あらすじ
才能のカムバック―― 自分の才能にすら気づいていなかった高校生の大夢(ひろむ)が、真のチェリストになるために、世界に挑戦する! 『あの日の風を描く』で、第16回角川春樹小説賞を選考委員満場一致で受賞。 忽ち重版し、多くのメディアで取り上げられた期待の大型新人、受賞後第一作 心の琴線にふれる感動&スリリングな音楽小説、ここに誕生 高校三年生の雨宮大夢は、介護福祉士になる進路を考えていた。近所に住むクロアチア出身の元世界的なチェリスト、ルカ・デリッチ先生を支えるためだ。身体が不自由なデリッチは、妻の故国日本に隠棲しており、大夢は小学生の頃から、先生の『無伴奏チェロ組曲』に憧れてチェロを習っていた。そんなある日、クロアチアから「ルカ・デリッチ国際コンクール」を新設したいという話が届く―― 異例の音楽コンクールに訳ありの“敗北者”たちが集い、それぞれの想いを懸けて熾烈な戦いを繰り広げる
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Posted by ブクログ
自分は青春小説はこれまであまり読んできてなくて、今回この本を読んで、「音楽は自分一人で全てできるものじゃなく、周りの人たちの協力によって初めてできる」ということを改めて思い知らされました。
主人公の雨宮大夢は苦しい家庭環境の中でチェロと元世界的に有名だったチェリストと出会い、それからその人のことを先生と呼び、先生の助言でバレーボール部に入って仲間ができ、高校生活を楽しく謳歌できたと思います。高校卒業してからも周りとの縁が切れることはなく、先生はクロアチアに帰って自分の名がついた国際コンクールを主催してくれてそれに雨宮大夢を遠回しに読んだって自分で勝手に思ってます。コンクールだから当然ライバルはいるもので高祖弦という重要人物のぶっきらぼうな言葉は面白かったです。最後にコンクールの審査員長を辞めた後もこのコンクールは年齢制限の上限を定めないでほしいとの言葉は、音楽に年齢はないことを訴えたかったのでしょう。
また、クロアチアとセルビアの関係もちょっと調べました。旧ユーゴスラビア時代にユーゴスラビア紛争で国が分断してクロアチアとセルビアになって両国の仲は悪かったですが、現在は関係改善に向けて努力していると書いてありました。セルビア人の人が雨宮大夢に気さくに自分のチェロを貸したシーンは音楽に国境はない、ということを改めて勉強しました。
素晴らしい青春エンタメ小説だったと思います。感動するところも何か所もありました。しばらくは何回かは印象に残った部分を読み返すと思います。
Posted by ブクログ
個人的にとても好きなお話でした。
パッと出てきたのがコミックにはなってしまいますが、「この音とまれ!」や「4月は君の嘘」などが好きな人は、本作も好きなのではないかなと思いました。
先生と繋がっているため、だったチェロは
いつの間にか大夢自身の夢へと変わっていく。
介護士になると決めていた大夢が、
自らの選び掴み取っていく様は胸にグッときました。
先生だけではなく、父親との関係性や兄弟子との出会いにより、大夢の視野がパァーーーっと広がっていくのを目の当たりにした気分。
読んでる自分も前向きに明るくなっていく作品で、本当に素敵でした。
Posted by ブクログ
音楽って本当に深くて面白いなと改めて感じた。
大夢が演奏するときのどんどんと膨らんでいく曲のイメージが目の前に広がっていき、読んでいるだけでも胸が高鳴る。その人にしか生み出せない音楽がある。答えがないからこそ、音楽は難しくて面白い。今まで音楽が作られた時代背景や作曲家の心情などについてあまり学んだことがなかったけれど、この本を読んでとても興味を持った。背景を思い描きながら聴くと、同じ音楽も全然違うように聴くことができる。
ふとした出会いが人生を変える。音楽を通して、色々な出会いが重なって、大夢の世界が広がっていく。幸せも苦しさも味わいながら、必死に努力して、時にもがきながらも、前を向いて生きていく尊さを感じられる素敵な本だった。
Posted by ブクログ
大夢が人との出会いを通して世界を広げ、成長していく姿にぐっときた。忘れられた才能や遅咲きの人に光を、という考え方にも共感。こんなコンクールが本当にあったら素敵だなと思う(あるのかもしれないけど)。コンクールの描写では、思わず実際の演奏も聴きたくなった。