あらすじ
ひどくなまぬるかった、あの夏――喫茶店〈北斎屋〉店長の野坂あやめは、得意客やその友人を含む男女八名で、瀬戸内海の真ん中に浮かぶS島を訪れた。数年前まで新興宗教の聖地だったという無人島に建つ別荘で、良質な退屈を楽しむはずが、到着翌日に死体が発見され事態は一変する。無惨絵のような刺殺体は、朱に染まった密室に横たわっていたのだ。それが悲劇の幕開けとばかりに、一人また一人と殺され、疑心暗鬼に陥る一行。霧に包まれ、交通と連絡の手段がない孤島でいったい何が起きているのか? 著者の出発点たる第4回鮎川哲也賞受賞作。/解説=杉江松恋
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
詩的で、全編に漂う哀しみと切なさがとても印象的(解説でも触れられていた)。
推理小説としても叙述のテクニックが独特で、語りそのものが大きな意味を持っている。
初刊時は「慟哭」が評判を呼びすぎて、鮎川哲也賞受賞はこちらなのに、今一つ話題にならなかった記憶。
復刊してもらえて、今読めて良かった。
Posted by ブクログ
孤島、クローズドサークル、密室殺人、連続殺人など本格ミステリーの要素と閉鎖空間で過ごす登場人物が疑心暗鬼になっていく心理描写の鮮明さが合わさった味わい深い作品で、終盤の解決編は意表を突くもので驚かされた。