あらすじ
終戦から十八年後に届いた、塁(るい)の散り際の言葉──。再び回り始めた運命に導かれ、三上(みかみ)にもたらされたのは、生前に塁が書いていた手紙の束だった!! 塁の保護者代わりの衛藤(えとう)との邂逅で、初めて塁の心情が明かされる「ローレライの手紙」。懐中時計を修理する三上に初めて抱いた恋の前兆、二人が迎えた初めての夜──。『蒼穹のローレライ』塁&三上ペアのエピソードを網羅した番外編集第3弾!! ※口絵・イラスト収録あり
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Posted by ブクログ
尾上与一1945シリーズ復刻第2期第三弾
みんみんの後を追い、レビュー2番目。
本当に素晴らしいシリーズで、今回は“ローレライ”の塁と三上のスピンオフの短編掌編ですが、充分堪能させていただきました。
本編で、塁の戦後はないことはわかっているにもかかわらず、それでも内地に帰り三上との生活を築けることはないのかと儚く願いながら読んでしまう。
そして、自分の家の名誉回復の為に戦い続けてきた塁の拠り所となる三上への愛情は、想像以上に重く深く。
折口信夫先生も伴侶であった男性を南方で1945年に硫黄島で亡くされて、文学忌まで作られている。きっと、このシリーズを知ったら気に入ってくれたはず。
海鷲は、俊敏で扱いやすく、パイロットに愛されたけれど、時代の進歩の中で早く役目を終えた戦闘機らしい。尾上与一さんの掌編に出てくるとなると、この「軽快だが時代に取り残されていく」感覚が、この小説の時代背景とうまく響き合っているんじゃないでしょうか。
これは番外編なので、まずはぜひ本編『蒼穹のローレライ』から読んでいただきたいところです。入手が少し難しくなってきていたところでの復刻です。今なら、労せず手に入るかなと思います。