【感想・ネタバレ】ソシオパスの告白のレビュー

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Posted by ブクログ 2017年04月29日

著者はソシオパスであるという。つねに刺激を求め、勝ちたいと思う気持ちが強く、恐怖心を覚えることがなかった。自分がまわりから普通に(あるいは魅力的に)見えるようにつねに演技し、まわりを誘惑し、巧みに操ってきた。良心や後悔がなく、力を行使することが好きで、人を破滅させてきた。ソシオパスである著者がまだほ...続きを読むんの子どものころから何を考え、どう行動してきたのか。本書にはこれらが豊富に、ただし淡々とした文章で綴られている。

本書の書き方はかなり淡々としたもので(たぶん意図的に)、抑揚を感じさせない。その文章からは著者が普通の人々(「共感性に富む人」)と同じような感情を持っていないのではないかと思えてくるかもしれない。著者は「自分の感じる感情をコントロールするのが苦手」で、感情の中には「認識もできなければ、理解もできないものがある」(227頁)。会話の最中に、そのような感情を相手が抱いていることを把握することも難しいという。ソシオパス(あるいはサイコパス)には共感性が欠如していると思われるゆえんであるが、だからと言ってソシオパスに感情がないということではない。これは著者が強調していることのひとつでもある。ソシオパスとはあくまで「自然の人間の変種」にすぎないのである(333頁)。

本書にはかなりたくさんの問いかけがある。ほとんど使われてなさそうな近所の自転車を無断で使って、それが持ち主にばれてしまったエピソードのあとで、「このような自転車を無断で使うことは反道徳的なことだろうか?」と問いかける。ソシオパスを普通の人々と分けるのは行動そのものではなく「衝動性、動機、精神内界についての認識である」(28頁)と著者は考えているが、これらの問いかけが、ソシオパスと普通の人々との違いをうまく表していることは間違いがないだろう。

本書では著者の感情の動きがことこまかに記されているので、まるで一人称で書かれた小説を読んでいるような気分にある。というか、実際にこれは小説なのではないだろうか?「訳者あとがき」では、本書は「心理学や精神医学の学術書」ではなく、「かなりフィクションがまじっているノンフィクション」と考えたほうが良いと書かれているが、まったく同感である。

ところで、本書と少し似ているスタンスで書かれた『サイコパス・インサイド』という本がある。研究のために撮った自分の脳画像が、あろうことかサイコパスのものととても似ていることを知って愕然としたという神経科学者が書いた自伝的な本だ。『サイコパス・インサイド』では「何がサイコパスを作るのか」が大きなひとつのテーマになっていて、神経科学的な議論に多くのページが割かれている。サイコパスの内面を描き出そうとしている本書とは、その点でおもむきが違っている。

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Posted by ブクログ 2017年07月07日

ソシオパスと診断された著者が、仮名で世に送り出したノンフィクションに近い自伝。
個人を特定されないよう加筆されているため、完全なノンフィクションではありません。
幼児時代から三十代現在までの人生の歩みを、「正常」とされる人とは違った目線で綴っています。
ウェブサイトからメールを送信することで秘密にす...続きを読むる約束で本名を明かすとしていましたが、著者は個人情報を漏らされてしまいました。
これにより、失業だけでなく生活においても制限が生じることになりました。
犯罪者ではいない人間が、ソシオパス・サイコパスであるだけでこのような扱いを受けることは「正常」なのでしょうか。
この分野の科学的研究が完成していないための予防策であるとは思いますが、それならば法的原則である疑わしきは罰せずを選択するべきだと私は思います。

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