あらすじ
「善意」の国際協力は限界を迎えている.アフリカの人びとはSNSや衛星放送で日々目にする豊かな国の暮らしを羨望し,先進国との関係に疑念を抱くようになった.「支援」によって困窮する農村や女性,国際詐欺や陰謀論……長年のフィールド研究の成果をもとに,人びとの目線で「国際協力」の神話を解体し,新たな共存の道を探る.
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Posted by ブクログ
目から鱗のアフリカに対する開発途上国支援の間違いに本書で気付く。著者が指摘の先進国からの上から目線と受益者としてのアフリカの対立は決して新しい話ではないが、では何をどうするかとなると、途端に現地を無視した論理を振り翳しがち。そこにSNSが入り込み、西側諸国への不信と不満を巻き上げて、ロマンス詐欺などにぶつけて昇華するサハラ以南の現状を知る。
著者も、これはアフリカの一面であり全てではない、と謙虚に分析しているが、アフリカの外面は色々あっても、本質は本書の指摘が貫いていると思料。アフリカを知るには友松夕香氏をフォローすることに決めた。
Posted by ブクログ
ロシア観が無茶苦茶面白かった。都市流入して死んでいく、人が少なくてやたらと稠密な農業って、なんかものすごく江戸の日本ぽい。欧米への不信感の物凄さはどうにもならなそうな気がする。ロシア発、イスラム発の情報のほうがまだ少しは信頼できそうというのも納得。ロシアはどうにもならなそうだけど、さて中国に義があるかというとどうか。イスラムはイスラムのロジックがありそうだけど、インドネシアとアフリカのサブサハラと同じロジックでやるのは難しそう。サヘルの親ロシア化。6章と7章は圧巻。最後の提案が提案かどうかはまた別として、この先が読みたい。
Posted by ブクログ
アフリカのガーナでの状況をわかりやすく説明している。カカオについては他の書籍でも触れられているかと思うが、白人を対象としたロマンス詐欺については、初めて活字になったように思われる。ロマンス詐欺を中心においてガーナの経済の問題を掘り下げるのも、出会い系サイトを使う学生にはわかりやすいと思われる
Posted by ブクログ
グローバル格差は、拝金主義を生み、ガーナでロマンス詐欺が人気の仕事になる。学生は詐欺のためのチャットで朝起きられない事態。
学校を卒業しても仕事がない。生活苦。詐欺で稼いだお金で親孝行ができて羨ましがられる。
大衆の陰謀論への共感は、アフリカに関する偏向報道から始まっている。西側の資金援助のために、アフリカの悲惨な場面ばかりが報道されていて、それに嫌気を指している。
フランスの金融帝国主義=旧宗主国のフランの植民地通過を使っている。フランの支配から抜け出せない。
カカオお生産はチョコレートの付加価値の6%しかない。一次産品をそのまま輸出するしかない。穀物を輸入するため。
緑の革命で、旧来の複数土地を肥沃回復させながら行う農業はなくなった。化学肥料がなければ生産できない。土壌が劣化した。化学肥料が買えなければ収量は増えず、手入れを怠るようになる。政府による援助がなければ、生産できなくなった。
女性が、女性を対象にする農業開発事業を歓迎する。収入が増えるため。しかしそのため、女性の仕事がますます増える。女性の過重労働問題が解決しない。
教育受けても食べていけないから、教育より稼ぎを選ぶ。その結果教育レベルが低いままになる。識字教育をすると国際詐欺が増える。
旧仏領諸国を中心に西側諸国の陰謀論が広がっている。緑の革命などの誤った援助と、単一作物への集中。
一次産品の輸出で外貨を獲得する植民地経済から脱却できない。
Posted by ブクログ
世界の動きを見る中で普段ほとんど考えることがないアフリカでのひとつの状況を臨場感をもって伝えてくれる一冊である。内容には興味深いものがあり、日本社会に対して示唆を与えるものも少なくない。
ひとつ、本書の構成としては、終章を前に持ってきて、それで全体感をまず先に把握したうえで、各章へ展開するほうが理解を深められるのではないかと思う。
どうしても普段あまり考えることがない対象であり、各論から入ると思考がまとまらない。本書を読んでいて、そして終章に至ったところでの感想である。
それにしても詐欺をはたらけるほどの英語力がすばらしい。日本の英語教育をもってして、詐欺をはたらくところまではいかないだろう。