あらすじ
中央権力が衰退し混迷する戦国時代、旧来の秩序を破る新興商人を、権力者たちは取り締まることが困難になった。新旧商人の縄張り争い、金融業の出現、拠点都市の建設、利権ビジネスと借金トラブル、御用商人の暗躍、世界貿易への参入、「楽市・楽座」の実態――。幕府、朝廷、大名、寺社、海外勢力、様々なプレイヤーが乱立する時代に、商人たちは何を頼り、秩序と自由の狭間を生き延びたのか? 史料に現れる、余りに人間的なエピソードの数々から、乱世を生き延びる戦略を学ぶ。
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戦国時代の商人および商人集団の活動を権力との関係から描いた本書は、しっかりと先行研究を踏まえて具体的な事例も的確に引用しながら、それでいて素人にもわかりやすく書かれた良書。とくに「座」の位置づけについて、新たに知ることも多く、勉強になった。
蛇足ながら、徳仁親王殿下の『交通史研究』掲載論文もしっかりと参考文献リストに掲載されている。
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13世紀の商人の誕生から16世紀織豊期までの中世商業史。
・商人は、権門の税などの徴収、物資の調達、消費、贅沢品の輸入等に携わる中から誕生した。権門に仕える見返りに、独占的買い付け・販売権、関銭・津料の免除などを得た。
・楽市は、新興宿場、町を交流させるため、多くの戦国大名が使った手段。楽座は、特定の商品に限って認める一方で座を保護するなど恣意的利用であった。中世的独占権を破棄したのは豊臣政権になってから。
・13世紀半ばには為替手形が利用され、すぐに借金手形も利用されるようになった。14世紀前半には、経営能力がある叡山の神人から土蔵が生まれ、京の商人等も金融業に参入するようになった。
・戦国大名は兵糧調達・関銭徴収とともに関の防衛を行うような商人=武士も家臣に持ったり、商人司・頭を抱えたりした。清州の伊藤宗十郎は信長、秀吉、福島正則、松平忠吉と継続的に清州の商業の独占と約銭徴収を担った。また、伊勢神宮の御師、熊野神社の山伏が布教だけでなく、大名と京との連絡役や商業に携わることも。
・戦国大名は、戦時資金の調達が必須であり、鉱山のほか商業利権が大きかった。越後上杉氏と三条西家→長尾氏の苧座、
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中世、特に戦国時代の商業や商人の状況を記述したもの。
中世らしく権力者との結びつきが重要であったこと、その中でも既得権益者と新興勢力が争う様を具体的に書いている。
権力は御用商人を保護し、その代わりに利益の一部を差し出す。
その構図は変わらないが、権力側のプレイヤーは貴族、寺社から将軍、そして守護や戦国大名へと移り、地域権力が自らの領域の商人を保護し、その代わりに税を納めさせるという権力の分散と自由な商取引から豊臣政権が権力の統一と商業の再編を図っていく。
この見取り絵は極めてわかりやすく、著者は中世の権力と既成商人に牛耳られた、不自由な取引から、権門の崩壊と戦国大名による権力の競争が商人を解放したかのように書いているが、それは庶民にとって良かったのか?
清水克行によれば弱体化した室町幕府のもと、京都の商人は米を市場に出さずに暴利を貪り、餓死者が多数出たという。
商人の利を求める行為は弱者を食い物にすること。
利を得るためには権力とも結びつき、賄賂を送り、偽文書も作る。
通読すると、今も昔も、資本主義であってもなくても商人のやることは変わらないということがよくわかった。
歴史や商業に関心ある人には一読の価値がある。
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<目次>
プロローグ 戦国時代の商人とはどういう存在だったのか?
第1章 戦国金融道~京都商人の栄枯盛衰
第2章 ほんとうの「楽市・楽座」~兵庫・堺・博多・伊勢大湊
第3章 新興商人vs特権商人~利権だらけの中世
第4章 御用商人たちの暗躍~商人的活動を担った大名家臣
第5章 大名たちの経営戦略~「資源大国」日本
第6章 世界史の中の戦国時代~貿易を担った商人たち
<内容>
中世から近世初期の日本の商人たちの活動を、研究史を上手くまとめてわかりやすく説明した本。授業では通り過ぎてしまう「楽市・楽座」。鎌倉期から栄えた「座」の特権を奪う、と説明するが、ちょっと違うようだ。授業で説明しながら、違和感を感じた部分をきちんと説明してくれている。実態は新しく支配下に置いた地域において、新しく商業振興なら「楽市」をおこなうが、従来の商業保護なら座の特権を守る、ということだ。こうしたあたりを、研究史を上手くかいつまんでくれているので、理解が進んだ。