あらすじ
失敗を直視し、
再起を果たす決意を持った
謎めいた「天才」――。
日本から決して見えない
「マサ」の真実。
* * *
稀代の勝負師、孫正義。
東洋と西洋をつなぎ、世界の常識を破壊した男の原点とは?
FT前編集長が膨大な取材を基に描いた決定版伝記。
* * *
なぜ孫正義の伝記を書くのか?
多くの人が私に尋ねる。孫正義本人もだ。
ソフトバンク創業者でソフトバンクグループの最高経営責任者(CEO)を務める孫正義に関する日本語の書籍は多い。だが、米欧の書き手によるものは、本書が初めてだ。
本書は伝記だが、孫を褒めるわけでも貶すわけでもない。
本書の目的は、「孫正義を理解する」ことだ。
孫ほど謎めいていて、誤解されている人はいない。日本のメディアも米欧のメディアも、孫を夢想家、金融を巧みに操る人物、投機家として描き、何度も経済的に行き詰まり、破滅するリスクを取ってきた彼に疑いの目を向けてきた。
孫の人生は、近年の金融史の重要な瞬間すべてを辿っているようである。映画「フォレスト・ガンプ」の主人公が、現代史の重要場面に足跡を残しているのと同じだ。
孫はパーソナル・コンピューターの発売からインターネットの誕生、ドット・コム・ブームとその崩壊、中国の台頭、世界金融危機、人工知能(AI)時代の到来にまで立ち合い、おおむねその中心にいた。彼はキーパーソン全員と知り合いで、価値あるものをすべて所有していたか、少なくともその一部を買収しようとしていた。
孫正義は失敗を直視し、再起を果たす決意を持った、謎めいた天才である。
孫正義には、外から見えていない何かがまだあるのだ。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
FTの元編集長が日本やアメリカ、韓国とは異なる第3者的な視点から日本の財界(エスタブリッシュメント)のアウトサイダーと見られてきた孫正義の生い立ちから前編ではアリババの大株主になるまでを時系列的に描く。
ドットコムバブルの破綻やヤフーBBを筆頭としてブロードバンド革命から来るECやインターネットの浸透を見通す先見性が如何に養われてきたかアメリカ留学時代からの投資哲学、投資歴の蓄積が客観的に記述され興味深く読める。
SBI北尾氏との離別やリップルウッド、ヤフーとの駆け引き等飽きることなく読み進める。
Posted by ブクログ
フィナンシャルタイムズの元編集長による孫正義録。"The Gambling Man"というタイトルが言い得て妙。国内の孫正義伝と異なり、公開情報を基にした忖度なしの物語が面白い。常々語られる孫氏の武勇伝の光の部分に対して、影の「きな臭さ」にもしっかり触れられており面白い。
本書の登場人物はみな大物もしくは今や大物となった人物で、早くから孫氏がグローバルに人脈を構築してきたことがよくわかる。そうした人々に対して30代の孫氏が臆することなく大ぼらを語って交渉する姿は字面を通して迫力を感じる。インタビューに応じている人たちは億単位で損害を被った人や結果利用された人が多くいるが、{一部怒り心頭の人もいるようだが)口をそろえて「常人離れした能力を持った憎めない」と評しているのが面白い。
壁にぶつかって転んでもそれを大きく乗り越えて成長する不屈の精神を持った孫正義氏の物語はやはり刺激を受ける。