あらすじ
丹念な取材から最新科学が示す「色の見え方」の驚くべき多様性と、悩ましい検査の問題が明らかに。20世紀には、学校健診から雇用時検診までありとあらゆる場面で制度的色覚検査が行われ、「異常」の人には大きな制限が課されました。極端な扱いはなくなったものの、未だに前世紀の「色覚」観と検査の問題は社会の隅々にまで浸透しているように思えます。本書は、色覚に関する誤解を塗りかえるべく「色」をめぐる冒険へと旅立った科学作家が、進化生物学、視覚科学、ゲノム科学、医学等の最先端に接して、様々な事象を再点検。「色覚」とは何なのか。そもそも、あなたが見ている赤と私が見ている赤は同じなのだろうか? 取材の末見えてきたのは、「多様性と連続性」の新しい地平でした。多くの取材を通して得た「色覚」についての新しい知見と考察を重ねた1冊。
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Posted by ブクログ
マジメで硬派な本なのに、ページをめくる手が止まらなくなった
色覚について科学的な情報を読者に分かりやすく伝えた上で、色覚にまつわる社会の偏見や抑圧を指摘し考察する
科学的な説明のページは知らなかった事実や理屈が分かり易く解説されてとても面白く、社会的な問題を記述したページでは感情抑え目の著者に代わって世の中の理不尽さに腹が立つ、アップダウンのあるジェットコースター的読書感
科学的な事実をしっかり踏まえた上で社会の問題を論考している点が素晴らしい
もっと怒っていい当事者なのに著者が感情抑え目で冷静に話を進めている点も良い
5年前に刊行された旧版での記述に対する反省を明確にしている点も好感が持てる
色やデザインに興味がある人にも、科学に興味がある人にも、人間に興味がある人にも、社会に興味がある人にも、色覚で困っている人にも困っていない人にも、オススメしたい
われわれの世界は正常-異常の二分論でできているのではなく、人間はグラデーションのように連続的で多様なのだ
そしてあなたもわたしもその他の誰かさんも、そのグラデーション状分布のたぶん左端や右端ではなく、その途中のどこかにそれぞれ存在しているだけなのだ