あらすじ
〈「いったいあんたはんは誰のために、なんのために菓子をこしらえたはるんや」〉
〈第四回京都文学賞「一般部門優秀賞」「読者選考委員賞」ダブル受賞作品(原題『一菓』)。〉
大学を卒業し、とくに夢や目標があるわけではなく毎日を過ごしていた主人公の雄司。ところが偶然に入った和菓子屋「洛中甘匠庵」で目にした「求む、菓子職人」の貼紙をきっかけに、京都島原の有名和菓子店で修業を始める。一年後に後継者を決めるという。腕は一流だが昔気質で頑固な大将との衝突、他の職人との争い、地域の人々や店の仲間たちとの交流を通し、職人として成長していくが、やがて大将の体調にも変化が……。菓子職人としての覚悟、伝統を受け渡す者と受け取る者の想いを描き出す。第四回京都文学賞「一般部門優秀賞」「読者選考委員賞」ダブル受賞作品。
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Posted by ブクログ
「青天」と連続して読んだので、何をこの歳で私はいまさら青春小説読んでるんだとやや苦笑いしてしまった。
でも、面白かった。
たいした展開はないし、登場人物の描写も実に薄いのだが、描かれている京都の和菓子店の世界が圧倒的で、びっくりさせられる。私の大好きな「銀二貫」の寒天づくりの場面なんかを思い出して、身震いしてしまう。
そう、「青天」と同じように、和菓子作りの世界も、実に体育会的なのだ。
信じられないほどの、筋トレ的作業。
そして、出来上がるのは繊細な芸術作品。
なのに、味までよくなくてはならないという「無理ゲー」状態。
そう考えると、京大卒の若き主人公がいかに適任なのかということに気づく。
我々が日本という国に生まれて幸せだと思う瞬間の一つを支えているのは、おそろしいほど現実離れしたの職人の世界なのだと改めて畏敬の念を抱く。
たいした努力も技術もなく、小手先のマーケティングで利益を得ようとするビジネス・人が多い現代社会。
この本に描かれている人々のような、地に足がついた生活がしたい。心から思ってしまった。