あらすじ
戦前から戦中、中国大陸や南方からの求人に応じ、大勢の若い女性が単身海を渡った。タイピストや電話交換手といった仕事に就いた彼女たちは、中流女性の居場所が家だとされていた時代に、なぜあえて外地で就職することを選んだのか。早婚多産と労働参加という矛盾した要求がなされる社会で、内地を飛び出した彼女たちはどのような経験をしたのか。当時の女性規範を大きく踏み越えたその行動と背景に、様々な角度から光を当てる。
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Posted by ブクログ
前作の『非国民な女たち』から続けて読んだが、いやはやなんとも、これまで自分が持っていた戦時中の女性に対するイメージが大きく変わった。この本は、戦時中に外地を就職先として選んだら女性たちの記録とその考察。外地とは中国(満州含む)、南方、つまり日本の占領地や植民地である。現在の我々でも海外で働くというのはさまざまな障害があるが、当時の女性たちがいとも軽々と戦地に向かうのは驚き。ただ今の時代から過去を見るのはやはり色眼鏡や予断、先入観が拭えない。とりあえず内地が不自由だからとか、新国家建設、大東亜共栄圏建設のための女性兵士とか、なんと観光地として外地を捉えていた可能性とか、これまでの先入観をことごとく打ち砕くような事例が出ていた。当時のハローワークに外地の求人が出ると、物凄い数の求職者がやって来たエピソードにも驚く。我々が持っている戦後の国土感と明治・大正・昭和と移民の時代を生きて来た人たちの感覚は全く異なっていたようだ。当時の新聞、雑誌の記事や体験者の戦後の自費出版等等、数多くの資料から導かれる視点は学びが多い。占領された中国人から見た日本人男女に対する意見は興味深い。敗戦の色が濃くなって外地で働いていた女性に対し海軍は看護師として登録し赤十字扱いで日本に安全に帰れるよう手配したが、陸軍は満州の関東軍を見れば分かるように見捨てる。
ちょっと笑い話を書いておく。南方に赴任した女性の記録に「派手な服装はいけない派手な化粧はいけない」と段々厳しくなった時期に配給の石鹸やタオルを持って華僑のパーマ屋に行きチリチリヘアにして来たら、「お前達のチリチリ頭はなんだ。見苦しいから今すぐ真直になおして来い。M君お前は化粧が濃過ぎるぞ」と女子全員大目玉を食らった、なんてエピソードも。とにかく読みやすいが刺激的な本であった。