あらすじ
60万円以下の請求額なら弁護士を雇わずとも簡易裁判所で1日で決着をつけてくれる「少額訴訟制度」を利用して、あるトラブルを解決しようとしたら、決着を見たのは何と2年半後。国民が安価で迅速な裁判を利用できるように作られた制度なのに、なぜこんなことに? 体験を元に日本の「使えない」司法制度の闇を暴いた、面白くてためになる1冊です。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
おもしろ民事体験記。著者のいつも通りの淡々としたトーンで語られるものの、裁判に関係したことのない人間には目から鱗の独自の世界観があることがよくわかる本。
個別の事例やADR動向など、今後変わるものはあるが、司法関係者の利害に基づくスタンスは構造的な話なので、法治国家の国民なら将来のリスクに備えて一読しておくと良さそうな本。
Posted by ブクログ
本人訴訟は身近なところで起きていて、これからも沢山起こる可能性があるということ、ADRのような新しい訴訟システムの仕組み、原発訴訟が増えると電気代から賠償金が支払われるというカラクリ、役に立たない判決、支払われない上に強制力の抑えられた賠償金……民事裁判の本人訴訟のえげつないところを暴き出す良書。ひろゆきが賠償金を踏み倒す理由もわかる。
Posted by ブクログ
○作家で評論家の橘氏の著作。
○著者自身が経験した民事裁判などの手続きを、時系列的にまとめることで、実際の司法や紛争解決のあり方をリアルに伝えている作品。
○民事調停や簡易裁判所、地方裁判所の役割、少額訴訟やADRの仕組みなど、いつ自分にとって必要となるか分からないが、意外と知らない知識について、分かりやすく解説している。
○出来れば紛争に巻き込まれたくないのが人情ではあるが、そうはいっていられない現状を踏まえると、最低限の知識として知っておきたい内容。とても参考になった。
Posted by ブクログ
地裁から移送を受けた簡裁はそれを再度地裁に移送はできないが、別の理由で再移送はできる。そして、それを地裁がまたまた簡裁に移送されることはないが、それは法が決めているのではなく、あくまでも慣例。
仲裁は外国でも執行可能。
主婦が本人訴訟で国を負かした判例がある。
Posted by ブクログ
「マネーロンダリング」、「お金持ちになれる黄金の羽」など多くの「お金系」本を発表している著者がなぜ、法律本を?それは偶然が重なり、民事裁判の代理人を著者が務めることになったからだ。
外国人の知人が不誠実な交通事故対応をする損保会社へクレームをする手伝いを、軽い気持ちで引き受けた著者。しかし、その解決に奔走するうち、お役所のたらい回しと著者のライターとしての興味力が混ざり合って、あれよあれよと法廷へ。そんな実体験をベースに日本の裁判事情を初心者に語っている。
簡易裁判所から地方裁判所へ。逆の流れもあり。そんな繰り返しだけで時間を浪費し、なかなか判決を出そうとしない日本の裁判ルールは初心者にはわかりにくいというより、初心者を排除している。「裁判入門」だが、読むと裁判をしたくなくなる。社会問題にもなっているが、日本の弁護士が余っているのは庶民が裁判をしたくなくなるようなわかりにくシステムと、判決にたいした強制力がないからだろう。
Posted by ブクログ
著者が外国人の知人の代理人として少額民事訴訟に関わった体験や、日本での本人訴訟の問題、福島原発の損害賠償の問題を扱っている。裁判官の人数の少なさ、弁護士費用の高さ、長期に渡る煩雑な手続きや賠償金の効力の薄さなどが、一般人が司法制度を利用する障壁になっているという。本書を読むと、司法制度は被害者にとって負担が重すぎる割に利がないように感じる。なんとかならないものなのか。
Posted by ブクログ
橘さんが、知人のオーストラリア人から交通事故に関する保険金トラブルの相談を受けたことから物語は始まる。
A損保とは、あいおいのこと、T海上とは、東京海上のことだと推察される。
Aの担当者が保険金を支払いたくないがために、巧妙な嘘をついて、保険金請求を諦めさせようとしたことが事の発端。
コンプライアンスがこれだけ重視されている現代において、こんなことが起きたなんて信じられない。
この担当者はきちんと処分されたのだろうか気になるところ。いずれにしても社内では相当な問題になっただろうから、出世街道からは外れたことだろう。
まだ若いみたいだから、これから心を入れ替えてやり直して欲しいと願う。
たかが、12万円の保険金で、どこまで費用と労力をかけて争うか、悩ましいところだったと思う。
でも、橘さんが主張するように、担当者が明らかな不正をしたのに、本来の12万円を払えばそれで終わりというのでは不正が横行してしまう。
やはり、保険会社は、早期に精一杯の誠意を見せるべきであった。
そうしていれば、こんなに事件がこじれることもなかったし、このような本が書かれることもなかった?
本書でとても心に響いたのは、「三方一両損」の話。
日本の司法が、壮大な大岡越前であるというのは言い過ぎだが、確かに、訴訟上の和解は、三方一両損に近いものがある。
橘さんが指摘するように、日本の司法は市民が想像するより公正であると私も感じる。
Posted by ブクログ
経済評論、小説で有名な橘玲による裁判実体験記
前半部分は読み物として面白いが、n数=1でもあり
本人裁判のテキストとしてはどうか?と思う。
簡裁と地裁の間を行ったりきたりして、官僚裁判官に振り回されるところなどは面白く読めた。
簡裁の判事・裁判官は簡裁の職員の上がりとして、司法試験を通っていない人がなることがあると言うのは初耳であった。でも日本が「法化社会になりつつある」とは、とても言えないのでは? (n数=1では)
Posted by ブクログ
この本の前半部分は橘玲さんの体験談であり、後半部分は裁判所や裁判に関する解説です。さらに最後に福島第1原発の事故(?)の保証についてのことが書かれています。
この本の前半部分はコメディーのように思えて、読んでいて笑ってしまいました。橘さんの本については、悲観的なことを淡々と書いている印象を持っていました。文章の捉え方は、読むときの精神状態によって、変わってくると思いますが、面白かったです。後半部分は橘さんらしく、本来の意図や歴史的な背景などが説明されていました。しかも、他国の状況などが書かれているところも橘さんらしいです。
新書なので、社会勉強として読んでもよいかなという印象です。
Posted by ブクログ
前半の著者が体験した民事裁判の話がなかなか面白い。
たぶん裁判を起こした本人たちはくだらない手続きと、
たらい回しの連続で心底うんざりしたんだと思うけど、
普通の人が体験できない裁判の現場を垣間見ることができる。
後半は現行の日本の裁判制度の概略と問題点について、
また原発事故の補償問題にも最後に触れている。
橘玲は法律の専門家ではないと思うのだがこの辺りも読みやすくまとまっている。
裁判にお付き合いしたってだけで、
こうした企画の本が1冊書けてしまうのかと、
別の意味でも驚いた。作家としての企画力のなせる技だなぁと。
Posted by ブクログ
12万円の保険金支払という、低額ながら外国人の本人訴訟という変わったケースに、紆余曲折しながらの裁判の話。ケースとしては変わっているのだろうけれど、その分いろいろなステップを踏んでいくため、ぼんやりした日常でも巻き込まれそうなレベルの訴訟から、もう少し先の世界までかいま見える。この本では裁判所・裁判官は比較的よいところに恵まれた感があって好意的に書かれているけれど、これから多く出てくるであろう東日本大震災の民事訴訟がみんなそんな風に進むとは限らない。
ともあれ、未経験者としては、読んでおいて損はない本。
Posted by ブクログ
実際の民事裁判の体験を本にしたもの。
少額訴訟、簡易裁判、地方裁判の違いもわかる。
以外と無料で使える法律相談があるということもわかった。(私も大学時代に友人から金銭の貸し借りの相談を受けて、役所の法律の無料を利用したことがある)
Posted by ブクログ
これを読んで自分が裁判を起こした時の事を思い出した。あの時お願いした弁護士さんにも言われたけど、良い裁判官に恵まれたから勝てたんだな~とあらためて思った。あと、当然ながら、良い弁護士さん達がついてくれたのも大きな理由。
Posted by ブクログ
【論理的であり論理的でない世界】
いつわれわれも裁判沙汰に巻き込まれるかわからない時代になりました。しかし、法の世界は複雑で専門性が必要となります。そのため、われわれが勉強して専門性を養うより、リーズナブルで良心的な専門機関を知っておく必要性があります。この本はそういう意味で非常に役に立ちます。
「法にかかわる世界は何を生み出しているのでしょう」このような疑問がわいてきます。
非常にお金と時間がかかるわりに実は何も生み出してはないのではないか。生産性という観点からは何もないのではないかと思えます。結局は高い人件費を払っているだけと理解することもできます。
素人から見ると、ないといけないが複雑怪奇にしすぎて、お金と時間がかかりすぎているように感じます。
Posted by ブクログ
2012/11/03
最後の原発事故に関する部分だけでも読む価値あり。もちろん中身読んだほうが理解しやすいから時間あるなら全部読むべし。
風評被害の賠償が認められるならもうなんでもありやな。そういえば国に保障してもらうために作った農作物を捨ててる農家のテレビを見たなー。
モラルハザードを当然の権利のごとくテレビは報じる。。
Posted by ブクログ
相変わらずの面白さ.実体験での行きつ戻りつ感が,いままでの明快さと違っているのが特に面白い.裁判というシステムは伏魔殿のよう.最後の東電損賠の話は考えさせられる.
Posted by ブクログ
実際にオーストラリア人の代理人として民事裁判に臨み、日本の民事裁判とは何ぞや?ということを書いた本。
日本ではこれから原発損害賠償という過去最大の民事裁判を抱えているため、あらためて民事裁判とは何かということを考える良い機会を本書は与えてくれる。
一応、法治国家の日本では争いを解決するための最終手段は民事裁判となっている。
しかし、あくまでもそれは一つのシステムでしかなく、万能ではない。
あらゆる問題に白黒決着をつけることなど不可能なのだから、どうしでも遺恨は残ってしまう。
その上、公的な制度である以上かけられるコストにも限界がある。
はっきり言って法律は絶対的な正義ではなく、ただの治政の道具でしかないということがよくわかった。
でも、そのことを自覚している人はまずいない。
多分、そこに気づかされる機会がこれからの原発訴訟なのだろう。
その賠償金の財源が電気料金であることからも、問題処理には大きな遺恨を残すはず。
法の限界を知り、それでもどうすべきかを考える機会がこれからやってくるので、その前に一読すべきだろう。
では、バイちゃ!
Posted by ブクログ
勝間さんのオススメでAudibleを拝聴した。
裁判は、私の大好きな刑事物でよく出てくるシーンであるが、プライベートで裁判所に行ったことなど1度もなく、訴訟などに関わったことも1度もないため非常に興味深い内容だった。
一度何かに巻き込まれてしまうと非常に身近な内容でもあるし、方法界は情報格差が最も大きい分野でもあるため素人が太刀打ちする事は難しいと感じる。
巻き込まれないことをが一番ではあるが、事故など否応なく巻き込まれてしまう事もある。
その時のための1つの知識としてこのような書籍があると非常にありがたいと感じた。
Posted by ブクログ
前半は著者の実体験に基づく少額裁判の現実を描いたドキュメンタリー。裁判は公平という迷信を崩した内容で嘘でもその嘘を反論できない時点でそれが真実になってしまう。正直者がバカを見る世界であることも知った。後半は現代裁判についての著者の見解が綴られている。
Posted by ブクログ
筆者が被告の代理人として関わった、実際の裁判の記録のような内容。
裁判の内容自体は、自動車保険会社に対する請求で、それほど興味を惹かれるものではないし、「なにも、ここまでこじらせて争わなくても・・」というような感じの裁判なのだけれど、実際の裁判当事者がその経緯をこと細かく記録ているという本自体がほとんど無いと思うので、ノンフィクションとしてとても面白かった。
書かれていた、法律上の手続きのあれこれについては、専門的な用語が多すぎることもあって、詳しいところについてはよくわからなかった。ただ、裁判を進めるというのは面倒なことがいろいろとあることはよくわかったので、その感覚は、自分が今後もし当事者になった時に役に立つ気がする。
物書きを生業とする筆者だからこそ、この裁判につぎこんだ時間と手間は元がとれる経験になったと思うけれど、一般人にとっては、ただただ疲労困憊するだけのものだと思う。
これはたしかに、「法律を知っている」人が圧倒的に有利な世界で、生半可な知識しかない素人がうかつに関わるべき世界ではないと思った。
日本では特定のひとしか訴訟リスクを負っていない、ということでもある。
会社員や公務員は、給与を差し押さえられてしまうから強制執行を逃れることができない(ただし本人の生活もあるので、差し押さえが出来るのは給与の4分の1まで)。不動産は登記によって所有者が公開されており、名義変更の記録も登記簿に記載されるからマイホームを買ってこつこつ返済をつづけていると、いったん紛争に巻き込まれれば自宅を差し押さえられて競売されかねない。
その一方で、まともに帳簿も付けていない現金商売の人や、他人名義の口座に資産を預けているひとはかんたんに強制執行を免れることができる。海外の法人に収益を振り込ませているような場合はどうしようもないだろう。