あらすじ
聖女はなぜ求められるのか? マリアと弱者の救済として注目されるリタを基軸にジャンヌ・ダルク、マザー・テレサなど古今東西の聖女の生涯と奇跡また受容の変遷から聖女の実像を解明する。
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Posted by ブクログ
ジャンヌ・ダルクについての記載有りということで手に取った一冊。著者は別に「ジャンヌ・ダルク」を著している。
本書では、聖母マリアの生涯と聖母あるいは聖処女としてのあり方を多面的に分析している。また、聖女リタ(こちらは初めて知った)の生涯と、彼女が聖女とされた過程を紹介し、両者の正確の違いを際立たせている。カトリックに於ける聖女のシステムや歴史、数々のカトリックにおける奇蹟(聖母の御出現、涙を流すマリア像)の紹介など、色々興味深く読んだ。ジャンヌを桜型の聖女(処女性、短期間で自分の信念を貫いた女性)と分類し、薔薇型(長い苦難の人生の果てに、尊敬される)の聖女と類型を別けて説明されているのも面白い。
最後の第三章は、ルルドをはじめとする、奇蹟が今も続く、現代の聖地巡礼記。カトリックのテーマパーク化した側面とか、それが逆に信仰に関わらず、老若男女を自然に受け入れ、また、弱者こそが巡礼地では敬われるなど、また、カトリックの方々の信仰のあり方なども参考になった。学生を引率しての巡礼の旅行記であり、カトリック信者ではない筆者の冷静な筆致が気軽に読め、そしてなかなか洞察に富んでいると思われた。