【感想・ネタバレ】グローバル格差を生きる人びと 「国際協力」のディストピアのレビュー

あらすじ

「善意」の国際協力は限界を迎えている.アフリカの人びとはSNSや衛星放送で日々目にする豊かな国の暮らしを羨望し,先進国との関係に疑念を抱くようになった.「支援」によって困窮する農村や女性,国際詐欺や陰謀論……長年のフィールド研究の成果をもとに,人びとの目線で「国際協力」の神話を解体し,新たな共存の道を探る.

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Posted by ブクログ

ネタバレ

第一章 請い、与えられる者の日常
ガーナではワクチン接種普及により、1970年代頃から多産少死の時代を迎えた。高等教育率も高まり、多くの若者が学歴に見合うオフィスワークを求めるようになったが、雇用数は限られているため大量失業状態が発生している。国際ロマンス詐欺は、高等教育を受けた若者が自身の識字、語学スキルを活かして収入を得る手段ともなっている。

第二章 農村の国際詐欺師たち
本章では、ガーナにおける国際ロマンス詐欺の実態が詳細につづられている。
結婚式でのご祝儀散財ショーでは、詐欺師たちが羽振りよくお札を宙に舞あげる中、お祝いにきた議員の散財額が少なくてしめしがつかなかった話や、インド人はガーナ人と同じような土着の神を持っており呪いで報復される可能性があるからと、皆がどんどんインド人を詐欺の標的にするのを恐れていった話などがのっていて、読んでいてとても楽しい。
また、ガーナでの国際ロマンス詐欺がいかに分業化され、それぞれの専門スキルを活かして皆で標的をだましているかを記した箇所は、まるでよくできたお仕事小説のよう。
詐欺の罪悪感は、そもそもの貧困状態やお金の使い道の正しさ(家族を養ったり就学のために使ったり)、反白人感情などにより希薄になっているのではないかという指摘には納得した。


第三章 ゴリアテに立ち向かうダビデ
コートジボワールはフランスはじめヨーロッパ諸国の銀行から低い金利で融資を受けたことや、国内カカオ産業発展のため近隣の国々から労働移民を受け入れたことなどにより、1960〜70年にかけて高い経済成長を実現させた。しかし、1970年代後半に世界市場のカカオ価格が暴落したことにより経済危機に陥る。その後の大統領選では「イボワリテ」というナショナリズム的思想が政治利用され、移民排斥を求める声の強い南部(バクボ派)と移民の多い北部(ワタラ派)の間で対立が激化、コートジボワール内戦(2002〜2007、2010〜2011)へと発展した。そして、フランスはワタラ派としてこの内戦に積極的に介入。
こうした中、当初移民排斥のナショナリズムとして盛り上がりをみせていた「イボワリテ」の思想は、徐々に「新植民地主義」批判の愛国主義運動へと転じる。
また、旧宗主国のフランスやアメリカなど西側諸国が鉱物資源を狙ってアフリカ大陸に軍事介入をしているという国際陰謀論が台頭。
この不信感は、フランスや国連による「軍事協力」に対する抵抗運動を生み、ロシアへの支持にもつながるなど、国際政治を変動させている。

第四章 陰謀論に共感する
陰謀論や親ロシア化拡大の背景には、これまでアフリカに対して偏重した報道を行ってきた欧米系メディアに対する強い不信感がある。現地のメディアは資金力が乏しく、長年欧米メディアが発信力を誇ってきたが、近年ソーシャルメディアの普及により幅広い層の人々がそれらから情報を得るようになった。
また、ロシアは武力勢力を鎮圧できないフランスや国連の不手際を拾い上げ、現地の人々が求める戦闘支援をしてきた。
「貨幣の支配」という点からも、フランスに対する人々の憤りは大きい。CFAフランがフランスによるアフリカ支配として批判されているのは、第一にレートがユーロに固定されていること。第二にCFAフラン使用国は国際準備金の50%以上をフランス財務省の運用口座に預けなければならないこと。第三にCFAフランを発行する西アフリカ諸国中央銀行(BCEAO)と中部アフリカ諸国銀行(BEAC)の理事会にフランス政府代表が在籍することにある。

第五章「俺たちは腹が減っている」
2007〜2008年の食糧価格危機は、バイオ燃料の推進と原油価格高騰が関連している。
バイオ燃料は1990年代に気候変動への国際的関心が高まったことから注目を浴びるようになった。原油価格は2003年に米英を中心とする連合軍がイラクへの軍事介入を開始したことで上昇。この影響でバイオ燃料への意識がいよいよ高まる。
その後、2006年末から生じてきた世界金融危機により穀物価格がさらに高騰。資金力のある富裕国が真っ先に穀物を確保したことで価格高騰にいよいよ拍車がかかる。そして低所得国の多くの人々が穀物を買えない状況に追い込まれていった。
また、主要産業が農業のアフリカにおいて穀物が不足する状況となった背景には、IMFと世界銀行の構造調整政策により貿易の自由化が実施され、小麦と米の輸入が増加したことも関連している。

第六章 自分たちの農法を忘れた人々
1940年代から始まった「緑の革命」により化学肥料と品種改良種が普及
→間作と輪作の伝統的農法が衰退
→1980年代IMFと世界銀行による構造調整政策により農業部門民営化が進み化学肥料価格高騰
→化学肥料買えない人続出
→長年の連続耕作と化学肥料使用により土壌は劣化しており、化学肥料なしではなかなか作物が育たない&伝統的農法も衰退している
→労力に見合った収益が得られないのでみんななかなか畑に手をかけなくなる
→アフリカの農業は技術が低いとみなされる

第7章 過重労働をこなす女性たち
開発援助政策では、ジェンダー不平等の解消が重要な課題の一つになっている。農業開発の分野では、女性の地位向上だけではなく、女性による経済開発や貧困削減への貢献を目的として、農業の男女格差を是正するための女性支援が実施されてきた。しかし、農業は重労働である。また農村部では、水汲みや料理、妊娠と出産・育児も大変な労働だ。一九八〇年代から農業による生計が悪化するなか、女性の耕作を後押しする政策は、従来からの日々の家事をはじめとする肉体的な負担に上乗せして、女性たちの農業労働と家計の増加に加担してきた。p201

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2026年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

リアルなアフリカ諸国の現状と問題点が、筆者の経験とともに語られている本。

西側諸国による搾取が今もなお続いていると言っても過言ではないと思った。いつまで経っても真の意味での独立(自立)がなされないのは、支援という名の貧困ビジネスの上で社会構造が構築されてしまっているからだ。現地の声を聞かず、ただ西側諸国が食い物にしていると感じた。特に、緑の革命で現地の文化とも呼べる農法、自然サイクルを完全に破壊してしまったという歴史は実にグロテスクである。自立していた部分を奪い、貧困ビジネスに繋げている。

そして、若者が一攫千金を夢見て挑戦する国際ロマンス詐欺は、日本で言うパパ活のような雰囲気があると感じた。結局、窮地に追い込まれた者はそのような汚い手(色恋)を使う以外に方法がないのか。

筆者の言及する、現地での雇用機会を増やす取り組み、原材料の加工、商品の生産までを行う取り組みが増え、社会構造が変化することを願う。

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2025年12月07日

Posted by ブクログ

目から鱗のアフリカに対する開発途上国支援の間違いに本書で気付く。著者が指摘の先進国からの上から目線と受益者としてのアフリカの対立は決して新しい話ではないが、では何をどうするかとなると、途端に現地を無視した論理を振り翳しがち。そこにSNSが入り込み、西側諸国への不信と不満を巻き上げて、ロマンス詐欺などにぶつけて昇華するサハラ以南の現状を知る。
著者も、これはアフリカの一面であり全てではない、と謙虚に分析しているが、アフリカの外面は色々あっても、本質は本書の指摘が貫いていると思料。アフリカを知るには友松夕香氏をフォローすることに決めた。

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2025年10月30日

Posted by ブクログ

ロシア観が無茶苦茶面白かった。都市流入して死んでいく、人が少なくてやたらと稠密な農業って、なんかものすごく江戸の日本ぽい。欧米への不信感の物凄さはどうにもならなそうな気がする。ロシア発、イスラム発の情報のほうがまだ少しは信頼できそうというのも納得。ロシアはどうにもならなそうだけど、さて中国に義があるかというとどうか。イスラムはイスラムのロジックがありそうだけど、インドネシアとアフリカのサブサハラと同じロジックでやるのは難しそう。サヘルの親ロシア化。6章と7章は圧巻。最後の提案が提案かどうかはまた別として、この先が読みたい。

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2025年09月08日

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アフリカのガーナでの状況をわかりやすく説明している。カカオについては他の書籍でも触れられているかと思うが、白人を対象としたロマンス詐欺については、初めて活字になったように思われる。ロマンス詐欺を中心においてガーナの経済の問題を掘り下げるのも、出会い系サイトを使う学生にはわかりやすいと思われる

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2025年10月19日

Posted by ブクログ

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グローバル格差は、拝金主義を生み、ガーナでロマンス詐欺が人気の仕事になる。学生は詐欺のためのチャットで朝起きられない事態。
学校を卒業しても仕事がない。生活苦。詐欺で稼いだお金で親孝行ができて羨ましがられる。

大衆の陰謀論への共感は、アフリカに関する偏向報道から始まっている。西側の資金援助のために、アフリカの悲惨な場面ばかりが報道されていて、それに嫌気を指している。
フランスの金融帝国主義=旧宗主国のフランの植民地通過を使っている。フランの支配から抜け出せない。
カカオお生産はチョコレートの付加価値の6%しかない。一次産品をそのまま輸出するしかない。穀物を輸入するため。

緑の革命で、旧来の複数土地を肥沃回復させながら行う農業はなくなった。化学肥料がなければ生産できない。土壌が劣化した。化学肥料が買えなければ収量は増えず、手入れを怠るようになる。政府による援助がなければ、生産できなくなった。

女性が、女性を対象にする農業開発事業を歓迎する。収入が増えるため。しかしそのため、女性の仕事がますます増える。女性の過重労働問題が解決しない。

教育受けても食べていけないから、教育より稼ぎを選ぶ。その結果教育レベルが低いままになる。識字教育をすると国際詐欺が増える。

旧仏領諸国を中心に西側諸国の陰謀論が広がっている。緑の革命などの誤った援助と、単一作物への集中。
一次産品の輸出で外貨を獲得する植民地経済から脱却できない。

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2025年11月21日

Posted by ブクログ

世界の動きを見る中で普段ほとんど考えることがないアフリカでのひとつの状況を臨場感をもって伝えてくれる一冊である。内容には興味深いものがあり、日本社会に対して示唆を与えるものも少なくない。

ひとつ、本書の構成としては、終章を前に持ってきて、それで全体感をまず先に把握したうえで、各章へ展開するほうが理解を深められるのではないかと思う。

どうしても普段あまり考えることがない対象であり、各論から入ると思考がまとまらない。本書を読んでいて、そして終章に至ったところでの感想である。

それにしても詐欺をはたらけるほどの英語力がすばらしい。日本の英語教育をもってして、詐欺をはたらくところまではいかないだろう。

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2025年09月28日

Posted by ブクログ

西アフリカで長年フィールドワークを続けてきた著者が考える真の国際協力とは。
日本のメディアが報じない側面をほんの少しだけ知ることができた気がする。

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2025年09月05日

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