あらすじ
自分のことは、自分で決める――。本来善しとされるはずなのに、どこか疲れるのはなぜ? そもそも自分で決めるってそんなによいものなのか。他人の決めたことにはどこまで踏み込んでよいのか。「自己決定」をめぐるこの社会の自縄自縛をときほぐす。 【目次】第一章 自分で決めることに息苦しさを感じてしまう……個人化が進む一方で責任を求められる社会/第二章 決定に対する責任の所在……集団と個人の決定をめぐる責任の論理/第三章 決定を回避する私たち……選ばずに済ませるためのエビデンスと合理性/第四章 自分で決めたことに追いかけられる私たち……こうありたいと望んだ「自分らしさ」に囚われる/第五章 決めたことへの介入は「余計なお世話」?……一人になる決定を尊重するか、孤独・孤立を問題視するか/第六章 緩やかに決められる社会へ……決められない・誤ってしまう「弱さ」を受け入れるには
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Posted by ブクログ
独身未婚中年男性の自分が読んでみました。
社会学の本なので具体的な解決策などは書いてありませんが、社会構造として、個人に責任が押しつけられやすい現代になっている、ということはかなり解像度高く描かれていると感じました。
個人的には、恋愛・結婚のところが印象的でした。
自分が比較的、この人の論がしっくり来ると思っていた御田寺圭さんが引用されていて、石田先生は半分同意、半分反論といったところでしょうか。
自分としては、たしかに石田先生仰るように、恋愛に「同意」が必要になったことで救われる性被害者がいるというのには激しく同意。
一方で、(特に男性側で)恋愛に消極的な人はもう性行為や結婚には及べず、かなり高度な信頼関係を築ける人でないと性行為や結婚のできない時代になったのだと自分は理解しています。
あと、この本のことと共通すると思うのは、会社など組織などでの意思決定の仕方。
要らない会議が多いし、最終的に、責任をとらなければいけない立場の人が、「自己決定」を逆手にとって、自分の責任逃れの装置として会社や組織を利用しているというのが日本ではかなり多いのではないでしょうか。
自分の提案を会議で出して通しますが、まずパワーバランスからして逆らえない雰囲気。そして決定した事項を進め失敗します。その責任は負いません。「だって、会議でみんな賛成して決まったじゃないですか」
自分の意見を、さも全体の意思であるかのように偽装する、無責任上役のなんと多いことか。
まあ、そういう組織は、「いい人」が率先して辞めていって滅びはするんですが。
気の弱い人が神経すり減らさずに、あと、決められない人も生きやすい日本や世界であってほしいなと思いました。
Posted by ブクログ
自分で決められる⇔責任を負わされる
ひとりを尊重する⇔孤独・孤立に陥る
やりたいことをやる⇔思わぬ非難を受ける
自分で決めたはずなのに息が詰まるのはなぜか。
自分のことは、自分で決める――。
本来善しとされるはずなのに、どこか疲れるのはなぜ?
そもそも自分で決めるってそんなによいものなのか。
他人の決めたことにはどこまで踏み込んでよいのか。
「自己決定」をめぐるこの社会の自縄自縛をときほぐす。(紹介文より)
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第一章 自分で決めることに息苦しさを感じてしまう
・自己決定を可能にするには、物質的な条件と思想的な条件がある
・「自分のことを自分で決める」を「社会」が「個人」に強く求める個人化社会
選択をしない、決定をしないことも「自分でした決定」となる
・自分で決める行為は、一気に緊張感を持つ
・倫理的、理性的な自己を求められる。自由にしろというわりに、結果にはケチがつけられる
・自己決定の概念が、西洋で主流の自律した人を前提に考えられている。欲求や衝動に流されない高度な人物を設定しがち。
・自分で決めることと責任を負うことは密接な関わりがある。また環境や運が決定を左右する中で、今の社会は自己決定に重きを置きすぎ。
・自己決定がさまざまなものの影響を受けている場合、その責任はだれにある?責任は社会秩序を成り立たすために援用される虚構の物語
・意識は行動の原因というよりも、逆に行動を正当化する機能を担う。意識が行動を決めるのではなく、行動が意識を形作る。無意識で下した決断を合理化するために意識が働く
・自己決定と自己責任を結びつけて考える人は、比較的に恵まれた成果を手にした人が支持する場合が多い。悪い結果を手にした人を努力不足とみなしがち。
第二章 決定に対する責任の所在
・個々人の決定と集団が課す責任のせめぎあい
・日本はとりわけ集団の決定を重視しやすい社会で、かつ集団の決定が必ず正しいわけではないということ
・個人の決定と集団の決定を比べた場合、集団の決定の方が与える影響は大きいが責任はあいまいになりがち。関わっている人が多く責任が分散するから。
・責任の体系は、強いものがつくりがち(政府や男性など)
第三章 決定を回避する私たち
・豊かだからものが選べる、記号的消費の時代
・選んでも選ばなくても見定められると息苦しい
・私たちの決定は他人から承認を得ることで安心できる決定になる
・やりたいことより迷惑が気になる
・自然と、無駄なく効率的な、合理的な選択をするようになっていく
・コスパタイパの落とし穴は、自らもリスクとなること、チャンスが閉じられる可能性があること
第四章 自分で決めたことに追い詰められる私たち
・決めたことが重荷になる、趣味を純粋に楽しめない
・個性や自分らしさにとらわれると、それが檻となる。とらわれやすいのが進路選択。
・上位と下位を表したパイプライン、最近は下位への漏れが目立つ、から上位はしがみつく
・個々人の決定を尊重しすぎる社会は硬直化しやすい。自己決定を離脱しずらい。
第五章 決めたことへの介入は「大きなお世話?」
・「キャンセル界隈」はさまざまなライフスタイルがあるという現実感と安心感
・嫌なつながりから離脱しやすくなると、孤立孤独の不安は高まる。自己決定だからといって関わらないと、それは排除にもつながる
第六章 ゆるやかに決められる社会へ
・自己決定を尊重する社会は機能不全を起こす
・弱い個人が決定できる緩やかな自己決定社会