あらすじ
酒からSFまで……バラエティ豊かな短篇集。
[──何だね、これは? 水を呉れと云つたぢやないか。
──あら、ソオダ水の方がいいと思つたものですから。
ソオダ水を三杯お替りしたマノ氏は、何やら日頃の気難しい顔は椅子の下に捨ててしまつたのか、たいへん上機嫌な赤い顔をして一人の女と話をしてゐた。
──先生のお髭、素敵ね。
マノ氏は八字髭をひねくつて満更でも無い顔をした。]
酒も煙草もたしなまず、女性にも縁のないマノ氏が、酒と女性にはまっていく様をユーモラスに描いた表題作のほか、あらゆることにだらしのない元妻に脅迫される気の弱い男性が主人公の「乾杯」、飲み仲間の男性3人が、若くて楚々とした女性をめぐって争うものの、みな手玉に取られてしまう「不可侵条約」、SFチックなテイストの「女雛」「焼餅やきの幽霊」など、バラエティに富んだ10話からなる短篇集。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
重い本を読んだ後で、軽い作品が読みたくて短編集のこちらを手に取りました。
やっぱり古い言葉遣いは心地良い。穏やかな気分になります。
「さう」とか「せう」とかの歴史的仮名遣い+「さうぢやなくつてよ」みたいな話し方が、私はしっくりきて落ち着きます。
人名がカタカナ表記なのが斬新でした。カタカナにするだけでこんなに変わるのかと。マノ氏と書くと海外文学っぽいから不思議。
小沼丹さん、やっぱりいい。好き。
Posted by ブクログ
旧仮名遣いが苦手ということもなく、小説の内容もツマラナイわけではないが、読むのに時間がかかった。「次の一編は、また他の本を読んだあとで…」と、何度も後回しにしてしまう短編集だった。この後回しでよしと思わせる感覚はなんだろうと考えて、思い当たったのは「落語」(落語だって、面白いことは知っているが、優先度は低い。子どもの頃から、「笑点」と「大相撲」とアニメが同時間帯に放送しているときに「笑点を見る」という選択肢は真っ先に落とされたものだ。)。
全10編の短編集。各話の内容が落語に似ている、というか、古今の落語にありそうなストーリーが並んでいるのだ。創作落語に限らず、(登場人物を八っつぁん、熊さんに変えれば)古典落語の中に同様の話が紛れ込んであってもおかしくない、と思わせる。ユーモアがあり色気もあるけど、それほど刺激的というわけでなく、登場人物もデフォルメされたキャラクターといった感じで、全体として受ける印象が“他愛のない”、より良く言えば“安心して読める”ユーモア小説集。
とりあえず、私好みだった作品を3編あげておくと「女雛」「木犀」「遠い顔」(振り返ってみれば、比較的「落語度」の低い3編)。