【感想・ネタバレ】金沢浅野川雨情のレビュー

あらすじ

金沢のひがし茶屋街で人気を誇った芸妓・なつ江が殺された。事件現場近くで目撃された水引細工店の女性や被害者と仲のよかった老舗料亭の料理人、贔屓にしていた和菓子店の店主、老人福祉施設の経営者……聞き込みを続ける金沢東署の小豆沢玲子は、誰もが抱える家族や後継者の問題、悩みにも寄り添いつつ、徐々に事件の核心に近づいていく。

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Posted by ブクログ

著者渾身の上梓作。「看守の流儀」も霞むほど、間違いなく今までの城山作品で最高傑作。見事で巧みなプロット、ひとつの殺人事件の真相が少しずつ明らかになっていく中での花街周辺のサイドストーリひとつひとつのきめ細かさと奥深さ、そして何といっても元新聞記者から転職した女刑事・小豆沢玲子の人間的優しさ溢れる魅力が全編に通底しており、章を重ねる毎に小豆沢玲子が好きになっている自分がいる。「浅野川雨情」を巡る人間模様の緻密さ、そしてラストで明かされる歌詞にこめられた親子愛には落涙を止められない。著者の集大成ともいえる作品で、魅力が十二分に感じられる大傑作。「ダブルバインド」の比留が登場するのは読者サービスだな。小豆沢玲子事件簿でシリーズが組めるほどの貴重なキャラクタなので続編をお願いしたい。

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2025年08月20日

Posted by ブクログ

星4.5

「水引」「治部煮」「和菓子」「芸妓」など、金沢の伝統が、詰め込まれており、そういうものが好きな私には楽しい本だった。城山真一さんは、金沢在住で、取材については『web本の雑誌 作家の読書道』で読んだ。作中の創作和菓子の写真も載っている(金沢人なら誰でも知っている「吉はし」の和菓子)。
れ故、星0.5アップ。

城山真一さんは初読みなのだが、文章がていねいで読みやすく、私はいつも装飾的というか文学的というか、そういう文章が苦手なので、とても読みやすかった。最初の方は、ちょっと説明過多な気もしたけど。
私が推理小説を読んでいるときにによくある、説明がよくされておらず、「え、これってどう言う意味?」みたいなのが全然なかった。読解力がないので。

特に中盤は、次が気になって、ページを捲る手が止まらなかった。

不思議な力を持つ金沢東部署の女性刑事、小豆沢が出てくる第二弾も考えられているようだ。(ただし、地元の人なら「あずさわ」ではなく、「あずきさわ」と呼んでいる気もするが)。

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2025年11月22日

Posted by ブクログ

時代劇の推理ものと思って読み始めたが、そうではなく、推理もとても深かった。犯人が分かったあとも物語は続き、最後まで読み終えて、このスタイルにとても納得しました。

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2025年10月02日

Posted by ブクログ

 連作集。変死体で発見された芸妓に直接的・間接的に関わっていた人々がそれぞれの章(本書では第◯景)の主人公。全ての章に登場するのは、事件を捜査中の元新聞記者で現刑事の小豆沢。金沢の街に展開されている産業がうまく取り込まれ、現実世界で実際に起こった有料老人ホームのスキャンダルも改変されて扱われている。物語の中でも、本書でも、第八景で『浅野川雨情』が舞われ、すべての登場人物が集合し大団円となる。恋心だけではなく、家族を想う心も、時には秘めなければならないこともあるのだ。

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2025年09月14日

Posted by ブクログ

金沢を舞台としたミステリーと知って、県民なら読まなきゃ!と。

読み始めて最初の方は、これ、ミステリーじゃなかったの?!ってぐらいにミステリーぽくなくて、外れたかも。と思っていた。
金沢の伝統を今に引き継いでいるお店の後継者の問題やそれを取り巻く親子のすれ違いとかが続いて、肝心の殺された芸妓、なつ江のエピソードがおまけ程度にしか出てこなかったから。

それでも読み進めていくと途中から、あれ、これ前の章で出てきたエピソード、ここと繋がってた!これはその前の。。。と物語の全貌が見え始め、それと同時進行でなつ江の事件も絡んできた辺りからは一気にその世界にのめり込んだ。
ラストにもう一やま盛り込んだり浅野川雨情に隠された秘密など、最後の最後まで色々と出てくるのも読み手を楽しませてくれるし、小豆沢刑事がそっと人々に寄り添っていく姿は人情そのもの。

余談で。
金沢はさほど遠くない距離だから小説で出てきた場所に今度、行ってみようかと思っている。

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2025年09月28日

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