あらすじ
西欧民主主義敗れたり!!終わりなき内戦が続き、無数の武装勢力や海賊が跋扈する「崩壊国家」ソマリア。 その中に、独自に武装解除し十数年も平和に暮らしている独立国があるという。果たしてそんな国が本当に存在しえるのか?事実を確かめるため、著者は誰も試みたことのない方法で世界一危険なエリアに飛び込んだ──。単行本では520ページ超のボリューム。著者渾身の歴史的<刮目>大作!これ以上のノンフィクションはもう二度と読めない。第35回(2013年)講談社ノンフィクション賞受賞。第3回梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞。BOOK OF THE YEAR2013今年最高の本第1位(dacapo)。本屋さん大賞ノンフィクション部門第1位(週刊文春)世界を揺るがす衝撃のルポルタージュ、ここに登場!
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Posted by ブクログ
今更ながら読んだこの本、強烈に面白かった。
ソマリランド、というアフリカの角の旧ソマリア一角にある、「独立国家」に深く入り込んで取材した本。ソマリランドがどのように成り立っているのか、ソマリ人とはどういう人たちなのかが描かれる。
著者の高野秀行さんが徹底して「実感」を通してその国や文化の構造を理解しようとしているのがすごいなと思う。
欧米式の研究やジャーナリズムでは欧州以外の外国文化を「他者」として研究の対象にして外から観察してしまう傾向が強く、それが評価を下すような鼻につく感じがあるけれど、高野さんのスタイルは中に入り込んで、そして、自分たちの知っている感覚の似たものを想定しながら理解をたぐり寄せようとする感じ。そこがとても良かった。
そして、ものすごくわかりづらくなりそうな、ソマリの氏族の感覚を日本の文脈で腹落ちするように工夫された説明が秀逸で面白く、それがソマリ人たちの文化を身近に感じる効果を抜群に挙げているところが素晴らしかった。
ソマリランドの民主主義のユニークかつ合理的な様子、ソマリ社会内の独自の力学で犯罪や損害の賠償がなされている様子、アフリカ諸国への国際支援がどういう効果をもたらしているか、など、中に入ってしっかりと見ないとわからないことが盛りだくさんで、本当に興味深かった。
特に面白すぎると思ったのは、今の独立国家を作った長老の1人が書いた「ソマリランドの憲法の発展」という英語の学位論文は体系的ではあるものの、ソマリの紛争解決の重要な方法「ディヤ」については全く触れられておらず、西欧文明でわかる範囲のことしか書かれていない、ということ。
本のその箇所まで仔細にかつ面白く高野さんの調査によりディヤの機能について理解してきたのに、論文では「西洋文明では理解できない」から書いていない、という。へ?じゃぁ、英語圏の人がこの論文読んだってソマリの憲法、わかったことにならないよね、この繊細さ、巧妙さが、となった。
西洋文明の文脈で理解できる程度に複雑さを排し、簡単に書いている訳で、もうあいつらに言ってもどうせわからんし、と諦めているところが面白いというか、欧米の専門家を助長させてるよなぁ。。現状仕方ないけど、などと思う。
世界は欧米の人たちがわかるように単純化して欧米に合わせて記述されて、そういう英語や欧米の情報だけに頼っていると、世界の豊かさや複雑さは到底わからないのだなと強く思った。
日本語が読めて、高野さんの本が読めて本当に良かったなと思う。
Posted by ブクログ
著者がソマリを理解するためにソマリ語を学び現地の人を言い負かす程になったり、仲間として認められていく過程は実にあっぱれで楽しい。海賊がどれほど儲かるビジネスなのかを「海賊を雇ったら」でシミュレーション。わかりやすく実に面白かったです。初めて著者の本を読みましたが、他の本も今後読んでいきたいと思います。全く知り得なかったソマリの世界にお腹いっぱい浸れる一冊でした。
Posted by ブクログ
2009年と2011年のソマリア--ソマリランド、プントランド、当時の暫定政権が一部を統治していた南部ソマリア--取材旅行をまとめた本。遠慮が無くカネにうるさく氏族を中心に考えるソマリ社会に著者同様に驚き呆れることの連続だった。
本書では主にソマリランドを中心に話が展開する。2度の内戦を経験しながら他のソマリ地域より平和で民主的な「国家」たり得ているソマリランドの歴史と政治体制は興味深い。氏族主義が浸透しているからこそ氏族単位では扱いきれない政治からは距離を置きつつ、氏族の長老たちが政治家たちを監視するシステムは画期的だが合理的だ。本書で幾度も触れるソマリ人の実利を重んじる性分にも合っているのだろう。
プントランドにて著者が半ば本気で海賊行為を立案し試算してみたり、言動や考え方が知らず知らずのうちに“ソマリ化”していたりとクスリと笑える箇所も多数。また、次の表現は本書で特に言い得て妙だと思った。
(前略)私が思うに、国際社会、もっと端的に言えば国連というのは、「高級な
会員制クラブ」みたいなものではないか。
人類普遍の理念に基づいた公平な組織と勘違いされることもあるが、実際には民
主主義とも人権とも直接関係がない。
なにしろ、このクラブは5人の理事の権限がひじょうに強く、理事の一人が反対
すれば、どんな素晴らしい提案も却下されてしまう。そこからして反民主主義的
だ。それに理事の一人である中国自体が人権や民主主義とは無縁だし、会員にも非
民主主義国家がたくさんある。
それはしょうがない。なんせ、第二次大戦の戦勝国によって任意に作られた会員
制クラブなのだから。公平や正義を期すほうが無理である。(後略)
※第7章8
2020年代のソマリ地域--ソマリランド、プントランド、ソマリアはどのようになっているのか、著者には引き続き取材してもらいたい。
Posted by ブクログ
ノンフィクション作家である高野秀行さんが謎の国家に潜入取材を行った記録を書いたこの本。高野さんは、とある番組で知っていたが初めて著作を読ませていただいた。ソマリランドという国を知ったのはいつであったか、携帯で時間つぶしにWiKiでソマリアのことを調べたのが切っ掛けであった。ソマリア海賊の話などをニュースで聞き、物騒な国なのだと思っていたが本を読んでその民主的な先進性に驚かされる。願わくばこの国家が大国の思惑に左右されることなくその彼らなりの平和を享受してほしいものである。本一つで大陸の謎国家に旅させてくれた高野氏に感謝したい。しかし、カートを噛んでみたいと感じてしまったのは内緒である。
Posted by ブクログ
「およそ真実の探索者は、塵芥より控え目でなくてはならない。」 (ガンジー 『ガンジー自伝』)
読み終わると冒頭のこの一節が本当にその通りだなと痛感する。
これまで生きていた中でなんとなく"常識"として自分の中に埋め込まれてきたことが一歩外に出ると全然そうでなくて、ソマリアの人はソマリアの仕組みで生きてる。だからこそ外から介入があるとその仕組みは維持できなくなる恐れがある。そんな中で自分たちで上手く築き上げてきた奇跡のような国(認められてないが)がソマリランド。
ソマリランドとして平和を維持できているのが、農業や産業が盛んな南部ではなく、"何もない"北部なのが皮肉だけどリアルだなと思った。
「ソマリランドは貧しくて何もない国だから、利権もない。利権がないから汚職も少ない。土地や財産や権力をめぐる争いも熾烈でない。」
という言葉が印象的だった。
逆に、内戦が厳しいモガディシュでは
「"トラブル・イズ・マイビジネス"でトラブルを起こせば起こすだけ、カネが外から送られてくる。モガディシュはトラブル全般が基幹産業なのである。」
高野さんが現地に入り込み生活する中で知ることを共有してもらうことで、メディアではなかなか切り取られないリアルを少し知れた気がする。
明るくない内容もあるけど、高野さんの軽快な語り口調と愉快な登場人物のおかげで、すごく読みやすい。
毎度思うけど、高野さんの人物描写は面白おかしく魅力的に登場人物を描いていて、私が高野さんの著書を好きな理由の一つ。今回も「まじか?!」と思うエピソードもありつつ、魅力的なソマリアの人たちをたくさん知れてとてもおもしろかった。