あらすじ
新たに紡がれる恋と空戦の物語、見参!
「海猫を墜とせ」
――天ツ上(あまつかみ)海軍撃墜王、千々石武夫(ちぢわ・たけお)飛空中尉に下されたその命令が、すべての始まりだった。
独断専行により海猫に一騎打ちを仕掛け、敗れた千々石は、再戦を胸に秘めていくつもの空戦場を渡る。
「空が選ぶのはお前ではない、おれだ」
「空の王はどちらか、決めよう」
激情の赴くまま撃墜を重ねる千々石の背後には、常に謎の国民的歌手、水守美空(みずもり・みく)の影が見え隠れする。千々石が片時も手放さないレコードに込められた想いとは……。
『とある飛空士への追憶』の舞台となった中央海戦争の顛末を描く、新たなる恋と空戦の物語。上下巻で登場!
『新世紀エンタメ白書2009』ブックランキング1位、2008年Amazonエディターランキング1位、2008年Amazon売り上げランキング6位、2009大学読書人大賞2位など、すばらしい評価を受け続け、ついに映画化・単行本化もされた『とある飛空士への追憶』のスピンオフ作品!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
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Posted by ブクログ
とある飛空士への追憶のアナザーストーリー。というか帝政天ツ上側から見た戦争のお話。
追憶ではライバルだったビーグルを主人公とし、語られなかったこの戦争の軸をといていきます。第二次世界大戦末期の日本をなぞるかのようなストーリーがせつなくて、漢泣きに泣ける仕上がりになっています。
個人的には、今あるとある飛空士シリーズの中で、一番好きかもしれません。
Posted by ブクログ
追憶でシャルルと激しい戦いを繰り広げたビーグルこと千々石の物語。追憶の時代からゆえか、話が引き締まっていた印象です。そして、物語を知るとビーグルに愛着がどんどん湧いて来るのを感じました。彼はこんなにも人間的だったんどな、と。想い人がいながら、相手を想う故に受け入れられないところとかがもう。そして、戦いは千々石が望むように、二人が空で再開するように進んで。果たして、二人の戦いの行方がどうなるのか。千々石の恋はどうなるのか。楽しみです。
Posted by ブクログ
いやー、うまいなあ。
こういう毛色の作品を読む人の多くは、当然ミッドウェー海戦の経過と結果を知ってて、あからさまな天ツ上敗北フラグをチラつかせて実は……。
レヴァーム側に明らかにニミッツとハルゼーがモデルの提督が出てきたということは、スプルーアンスとフレッチャーをモデルにした提督は負けちゃったのかな。
Posted by ブクログ
『とある飛空士への夜想曲 上』は、空の果てに生きる者たちの誇りと、戦火に焼かれながらもなお人を想う心の軌跡を描いた、静かな激情の物語である。
前作までで培われた壮麗な世界観を受け継ぎつつ、本作は視点を大きく転じ、敵国側からの視線で「空」と「愛」と「祖国」の意味を問い直す。その挑戦こそが、この巻をシリーズの中でも特別な位置に置いている。
物語の中心に立つのは、天ツ上の若き飛空士・千々石武夫。生まれと立場に翻弄されながらも、空を飛ぶことへの純粋な憧れと、自らの信念だけを頼りに戦場を駆け抜ける姿には、犬村小六らしい“孤高のロマン”が息づいている。
彼の視界に映る空は、ただの戦場ではなく、人の尊厳と運命が交錯する巨大な舞台であり、その描写の一つひとつに、作家の筆が放つ透明な緊張感が宿る。
また、再び交錯する男女の運命は、愛と義務、過去と現在、理想と現実の狭間で静かに軋む。
戦いの中で描かれる恋は、決して甘やかなものではない。むしろ互いの痛みを引き受けながら、それでも相手を思わずにはいられない――そんな人間の原点的な情感が、読み手の心を深く揺さぶる。
上巻という枠の中で大きな決着はまだ訪れないが、その“嵐の前の静けさ”が逆に、下巻への不穏な予感と切なる期待を呼び起こす。
全体として、本作は単なる空戦活劇に留まらず、「国家」「信念」「個人」といった主題を内包した文学的骨格を持つ。
それぞれの立場で生きる者たちが、空を通して己の真実を見出そうとする――その姿は、現代を生きる私たちにも通じる、自己の存在理由を探す旅に重なる。
戦争という極限の現実を背景にしてもなお、作中には“希望”の灯が確かにある。それは、飛空士たちが命を懸けて見上げた青空そのもののように、痛ましくも美しい光だ。
Posted by ブクログ
追憶で主役だった「海猫」、その敵対国の撃墜王である「ビーグル」の視点で書かれた話。
追憶を読んだのは何年か前でしたが、読み進めるほどに内容を思い出して、あのシーンのときの「ビーグル」はこんなことを考えていたのかと噛み締めるように読みました。
相変わらず空戦のシーンが素晴らしかった。文章を追うほどに気持ちが高揚していく。あっけなく散る命に戦争の残酷さを感じながらも、撃墜王として名を馳せる「ビーグル」の活躍に心が躍る。
ただ、やはりイラストと、いかにもラノベだなぁという女性キャラとの会話にはがっかりします。
ラノベ以外の分野で書いてくれたら嬉しいのですが…。