あらすじ
<本書の内容の一部>
2025年夏の参議院選挙でも各党がアピールする、就職氷河期世代の支援策。だが、筆者は「現実を無視して“世代”で括ることは、政策をゆがめる」と批判する。
・「多くが就職できず、熟年非正規があふれ、貧困で年金も少なく、国に見捨てられた…」という氷河期世代イメージは、誇張である。
・氷河期世代の非正規(40代前半)のうち大卒男性は4%程度、大半は正社員化している。非正規の大多数=女性と非大卒こそ支援されるべきだ。
・氷河期より下の世代も、年収は低いままである。
・低年金者は、氷河期世代よりバブル世代のほうが多い。
・“見捨てられた”はウソ。政府は当初から対策を打ち、令和以降も年200億円前後の氷河期世代支援予算が使われた。
・マスコミ・政治家・官僚が、就職氷河期問題を好きなワケ。
・どの世代にもいる、本当に困窮している人を支援するには?
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
前期就職氷河期世代に就職活動した身として、データ解釈を矮小化しすぎかと。
一番疑問に思ったのは、新卒学卒者数と求人数の比較 及び 有効求人倍率の通年比較がないこと。及び失業率の比較。
各年比較で就職率の落ち込みが酷かったので右往左往したと認識している。ついで従業員人数就職率。ここもまずは押さえた上での議論が前提と感じた。筆者は認識はしているものの、世代論のウソのテーマに引きずられデータの取り方に恣意性が感じられたように感じた。
統計データの取り方として、割合と絶対数を厳密に定義しなくてはならない。
バブル世代と就職氷河期世代では絶対数が違う。従ってパーセンテージの誤差は絶対数の誤差ではない。氷河期世代に数%低ければ、バブル世代より人口の多い氷河期世代の数値は出てきた数字より悪くなる。世に問うならデータに出ないことを考慮して事実の解釈をしなければいけないと考える。
近藤さんの『就職氷河期世代-データで読み解く所得・家族形成・格差』で示した点は以下の点。
・新卒当初は非正規に落ちたが、次第に正社員への転換が進んだ。
・正社員に転換するにあたり、賃金の高い企業を求めて移住が進んだ。
・正社員の登用が進み、賃金は改善したが、バブル世代には及ばない。
自分もこの点に関しては異論はない。それを踏まえて、ずっと非正規で暮らしてきたという例は全人口が示している訳ではないことはそうであろう。
とはいいながら、一定層は存在している。そして皆が皆正社員を求めているわけでもないというのは就業支援をするプロジェクトに携わってわかってきた。
例えば、年齢上限の件。就職氷河期の方は年齢が徐々にあがっているが、従業員の多い企業は「キャリア形成のため」という実質の年齢制限を設けている事実がある。
外資で、年齢、性別、宗教による差別しての募集は禁止されているが、この項目が残っているのは、明確な法令違反だと感じている。不都合な真実にぶつかっていることも承知してほしい。筆者のいうように、解像度を上げる必要があることは同意である。
「就職氷河期」という言葉は使うには意味があると思っている。
それは賃金改善の部分をどのように再配分するするかという視点である。
就職氷河期という言葉にフォーカスしながら、中間層の再構成の定義する言葉のように使われてきた。あれもこれもでなくまずはここという言葉で使うのにはいいのではないかというのが私の意見である。
※ミクロの面での取りたいデータを見ると就職の流動化率。データを取るのは難しいかもしれないが、手取り率。本来はここもみるべきである。
バブル期より額面で5%減っていたら手取り分では言わずもがな。
それぞれの世代で大変なことはあるとしても。。。
筆者にとってはエコーチェンバーかも知れないが、やはり氷河期世代として環境は厳しかった。仕事の難易度も上がって、経済が成長しないなか、自己成長を求められ無理な働き方をさせられた皺寄せを受けていたら怨嗟の声にもなるよなという実感もこめて。