あらすじ
たまたま観戦したJリーグの試合(FC東京vs鹿島アントラーズ@国立霞ヶ丘競技場)で、その魅力に取り憑かれた著者が、その後の89日間で体験した「サポーターをめぐる冒険」。
Jリーグのサポーターは、透明な存在にされ、寂しかったのではないか?
強豪チームのないJリーグで、チームをサポートする意味とは?
そして、人はいつ、どうして「サポーター」になるのか――
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Posted by ブクログ
Jリーグのサポーターというのはある意味、宗教の信者のようなものだと思っている。それぞれのクラブがそれぞれの宗派のように同じサッカーという宗教を愛しているもののその手法、解釈などはそれぞれ。時にはその違いからぶつかったりもするし、広義の意味ではサッカーを愛するという同じ仲間でもある。
そしてその宗派の信者になるためのイニシエーションというのは明確なものはなく人それぞれ。その人それぞれの中で筆者の場合はどうだったのか?ある種の疑問を感じたりしながらも徐々にはまっていくイニシエーションの過程が書かれている。
そしてそこにはメディアでは決して伝えられないスタジアムでの雰囲気が描かれている。もともと理系の研究者だったこともあり、その描写は実に丹念に描かれていている。
まるでスタジアムでサッカー観戦をするかのごとく、読んでいるだけでスタジアムに行った気にさせてくれる。可能なら試合の映像を見ながらもしくは思い出しながら読むとさらに深まるだろう。
サッカーを見に行ったことのない人はこれを読むことで代表戦後に渋谷で騒いでいる人と実際に観戦しているサポーターが一線を画したがる理由が分かるだろうし、知人にサポーターがいれば、その人達がどんな生活をしているのか、なぜ休みを犠牲にしているのかが分かると思うし、地震がサポーターであれば思わずにやりとしてしまうと思う。
サッカーの観戦記ではない、むしろサポーターと呼ばれる信者がどういう生態なのかを描かれた観察記でもあり、そしてその観察をするはずだった筆者がまさに「ミイラ取りがミイラになった」その典型的なパターンでもあった。
また、W杯を見てサッカーに興味を持った方が、「Jリーグってどうやって見に行くの?」「Jリーグってどんなところなの?」という疑問を持った時に読んでみると、初心者のための観戦ガイドとしても使えるであろう。