色々な不可解な動機を集め、解決していく物語。
感情が理解できない名村が、同じく感情の理解できない由加里が発した問い『私のような異常者に、生きる権利はあるのでしょうか』にこう答えた。
『二つ、誤解していますね。』『まず、あなたは異常者ではありません。人を好きになれないという体質を持っているだけです。』『それともう一つの誤解ですが、すべての人間に生きる権利があります。外見や内面がどうであれ、死刑に相当する罪を犯さない限り、寿命を全うして構わないんです。それが基本的なルールです。』
あらゆる場面で自分の中にこのフィルターを持っておきたい。自分は人と違うと苦しんでいる人は沢山いるはず。みんながこのフィルターを持って少しでも寛容な世の中になればいいなと思う。
Posted by ブクログ
結論は分かっているけれど、そうなるに至った想いを解明するミステリというのは発想が面白かった。
想いだから正解かどうかは分からないこともある。
特に相手が亡くなっている場合は。
それでも、正解でなかったとしても、何かしらの答えを導き出せたのなら、残された人にとっては救いになるかもしれない。
まあこの話の場合は正解するパターンなんですけど。
しかも、明らかにしてはいけない事実も発覚する場合もあるんですけど。
そこはフィクションとはいえ容赦はない。
AIの研究のためとしながらも、実際は喜怒哀楽の感情を持てない准教授自身のための調査だったような気がする。
彼こそAIのように様々なパターンから察して、場を壊さないように表情を作っているだけで、実際の喜怒哀楽や恋愛感情を持ててはいないから。
この研究を通して、彼が少しでも自身の感情を持てるようになればいいなと思う。
助手の女性がこれまた結構有能で驚いた。
テンポの関係もあるだろうが、入手困難じゃないかと思える情報もかつてのコネと足で確実に入手してくるのは地味に凄い。
フットワークが軽いにも程がある。
本人は何も成果が得られなかったとか言っているが、いや十分じゃなかろうかと毎回思った。
コミュ力の高さのなせる業か。
自分では無理だ。
喜多先生らしく理系要素があちこちに登場するのもいい。
こちらも新しいシリーズとなるのだろうか?