あらすじ
戦争についての著書は、大半が政治学か歴史か軍事防衛の専門家によるもの。中身は戦争に至るまでの権力闘争や戦略などに集中している。一方、日本史や日本経済史の著書は、戦争に至るまでの経緯は書かれているが、戦争と経済の因果関係に触れた著作はまずない。本書は経済とイデオロギーの相互関連に注目しながら戦争が起きる原因を探る、全く新しい切り口から挑む、実証的で画期的な著作である。(発行:夕日書房、発売:光文社)
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Posted by ブクログ
NHK「映像の世紀」を見たことをきっかけに、最近昭和史のうちの戦前から敗戦までの期間の本を読み始めているが、この本は非常に面白い。(別の意味での「失敗の本質」。)
「①戦争するかしないかは、集団間の利害対立を『戦争によって解決しようとするイデオロギー』と『平和的な外交・市場取引によって解決しようとするイデオロギー』との『イデオロギー間競争』において、いずれが勝ち残るかによって決定され、②この『イデオロギー間競争』に勝ち残れるかどうかは、経済的な状況に大きく依存している」(P.5-6)。
この「経済的な状況」に「大きく依存」とは、端的に言えば、国の経済が厳しい場合、貧富の格差が極端に開いている場合に、『戦争によって解決しようとするイデオロギー』に流されやすい、ということと理解した。日本の場合であれば「デフレ不況をもたらした経済政策の大失敗」、それによる「昭和恐慌」が「戦争」イデオロギーが支配的になる状況を生み出した。
1940年までの「日本の貿易の圧倒的相手はアメリカ」であり「満蒙ではなく、アメリカとの貿易こそが、資源のない日本の生命線だった」(P.319)。もし、このアメリカとの貿易を重視する政策を採っていたならば、の「『たら、れば』の夢」(P.370)も、本当にそうなっていてほしかった、と思わせる内容。