あらすじ
今の日本の生みの親は持統天皇、阿部正弘の「開国・富国・強兵」構想とそれを実行した大久保利通、戦争に負けて外交で勝った吉田茂……だから、歴史は面白い! 歴史の流れを振り返ると、多くの国に大転換が訪れる歴史の曲がり角がありました。そしてその曲がり角に立っていた人物が、どの国にも存在しました。日本におけるそのような人物として次の十名を選びました。蘇我馬子、持統天皇、藤原良房、白河法皇、平清盛、足利義満、織田信長、阿部正弘、大久保利通、吉田茂(豊臣秀吉を入れるかどうか、ずいぶん悩みました)。日本史の世界は近年になって、多くの新資料の発見や新たな発掘調査もあって、歴史的な事件や登場人物について、その評価が変化しています。そのような研究結果も検証しつつ選択した十名です。さらに、次の諸点も考慮に入れながらの人選でした。1 世界に対して広い視野を持っていたか、2 経済を重視する姿勢を持っていたか、3 その上でリーダーとしての手腕はどうであったか。以上の三点です。お読みいただいて、現代の世界のリーダーたちや、日本の政治家たちを見つめなおしていただく、機会になれば幸いです。(本書「はじめに」より)
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Posted by ブクログ
出口さんの語り口は本当に上手だ。好感を持って読むから自分に入りやすい。
蘇我氏あたりはかなり端折られて教わる事が多く、この本でじっくり向き合うと世界が広がると思えた。
教科書にもこのような部分を入れたら良いのにと思った。
鎖国ってなんだと言う部分もとても面白い。
Posted by ブクログ
いやぁ、479頁もあるので、少し手こずったけど素晴らしい本でした。特に日本を変えた10人の選定が素晴らしいのと、その10傑がなにを考えどう行動したのかまで突っ込んでるのがすごいと思いました。
古代で言えば蘇我馬子や持統天皇が日本の基本的な仕組みを変えたなんて思ってもいなかったし、藤原吉房や白河法皇が果たした役割なんていうのも痺れます。聖徳太子はいなかったというのが学会の常識になっているらしいが、なぜ聖徳太子を登場させなければならなかったのか?天皇をうまく利用しながら支配する仕組みを作ったのは蘇我氏だったという。表面的な日本史ではなく、人間としての歴史を学ぶにはとてもいい本だと思います。
Posted by ブクログ
やっぱり出口先生の歴史解説は、読みやすくて分かりやすい。転換点において日本史を形作った10人として、自分の知ってる歴史像と、これまでの出口先生の著書を合わせると、概ね予測通りのメンバーだったけど、「藤原良房」が入っていたのは、意外だった(藤原北家が摂関家として君臨する時代を開いた、という意味合いで取り上げられており、その時代の少し細かい事情まで知れて、面白かった)。
10人の選出の仕方として、世界的な広い視野・経済重視の姿勢・リーダーとしての手腕、の3つに重点を置いているのも、良いと思った。
信長が大量に茶器を買い漁ったのは、単に趣味や権威の誇示だと思っていたけど、マネーサプライ(通貨供給量)を考慮して、手元に溜まった金銀を世の中に放出することで市場を活性化させる意図があった可能性があり、戦国時代の日本でそこまでの経済感覚を持っていた事は、凄まじい事だと思った。
大久保利通について、「仕事の失敗ということがほとんどなく、これだけ有能な人は藤原不比等以来じゃないかと、ひそかに考えている」と評しており、出口さんにとって古代から明治まで(現代まで?)の政治家トップ2が、藤原不比等と大久保利通になるのも、新鮮だった(大久保は何となく分かるが、不比等がそこまで凄いのか…)。
最近読んだ「超凝縮 人類と経済学全体史」にも通じる事だが、歴史全体を通して見ると、交易を推進した方が栄えるんだと思う。特に日本においてだが、世界全体にも当てはまるのだろう。現在のトランプ米大統領の交易を抑制するやり方は、世界に対してもアメリカ自身に対しても益なき事と思うが、それに対して日本がどう振る舞うべきか。それでも日本はアメリカと友好を保つしかない状況と書いてあった。