【感想・ネタバレ】Tシャツの日本史のレビュー

あらすじ

裾さばきの歴史的変遷から、日本の若者を覆う同調圧力の謎を解く。
古来、Tシャツはずっと日本史の死角にあった。
日本の若者たちは、まわりの友達と同じようにTシャツの裾をさばかないと「みっともない」「ださい」と言われ、笑われてしまう世界に生きてきた。
しかし、未だかつてインとアウトの変遷や構造を説明する者はいなかった。
だから考えたいのだ。この呪いを解く方法を。
Tシャツの日本史を書くこと。
それは日本で発生した同調圧力の遍歴を書き留めることだ――

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

5〜6年前、山下達郎のコンサートに行ったらMCで、どんなに時代変わってもシャツの裾出しはしないと宣言していましたが、本書はTシャツの裾を出すか?入れるか?で時代の変化と普遍性を読み取る、非常にスリリングな論考です。「どの時代のファッション雑誌も、同調圧力を強固にする呪いの言葉を投げかけてくる。正解を勝手に規定したうえでテクニックとして語り、自信のない読者に恐怖心を植えつける。そんなファッショ ン雑誌と世の中の同調圧力を、無名の若者たちが裾のインとアウトでぶち壊した。その瞬間、ファッ ション雑誌は鮮やかに路上に敗北する。朗報だ。なぜTシャツは君を傷つけるのか。きっとここに、そのヒントがある。」これは「はじめに 失われたTシャツを求めて」からの引用ですが、ね?このアンセム、おもしろそうでしょ?1984年生まれの著者にとっての歴史モードの前半は、ちょっとナンシー関味のある文体で研究書なのか、エッセイなのか戸惑ったりしますが、21世紀に入ってから(つまり著者が思春期に入ってから)は語り口含めて、ドライブがかかってきて、『「タックイン」「タックアウト」講談』の様相を呈してきてページめくりが止まりませんでした。「神は細部に宿る」的に言えば「創造性はTシャツの裾に宿る」です。ほぼ人生のほとんどを「タックアウト」してきた人間にとっては衝撃の書でした。いや〜面白かったぁ〜!

0
2025年11月30日

Posted by ブクログ

タックインかタックアウトか。
突き動かしたのは、ファッションかはたまた同調圧力か。
トレンドの最前線を突き詰めていくと、周回遅れと同値に見えていく。サインカーブとコサインカーブの関係性、2元論ならではの味わい。
しかし、裏の裏は表ではあるが、裏を知らない表とは少し違う。吉田栄作と菅田将暉が似て非なるもの。

0
2025年11月04日

Posted by ブクログ

ビックリした。
私はTシャツは裾を出して着ているからだ。これは別に世の中の流行りに反抗しているとか、ずっとそういう主義だからそうしているのではない。私は私なりに世の中に同調しているつもりだった。ところが2010年代中頃から既に「イン」が主流だという。インとアウトは、そのように変遷を繰り返している。私の学生時代は一貫して「イン」だった。ワイシャツがインなんだから、Tシャツもインでしょ、という私の理論だった。私はバカにされたことは一回しかないが、現代の若者は間違えると一貫してバカにされるという。では、前の「アウト」はいつからいつまでだったのか?

80年代末から2000年代までだったらしい。渋カジと言われる新しい不良が、ツッパリ漫画の主人公と一線を画すことで始まったらしい。以降「電車男」(2005)の主人公は「イン」がお茶の間でバカにされた。

Tシャツ姿が主人公になった記念碑的映画「欲望というの名の電車」(1951)「理由なき反抗」(1955)では「イン」だった。1968年の「男一匹ガキ大将」の戸川万吉が学ランの下に着ていたのが「イン」したTシャツだった事も確認した。

「スラムダンク」(1992)の桜木花道は、恋する女のためにTシャツの裾を出す場面があると言う。トレンディドラマで織田裕二は90年までずっとインだったが、91年以降は当たり前のようにアウトしているらしい。以降、ずっと「アウト」が主流で、私も本意ではないが同調圧力に負けてずっとアウトしている中でアウトが普通になっていたらしい。

藤本たつき「ルックバック」(2021)の主人公は、2016年に部屋から街に出るとき、アウトからインにさりげなく切り替えているという。そういう意味では、この漫画の何と繊細なことか!

ハッキリ言って私はこの本を読んだ後でもインとアウトの何処が「みっともなく」て何処が「おしゃれ」なのか、全くわからない。でも面白い本だった。

0
2025年10月15日

Posted by ブクログ

Tシャツの裾をズボンに入れるか入れないかをめぐる考察。
明治時代から日本人が洋服を着るようになった歴史に触れながら、サブカルチャーを中心に、様々なエピソードを紹介している。いわゆるファッションの研究書とはちょっと異なる視点だが、流行の形成とか伝播の仕方など、文化人類学的に面白い。参考文献も充実している。

0
2025年10月05日

「雑学・エンタメ」ランキング