あらすじ
二〇〇九年夏、日本で史上初の民意に基づく政権交代が起こった。だがその後の民主党政権は、鳩山、菅、野田と首相が変わるたびに政策が大きく変容、小沢をめぐるカネの問題に苛まれ、離党者が相次ぎ、決められない政治が続いた。当初、八割近くの人びとが支持した政権交代とは何であったのか。本書は、民主党政権の軌跡を辿るとともに、政権交代を経ても、なぜ民意を反映しない政治が続くのかを明らかにする。
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Posted by ブクログ
[変わったもの、変われなかったもの]長年にわたる自民党政権に代わり、国民の期待を背負って民主党が政権に就くことになった2009年の政権交代。その政治的事件をもたらした原因、そして政権交代後の民主党の「凋落」を踏まえつつ、日本のあるべき次の政治形態について考えていく作品です。著者は、米国の数々の大学で研究教育に従事した経験をお持ちの小林良彰。
政権交代にまつわるデータや出来事がわかりやすく時系列でまとめられており、当時の流れを振り返る上で非常に便利な一冊。小泉政権以後から野田政権に至るまでの日本の政局のテンポの速い変転を理解することができました。本書で示される政権交代が起きた理由などについては、巷間で語られるところのものから大きな違いがありませんでしたが、スタンダードな見方を身につけておく上で有益だと思いました。
政治プロセスの適切化を主目的とした選挙制度改革の提言については、読者によってその賛否がわかれるところがあるかと思います。他方、選挙制度の改革というのが本当に一筋縄ではいかないことが本書を読むだけでもよくわかると思いますので、議論の出発点として読んでみるのもまた良いのではないでしょうか。
〜日本の政権交代は、権力を担う政党政治家が代わっても、有権者にとって政治が変わるわけではなく、未来が明るく見えるとは言いがたい。つまり「権力の交代」にとどまっているのである。〜
それにしても著者による鳩山元総理への指弾ぶりはすごかった☆5つ
Posted by ブクログ
民主党の政権交代の3年3ヶ月を単なる無駄ととらえるのか、それとも歴史の中のある意味必然と捉えるのか、アンケートなどの結果を生かしながら、新書の枠内にうまくまとめていると思った。
最初の150ページは、政権交代の小史である。小泉総理の郵政選挙から、安倍、福田、麻生総理から民主党への政権交代へは、自民党への懲罰的な選挙投票だったとしており、マニフェストに賛成したわけではないとしている。その上で、鳩山、菅、野田総理の実際の政治の中で、政策や方向がぶれていくさまが載っている。
その上で終章の50ページでは、選挙の有権者の投票の分析、また制度が必ずしも有効に作用していないことを挙げている。なかなか民主主義の制度は理念だけではうまくいかないものだと感じた。しかし、これが実際の現実だとも思う。
Posted by ブクログ
初めての本格的政権交代が何故、期待通りに進まなかったのかを淡々と客観的に記録に書き、その上デモクラシーの機能を数値化して改革案を述べた本。新書ではあるが、通常の本一冊分の意味がある。
Posted by ブクログ
この本の価値は終章に尽きる。よく民主主義がうまくいっているとかいないとか言葉だけの議論はあるが、民主主義の機能をデータで測定する研究は独創的である。前半部の民主党政権に関する記述は、終章のケーススタディとして読めば良いのではないか。
Posted by ブクログ
著者の小林良彰氏は国内外の大学で研究を続けている法学博士。現在は慶応大と横国大で政治学と公共政策論を担当。選挙を前に面白そうだと、日経新聞の広告を見て購入。
感想。面白い。時系列で整理してくれる良書。コメントがとても腹に落ちる。
備忘録。
・世論を著者がまとめるに、「政権交代は良かった」が「政権交代で政治が良くなった訳ではない」。
・それは、前回の衆議院選は、民主党が良いというのではなく、自民党には投票したくないという民意によるものだったから。
・エリート民主主義、参加型民主主義
・マスメディアは「強きを助け弱気を挫く」。それが視聴者受けする。小泉を助け安倍を挫く。
・過去に提出された法案の内訳は、衆法10%、参法5%、閣法85%。それほど官僚主体の政治。政治家主導を掲げた民主党は準備不足だった。
・TPP、原発等々、賛否両論あるが、小選挙区で選ばれた代議士は「地域の代表」であり、地域には賛否両論あり、民意を十分に反映できる仕組みなのだろうか。⇒なるほど。
・また有権者もどこまで代議士個人に注目して投票しているのか。終章にいろいろ検証が書かれているのだが、どの政党に属しているかが投票結果に大きく影響しているらしい。党議拘束というのもあるし。
面白い。読んで良かった。
Posted by ブクログ
「政権交代するほど良い政治」といわれて行われた九〇年代の政治改革。
その実態は、権力の担い手が変わっても政治が変わらなければ、有権者にとっては意味がないことを「民主党政権の三年間」を例にとって丁寧に記述したもの。本書の焦点は、選挙前に政治家が約束したことが選挙後に国会で遵守しているかどうかにある。その上で、終章でそれまでの記述を著者が得意とする計量分析でまとめている点を評価したい。また、今後、どのような改革を行えば、より良い政治を実現できるのかについて、著者自身の意見を提示している。さらに巻末では、読売、朝日、毎日の調査結果の一覧や民主党や政府の主要役職一覧を掲載し、今後の研究の素材も提供している。新書とは言え、内容は単行書と同等の読みでがあった。
Posted by ブクログ
筆者の考える選挙制度に関してはあまり同意はできないが、それ以外の部分は読むに値する。特に民主党政権を「世間」がどのようの評価していたかを時系列順に確認するには有用であろう。
Posted by ブクログ
今となっては空手形の別名扱いの「マニフェスト」だが、理念自体は決して否定されるものでないと思うし、考えてみれば公約のない選挙なんて怖くて参加できるものではない。公約の重要性は民主党政権の未熟さとは明確に切り離して冷静に議論すべき問題なのにと思っていたら、この本で見事に論じられていた。
著者によれば原因は小選挙区制度にある。対立候補が互いに多くの有権者の支持を得ようとして総花的な公約を提示する結果、どの政党も政策が似通ってしまう。そしていざ政権を担当し公約を実行しようとすると、有権者の一方の期待に反する行動を取らざるを得なくなるというもの。
また、有権者の側でも自らの意思が政治に反映されるという期待値が極めて低いため、次の選挙では政策ベースでなく単なる政党ベースや知名度ベースでの投票が行われ、勢い投票行動は現行政権への懲罰的な色彩を強く帯びることになる。
かくして有権者が選択したというわけでもなく、実現性も高いわけではない政策を掲げる政権が誕生する。そしての公約が破られ、懲罰的選挙が行われ・・・というvicious cycleが成立してしまうというわけだ。
政治改革が行われた90年代以降、殆どの選挙は政権担当政党の完敗(例外は小泉政権)であったことを考えると、小選挙区制に原因ありとの議論は非常に説得力がある。現在久し振りに安定的な政権を頂く日本だが、低学歴・低所得者が特に現行政権への不満を抱く傾向があることを考えると、何か一つのボタンの掛け違えで民主党政権のような混乱に陥らないとも限らない。今のうちに本書で検討されているような選挙制度改革を検討する必要があると強く思った。
気になるのは題名。主題は明らかに選挙制度にあるのに、これだと民主党政権の総点検のみが中心であるような誤解を与えてしまい、損だと思う。また終章の展開が素晴らしいだけに、中盤までの民主党クロニクルがやや冗長だと思った。
Posted by ブクログ
民主党への政権交代前夜から、
民主党政権における政権運営を概説し、
日本の選挙制度の問題点を探る一冊。
語り口が非常にわかりやすく、民主党政権を振り返るのにちょうど良い。
また、有権者が選挙に際し何を見ているかを明らかにした上で、
その態度を受け入れた上で最適な選挙制度を提言する姿勢には
好感が持てた。
Posted by ブクログ
今になって本の表題の意味がわかった。有権者の目線で何故、民主党政権が誕生したのか、そしてマニフェストがどうして実現できていかなかったのかを冷静に綴り、読んでいて2009年以降の3年あまりを整理でき、面白かった。その上でどうすれば日本政治が良くなるのかについての提言を提示しており、頷けた。一読を勧めたい。
Posted by ブクログ
選挙公約も国会での活動業績も有権者の投票行動には、影響を与えていない。所属政党と僅かに経歴が影響を与えている。
選挙公約の策定方法、候補者の予備選、選挙への公費助成のあり方、選挙制度などについての提言には、斬新な内容が多く再読の余地あり。