【感想・ネタバレ】ネットとリアルのあいだ――生きるための情報学のレビュー

あらすじ

現代はデジタルな情報がとびかう便利な情報社会である。にもかかわらず、精神的に疲れ、ウツな気分になるのはなぜか。悲鳴をあげているのは、リアルな「生命」そのものでないだろうか。人間の身体と心をやさしく包んでくれるITの未来を考える。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

人間の心を機械で作る試みはまだ発展途上で、失敗の原因は言語的自己ばかりを求め、身体的自己を蔑ろにしているからである。
心のはオートポイエティック・システム(自己創造)である。
インターネット(殊バーチャルリアリティ)の問題は、人間の知覚(嗅覚や触覚や味覚)を使っていないことである。主に言語脳しか使わないため、所謂ネトゲ廃人は虚無感や虚脱感等の精神疾患になりやすい。

精神よりも肉体に重きを置きましょう、という主張は、甲野善紀さん、池谷裕二さんと同じです。頭で考えるより、先に身体を使って行動せよ。これには賛成します。でも日本には余裕がない。だから失敗は許されない。許されないならどこで経験を積むのか。それが今の日本の課題だと思います。失敗をカバーできるように全体でサポートしなければならないのですが、まだまだ環境が整っていません。

喜怒哀楽といった感情ではスムーズな社会運営はできない、だから言語を用いて理性で問題を解決しようとしたのが歴史です。そして再び感情や身体に注目していこうとする最近の流れを見ると、へーゲルの弁証法を思い出します。
Aというテーゼ(言語を用いないで感情や身体を使って生活していた頃。イメージとしては原始時代)から、Bというアンチテーゼ(感情に流されて行動するのは野蛮だ。言葉を用いて理性的に問題を解決しようとする風潮。イメージとしては中世以降か?)へ、そして現在はジンテーゼC(言語中心では心が荒むだけだ。感情や身体にも気を配らなければ)に落ち着いています。弁証法的に見ると、当たり前の流れですね。

やっぱりリアルの世界が充実しないと、人間は腐っていくように思います。いくらバーチャルが良くても、ベースとなるリアルの世界で自己肯定感が無いと、生きる価値が見出だされずに荒廃していきます。

「成功率なんてものはただの目安だ。あとは勇気で補えばいい!」
アニメ「勇者王ガオガイガー」より

この名言が好きです。
本当にその通りなんです。政治も経済も、本当は失敗しちゃいけないのにもかかわらず、失敗しています。一流企業でも不祥事を起こします。
だから完璧じゃなくて良いのです。とりあえず当たってみて、ダメな時はあまり真剣に悩まず、常にポジティブに考えて行動することが大切です。
今の若年層のニートも、著者らしく言えば『言語的自己』ばかり使っているのです。かくいう僕も頭でっかちで(笑)、『僕に足りないのは経験だ!』とは分かっているのですが、新しく就職活動をする勇気がない(ただ今絶賛ニートです笑!)、新しく友達をつくる勇気がない等、ほとほと困り果てています。
ですが、このままでは廃人行きは目に見えています。
感覚の大切さは分かっていますが、それを理解してくれないのが社会です。
「根拠のある自信は、根拠が崩れると自信が無くなるが、根拠のない自信は、崩れることはない!」
こういった、感覚に頼るというのも必要ではないでしょうか。

知的好奇心を満たすものとしては面白いですが、実際問題として、『じゃあネットとリアルのあいだに挟まれている私はどうすればいいの?』という疑問には答えてくれません。そういった処方箋を求めている方にはオススメできません。僕の評価はA-にします。

0
2013年05月25日

「社会・政治」ランキング