あらすじ
2013年1月26日、映画公開! 小学校の卒業式で起きたとある事件をきっかけに、団地から出られなくなった少年・渡会悟。彼はそこで一生を過ごす決意をする。だが月日が経ち、同級生は減り、最愛の恋人も彼の前から去ろうとしていた。限られた世界で生きようとした少年が、孤独と葛藤の中で伸びやかに成長する姿を描く、青春小説に革命を起こした鮮烈なるデビュー作。
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Posted by ブクログ
時間としてはほんの17年。
17年あればゼロから初めて再度ゼロになって、という人生のサイクルを繰り返すことができる。
渡会悟君は、団地から出られなくても、そのサイクルを回すことが出来た。
反して団地から出ていても、サイクルを回せない人間はいる。僕みたいにね。
人生のサイクルを回すべきだと、この本を読んで思った。
ところで、ヒーさんが連れてきた大学生。彼はなんだったのだろう?
Posted by ブクログ
団地で一生生活すると決めた主人公の少年・渡会悟。彼の生活は、引きこもりではなく、極めてストイック。極真空手家・大山倍達に師事(といっても関連書を団地内のコミュニティセンターで読み漁り)し、体を鍛えに鍛え続ける。勉強もコミセンの図書室で行い、仕事、恋愛、失恋、人生のイベント全てを団地内で経験していく。序盤ではその理由は語られないけれど、団地に執着する本当の理由を知りたいとページを進めることに。最近ドライアイになった僕の目が思わず潤みました。
*文庫版で読むときは裏に書かれてある「あらすじ」、読まないことをお勧
めします!
Posted by ブクログ
ある事情により団地から外に出られなくなった少年が、
ミクロな世界で日々を生き抜く姿を描いた青春小説。
…と書くと、どんより暗いネガティブな物語を想像しがちだが、
物語の語り口調はむしろ明るくポジティブに近い。
関わる人間も起こる出来事も全て団地内に限定されるため、
主人公を取り巻く世界は確実に狭いのだが、
そこでの様々な経験は、広い世界で日々をぼんやり
生きているよりも、よほど濃密である様に感じた。
主人公は「引きこもり」であるが「リア充」でもあるのだ。
(世間一般の「引きこもり」、「リア充」とは性質が異なっているが)
物語の後半、主人公が団地で培ってきた技術を使って、
男としての勝負に挑んでいくシーンは、
前半のともすれば痛々しいとも言える青春時代の失敗で
学んだことが活かされ、主人公の成長と共に読んで爽快であった。
主人公の性格は一貫して変わってないのだが、
時が経ち、団地が寂れると共に円熟味を増していくのである。
主人公の偏屈で淡々としながらも、熱い生き様を感じる物語。
タイトルの「みなさん、さようなら」に繋がるのだが、
物語に出てくる登場人物が何らかの形で団地を去る時、
彼らのその後については、ほとんど何も語られない。
ケータイが普及してない時代背景もあって、
その呆気なさ、顛末のぼやけ方はリアリティに満ちている。
主人公にとっては団地で見聞きした情報が全てであるし、
他の住人にとって団地はただの住まいであるから、
「また会いましょう」ではなく「さようなら」なのだろう。
Posted by ブクログ
元団地住人として楽しませていただきました。不条理小説(ふつうは主人公を取り巻く環境が不条理なのだが、この場合主人公こそが不条理)と思わせつつ、ちゃんとベタなクライマックスを作るあたりは好き。
以下、微妙にネタバレ
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ラストは、団地に縛り付けていたのは母親と読めなくもない?
Posted by ブクログ
団地から出られなくなってしまった男の子の物語。最初は淡々としていてなかなか話に馴染めなかったけれど、過去の傷が明かされる場面から徐々に惹きつけられた。師匠との会話はほっこりするのだけど、過去が現在の足を引っ張ったりと、全体的に影を纏っていて悲しみに満ちている。だからこそ、最後に一歩を踏み出せたことは良かったと思う。きっかけとなる出来事はあったとはいえ、けっこうあっさりはしていたけれど、意外と終わりはそういうものなのかもしれない。これからの悟の人生が幸せであれと願う。