あらすじ
人の「こころ」の領域にまでITが入り込んできた今、人間の潜在能力を高め、よりいきいきとした状態(=ウェルビーイング)を実現するテクノロジーの設計、すなわち<ポジティブ・コンピューティング>のアプローチが求められています。近年注目されている「マインドフルネス」や「レジリエンス」、「フロー」などもウェルビーイングを育むための要因ですが、ではこういった心理的な要因とテクノロジーを、どう掛け合わせることが出来るでしょうか。
本書では、ウェルビーイングに関する様々な分野の最新の研究成果を基に、この問いを解き明かしていきます。これからのテクノロジーの在り方や、向き合い方を考えるうえでの基盤となる一冊です。
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人間がよりよく生きるとはどういうことだろうか? 心という数値化できないものを、情報技術はどうやって扱えばよいのだろうか? 本書は、このような問いに答えようとする者に対して、示唆に富んだヒントを与えてくれるだろう。
(「監訳者のことば」より)
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Posted by ブクログ
ウェルビーイングの向上にテクノロジーはどう関わるか。
心理的ウェルビーイングと人間の潜在力を高めるテクノロジーの設計および開発を「ポジティブ・コンピューティング」と呼ぶ。
ウェルビーイングの因子、具体的には、ポジティブ感情、動機づけ、没頭、自己への気づき、マインドフルネス、共感、思いやり、利他行動を取り上げ、それぞれの研究の動向、設計のヒントが書かれていた。
Posted by ブクログ
原題は「ポジティブ・コンピューティング」ということで、ITあるいはデジタル技術をいかに人間のウェルビーイングにつなげるか、を問いかけた本になります。そのため前半ではウェルビーイングの定義やそれを規定する要因について、医学、心理学、社会学、経済学など様々な分野のアプローチを紹介し、どのような要因がウェルビーイングを構成しているのか解説しています。大きくは3つの因子が紹介されています。
1. 自己因子(ポジティブ感情、動機付け&没頭、自己への気づき、マインドフルネス、心理的抵抗力・回復力)
2. 社会的因子(感謝、共感)
3. 超越的因子(思いやり、利他行動)
そしてそれぞれについて、どうすればテクノロジーがプラスに働くのか、それはなぜか、ということが本の後半に様々な研究成果を通じて紹介されています。
私自身、デジタル技術をいかにウェルビーイングにつなげるかを社会学的な視点から研究をしているのですが、その意味で本書は様々な分野の研究成果を紹介してくれているので、最良のレファレンス本になっています。デジタル・ウェルビーイングに携わる研究者にとっての必読者だと思います。
Posted by ブクログ
◾️概要
ポジティブコンピューティングの設計論を、自身の専門分野へ生かすため読みました。本書で最も印象に残ったのは、「ウェルビーイングと相関する因子は、全ての因子が全ての人にとって同じように良いわけではない。
自律性をどう刺激するか、ということが重要。」です。
◾️所感
テクノロジーが進歩したのに、人々の幸福が育まれていないのはなぜか?という問題意識を発端にしています。本書では、心理的ウェルビーイングと人間の潜在能力を高めるテクノロジーの設計および開発を、ポジティブコンピューティングと呼び論じています。今後、GDPに変わる指標として幸福感のようなものが採用される未来が来るかもしれません。その際、本書の知見があらゆる分野で活き、問題提起すると考えます。
Posted by ブクログ
デジタルテクノロジーは私たちの生活に深く浸透している。人と人をつなぎ、知識を拡張し、より便利に、賢く生きることを可能にしてきた。では、テクノロジーは人々を幸せにしているだろうか?この問いに技術者として答えるには、そもそも幸せとは何か?幸せかどうかをどうやって評価するか?が分からないと難しいだろう。
著者は、心理学、神経科学の研究を根拠として、人の幸せにテクノロジーが貢献するための設計理論の構築に挑戦している。具体的には、ウェルビーイングの因子として、ポジティブ感情、没頭、自己への気づき、レジリエンス、マインドフルネス、感謝、共感、思いやり、利他行動を挙げ、それぞれの理論、文献、方法と尺度に整理することで、技術者が実践するための枠組みとすることを目指す。本書ではその中のいくつかの因子について、理論を簡単に説明するとともに、テクノロジーに実装する事例を紹介し、技術者が設計にウェルビーイングを取り入れる際のヒントになる。
テクノロジーを扱う技術者が、こうした研究を参考に、実利だけでなく心理的ウェルビーイングにも配慮することで、世の中は良くなるかもしれない。しかし、心の問題は奥が深く、簡単には答えは出ない。人によって、文化によっても異なりうる。一つの文献だけに依拠せず、実践と検証を謙虚に繰り返すことが重要である。