あらすじ
熊を追いかけて46年になるツキノワグマ研究家が、長年のフィールドワークで培った圧倒的な知見をもとに過去の事故例を独自に分析、解説。
人はいつ、どこで、どのようにして熊に襲われてきたのか。熊から逃れる術はあるのか。被害を最小限に抑える方策は!? 過去1993件/2255人の人身事故例から「熊が人を襲うとき」の核心に迫る。
また平成28年5~6月に秋田県鹿角市で起きた重大事故(タケノコ採り4人が死亡、4人が重軽傷を負った国内第3規模の獣害事件)にも言及。
熊の分布域がかつてないほど広がりを見せる昨今、人と熊の遭遇はもはや山奥だけではなくなった。登山者、釣り人、山菜・キノコ取り、すべてのアウトドア・ファン必携の書。
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Posted by ブクログ
各地でクマの出没が続いている。先日、旧宅のほうにある畑(中山間地域)で農作業をしていた。そして10時半頃に、畑に隣接する道路に軽トラが止まった。顔見知りが降りてきて、「上のほうで、親子のクマが出たぞ。竹やぶに入っていくのを見た。気を付けろ」と。私「クマ撃退スプレーを持っている」とベルトに付けたスプレーを見せた。「じゃあ、それでやっつけて」と言われたものの、さすがにコワイので、さっさと切り上げて家に帰った。
本書の作者は日本ツキノワグマ研究所理事長で、活動中に8回クマに襲われたそうだ。本書には全国の新聞を丹念に調べた結果をもとして、《正しい熊の襲われ方を、一緒に学ぼう》とある。勿論クマに襲われないようにするには、どうしたらいいのかということも記されている。また、クマに襲われた場合の対処についても記されている。
それにしても、クマに襲われた人の被害のスゴイこと。昭和までの新聞では、被害状況をかなり生々しく書いている。それが最近のメディアでは、「遺体の損傷が激しく、身元の確認を急いでいる」といった報道の仕方である。要は頭部等も喰われて、顔の判別もつかないということだろう。いろいろと配慮をしているのは理解できるが、被害の実態は伝わらないのではないか。過激な「クマ擁護派」の人に本書をぜひ読ませたい。
Posted by ブクログ
ツキノワグマの事故事例集。
6月が交尾期。
越冬中に出産し、安全な穴の中で5月始めまで育成する。
猛暑の年は出没数が増える。
オスグマの行動圏は100km,メスグマは40km。
黎明薄暮型の昼行性だが、果樹園を襲うクマは夜行性にもなる。朝夕6時前後が最も活発に動く。マヅメの感覚に近い。
山菜やタケノコを食べるため、山菜採りやタケノコ掘りとバッティングしやすい。餌場を荒らすため、襲われやすい。
目は良くなく、鼻と耳は良い。
横の動きに敏感で、激しく動くものを追う。
縦の動きにはやや疎く、木陰に隠れてやり過ごす。
樹上のクマに注意。
爆竹と撃退スプレーは有効。
Posted by ブクログ
過去の事故(熊に襲われた)を1件ずつ紐解く。熊の生態に照らし合わせながら。そこがこの本のポイント。
知らないことばかりだった。
特に、熊はどうやら人間を同類の熊と認識して、接近や威嚇をしてくる場合があるようだと。
だから自分を大きく見せる(化かせる)ことが重要。
傘や、農作業・山菜採りの鎌やスコップなどを頭上に振りかざすなど。
反撃、撃退は熊を怒らすためリスクが高く、また逃げるなどの”急”な動きも熊を刺激すると。
熊の生態を研究している著者だからこその誠実な一冊でした。
ま、熊がいるような山に行くことは無いけど。
Posted by ブクログ
吉村昭の『羆嵐』から、熊についてもう少し知りたくなって読んだ。
著者はクマを追って46年、その間、襲われること8回、威嚇されること3回。(そして熊の事故に精通しているためか、無事に生きて帰ってきている)
以下、メモ
○過疎高齢化で里山が森に変わって、熊の生息域が広がったという一文が。山が狭くなって餌も少なくなって、人里に降りてくるのかと思っていたが、それだけでは無いのか……。
○朝夕6時前後に活動が高まる。13時くらいにもちょっと活動が高まる。真夜中やお昼の12時前後は休んでいる。なお、熊対策をしっかりとっている果樹園や養殖場では、人間が寝静まった夜中に、餌を採りにくる。
○6月は繁殖シーズンでイラついている。秋は越冬に向けて餌をとる行為が活発。ちなみに、幼い熊を連れている母クマは深追いしてまで襲ってこない。子熊は親離れ少し前に親熊がいる前で人に遭遇すると、積極的に襲ってくる。その上、母熊が加勢に加わる。子熊の攻撃は無駄が多く、長時間攻撃してくる。怖い。
○初夏と秋に事故が多い。人間が山に行きやすいシーズンだからエンカウントしやすい。夢中で採ってしまうこと、しゃがむ姿勢で小さくなることも攻撃を誘発する要因の一つ。熊は食べたところで休む習性があり、栗などを採りに行き、木の上や茂みで休んでいた熊に遭遇することも。木の近くで立木をカンカンと叩くなどの習慣が必要。
○県別の熊の事故数:新潟は7位。こんな上位ランクインは嫌だ。
○怪我の場所としては圧倒的に頭部。首を狙って、爪や牙が顔や頭に、ということらしい。若い熊が足を刈りにくるのも怖い。この頭部を狙った初撃をかわして、その上で何か得物で鼻先や目、口の中を狙って振り回せば、生還できるようだが……。
○二人に遭遇した場合、動いている方を襲う。また、左右に動くものを発見する能力が高く、縦に動く方が見えにくいらしい。だから熊に会ったらゆっくり後退りしろと言われるのか……。なお、背を向けて逃げた瞬間「弱い個体」認定を食らって、背中から襲われる。
○しかし、多人数が動くと目移りして攻撃力が落ちるらしい。昔、農作業に出る人が多い時代には、熊にあうと、人を呼んで大人数で手にした農具で滅多撃ちにして仕止めたエピソードも衝撃的だった。なお、得物で対峙せざるを得ない時は大きな動作(大きな動作)で熊を怯えさせること。仕留める目的でないのなら、囲まず退路を開けて打つと退路から逃げていく。
○熊が恐れるのは同属の雄熊。体を大きく見せたり、大きな音を立てて、得物を大きく振り回すことで助かった例もある。
○ナタで応戦した事例も多いが、熊の間合いに入るので、おすすめしない。熊はまず戦って勝てる相手ではない。柄が長い方がいいだろう。スコップとかピッケルとかストックとか。
○既に襲われた場合は首を両手で守り、地面に伏せて腹部を守って攻撃をやり過ごす。成獣なら数秒で攻撃が終わる。あとは現代医療を信じるしかないが。下半身を刈りにくる若い熊だと、反撃や大きく見せる行為、大声も必要。
○そうはいっても基本は、まず「遭遇しないようにする」。出没情報がある所に近付かない。入山するなら複数人で。そして、山でちょっと遠くに熊を発見してしまったら、動かない。急な動きに反応して襲ってくる。動かない、あるいはそろりそろりと木に寄って、そっと同化する。
○反撃すると熊の方も興奮してより強く反撃、というケースが多く、襲われたら前述のうつ伏せになり首を守るのがベター。いわゆる死んだフリ。背中にリュック、足元はしっかりした靴という山の装備が牙や爪から多少守ってくれることも。大怪我はするが現代の医療なら生き残れるかも。ただし、若い熊は攻撃が長引くことが多い。熊が居座る「蟠踞」という事態もある。そういう時は熊が静まった折を見て爆竹を鳴らしたり、大きな異音を出して去らせる、何でも振り回して自分を大きく見せるなどの対処がいる。
○爪による破傷風が恐ろしい。初撃を頭部に受けない。そして長時間拘束されて噛まれないことが大事だ。
○熊は、鼻と耳がよく目が悪いと言われる。なお、鈴のような高い音は聞こえるが、ラジオやカウベルの音は、実は聞こえない説が。効果が怪しい上に、ラジオは熊の足音を消してしまって、かえって危険なことも。
○犬が吠えたり襲ったりすることで熊が興奮して事態が悪化する場合(あるいは興奮状態の熊を、飼い主の元に連れてきてしまうことも)と逆に、吠えて撃退してくれる場合も。結果が両極端。
○関心を持つようなリュックなどを捨てて逃げれば時間を稼げるかというとそうでもない。動かないものより、動くものを追って襲う習性があるためだ。
○晩秋に雄熊が人間(女性が多い)に抱きつく事案は、同類の熊のメスだと勘違いすることから発生している模様。