あらすじ
高齢者の疾患全般を診る老坂クリニック。院長の小町先生には短歌の趣味があり、治療に応用も。現役医師作家が描く書下ろし医療小説!
東京・自由が丘にある老坂クリニックは「老年内科」を看板に掲げる、高齢者の疾患全般を診る診療所。ちょっとした坂を上り切ったところにあり、お年寄りにはきつい。医師は2人。普通の高齢者の治療がしたいと言って、都心の大学病院から移ってきた31歳の山里羊司医師と、赤茶色に髪を染めた68歳のベテラン・老坂小町院長だ。小町先生には短歌の趣味があり、患者への診察メッセージを短歌に込めるという特技を持つ。それが治療に役立っているのかは不明だが。そして集まってくる患者は狙いどおりお年寄りばかり。今回の診療項目には、エンディングノート、白内障、免許返納の三つが並ぶ。
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Posted by ブクログ
前回もそうだったが、今回もスラスラと読めて楽しめた。
シリーズとして今後も続けてほしい。
東横線や昔住んでいた祐天寺のアパートなど、懐かしかった!
南杏子さんの本は優しく、心を温かくしてくれる。
Posted by ブクログ
「私のトリセツ最終章」
「もう一つのまなざし」
「キーを置いたその先に」
三話収録の連作短編集。
物語の舞台は自由が丘にある老坂クリニック。
老いる坂なんてネーミングに物哀しさを感じるが、ここは文字通り高齢者専門の診療所。
今回の診療メニューは、エンディングノート、白内障、免許返納。
いずれ誰もが通る道、非常に興味深いテーマだ。
特に二話で描かれる白内障の話は、最近視力に不安を覚えて来た自分にはとても参考になる内容だった。
短歌を詠む事を得意とするベテラン医師の小町院長だが、脳出血で入院中の夫へ対する想いが切なくて泣ける。
匿名
ちょうど母を「老年内科」に連れて行くようになったので、読むべしと思い購入。
舞台は東京自由が丘(というのが実際どんなところかは知らない)にある坂の上の老坂クリニック。
息子の嫁からエンディングノートを書くよう言われたが筆が進まない高齢男性は、図書館で倒れ、
居合わせた老坂クリニックの院長老坂小町に脱水を指摘される。
息子の嫁がエンディングノートを書くよう言ったのは、意外な理由からだったことも判明する。
白内障手術を勧められたが、言われたリスクを思い出すうちに怖くなり、
手術直前に暴れてキャンセルしてしまった高齢女性に、
メリットとデメリットを改めて伝えて手術を受けさせ、女性の生活が好転する。
車・運転好きだが、認知症とは言えないものの行動に異常が出始め、妻や息子から免許返納を迫られるが
意固地になっていた男性には、免許をの「一部返納」という道が提示された。
老坂クリニックには若い男性医師の山里羊司もいて、
時々ポカを小町先生を頼りにしてしまうのだけど、それがなかなか微笑ましい。
小町先生には短歌を詠む趣味があり、各話の患者には1首から数首の歌を短冊に書いて渡される。
また小町先生の夫は同じく医師であったが、脳出血で倒れ、意識が戻らないまま数年が経っているという設定。
夫に寄せる小町先生の歌は切ない。
小町先生は、患者さんの難問は解決するのに、自分の問題は簡単には解決できないようです。