あらすじ
こんな奇跡があるのなら、人生にNOは言えない
落合南長崎の独立系カラオケ店「BIG NECO」では、今日もドラマが巻き起こる。
「カラオケの再現映像に出ていそうな女」と過去2回言われたことのある池田。
音が鳴らないトランぺッター・加賀と、その恋敵・サナ。
反抗期の娘と暮らす、元俳優の佐藤待男。
74歳にしてカラオケでアルバイトをする謎の老人・石崎さんと、
石崎さんを心配する指導役アルバイター・小野。
「E.YAZAWA」のステッカーを集め続ける、売れない作家・染井暖。
うだつのあがらない凡人たちが起こす、ちょっとした人生の奇跡ときらめき。
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Posted by ブクログ
ここ数年一週おきにカラオケに通っているのでなにげなく手に取ってみた一冊。
連作短編の2編目で
「香奈、頭をよくしてあげよう」にこんな形で再会するとは。(筋肉少女帯のライブには何回も行きました)
なんとも言えない味があってだんだんこころを掴まれていき、これはデビュー作から読まなければ、と決心しました。
Posted by ブクログ
収録されている五篇はいずれもちょっとコミカル&キュートで、私がこの著者の小説を好きな理由がつまっているなぁと思わせてくれる短編集だった。
やや寂れた印象のカラオケ店に集う、脇役的な人生を送る人たちの悲喜交々。
連作の種明かし的な立ち位置となる最後の『矢沢じゃなくても』にある文章が胸に響いた、というかグサグサ刺さった。
〈「自分でも、ほんとうはわかっているはずだよ。あなたはそれをしていないといけない、才能がなくても」〉
〈おれが書かなくても誰も困らない。だけど、おれは困るのだ。大切な誰かを思ってやっと作ることのできた噓は、ずっと先の自分のことを励ましてくれることもあって、おれみたいなやつは、それでやっと生きていこうと、生きていけるかもしれないと、思うのだ。〉
人生はそうでなくちゃな。
それと、チェーン店じゃないカラオケ店はやっぱり味があってよい。パサパサで前髪が長いうつむき加減の店員が、小さな声でやる気なげに接客していてほしい。それで、簡素なメニューにある唐揚げとかがやたら美味しくあってほしい。
ひとりカラオケしたくなってきた。