【感想・ネタバレ】三浦綾子 電子全集 死の彼方までものレビュー

あらすじ

人間の強さと脆さ、愛憎、生と死を厳しくも優しい視点から描いた傑作中短編集。

作家活動の最盛期にあった著者が、長編執筆のかたわらで、何気ない日常の中に垣間見える、底知れぬ闇を抱えた人間の弱さを描き出した傑作中短編集。平穏な家庭に忍び込んでくる死の影を背負った女の息遣いに、家族の信頼と幸福がもろくも崩れ去っていく姿を描いた表題作「死の彼方までも」の他に、「赤い帽子」「足跡の消えた女」「逃亡」を収録。

1977年(昭和52年)、1983年(昭和58年)の2度にわたりテレビドラマ化された稀代の名作。

「三浦綾子電子全集」付録として、表題作が1977年にテレビドラマ化された時の台本、単行本として出版されたときの記念写真を収録!

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Posted by ブクログ

「信ずるって変ねえ。確証がないことを信ずるのよね。」 
 三浦綾子さんの短編「足跡の消えた女」の一節。

 三浦さんはキリスト教徒してこういう言葉を散りばめた小説をお書きなったが、帰依していなくてもその言葉は響いてくる。

 定かでないからこそ信じたくなるし、信じなければ生きていけない。

 いつも正しいことを選択しているはず、恥じないように行動しているはず、自分はぶれない、だからひともそうしていると信じよう。

 ではない。自分は不確かである。けれどもひとのことは信じよう。

 ここに嘘つきがいるとする。明らかに嘘とわかっていても、そのひとがそう信じて欲しいとしたら、信じてあげることが自分の確かさに繋がるのではないかと思う。

 嘘が見えてしまい、正さねば気がすまない性質ならばこそ、そうすべきなのだ。

 と

  『死の彼方までも』(表題作、「赤い帽子」「足跡の消えた女」「逃亡」)というこの短編集を読んで、哲学的考察に陥ってしまうのである。

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2021年08月13日

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