あらすじ
初めて語った、父の背中に学んだこと。記者時代、コツコツ独学したこと。そして、いま大学で一般教養を教える立場になって考えること。いまの時代に自分らしく生きるための「学び」について考えるエッセイ。(講談社現代新書)
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Posted by ブクログ
著者の長年の疑問「教養とは何だろう」を、東工大教授としての経験を踏まえ、「学び続ける力」と絡めて著した本。「教養」や「大学で身に付けるべき力」について、著者の卓見がちりばめられている。
ただ著者がいう、教養(culture)=リベラル・アーツ(Liberal Arts)には、若干疑問符が付く。しかし、リベラル・アーツが、自ら自由(Liberal)に問題を設定して新しい解を探していく技法(Arts)を意味し、その力を身につけて、市民自らの責任で積極的に社会に関わること(engagement)が、教養であると定義するならば、リベラルアーツと教養は不可分の関係にあると言える。ただ、本書は、いわゆる「教養論」をテーマにしたものではない(著者も認めている)。あくまでも読書を通して学び続けることの意味や楽しさを説いたものである。
大切な点は、読書だけではだめだということで、「読んだことを後でさらに自分で考えてみなければ、(略)多くは失われてしまう」ということだろう。つまり、読書→自分で考える→行動すること。このプロセスが、社会の中で発揮できる力となり、「より良く生きること」に繋がれば、それこそが現代版「教養」であり、「学び続ける力」に繋がると著者は言う。示唆に富んだ著書である。