あらすじ
はじめて愛した人は、最愛の母の仇だった。
幾百の空砲がイスラの青空に虚しく響いた。本来、死者を納めるべき木棺は、主なきまま聖泉へと落とされていく。
「――わたしは卑怯だ」
仮面の裏に感情を押し込めることには慣れていたはずの、クレアのこころが揺さぶられる。若き飛空科生徒たちの死は、ひとり避難し、生きながらえたクレアの身を苛んでいた。
「――辛いよ。カルエルくん」
目の前で仲間を失い、一回り成長したかにみえたカルエルはしかし、皆の信頼を受ける一方で激しく焦燥していた。その晩、感情のままに叫び、走り、思いがけず辿り着いたシルクラール湖でクレアと再会したカルエルは、その心情を吐露し、自分の正体を明かしてしまう。しかしクレアは、カルエルの期待と裏腹に、彼に別れを告げた。
「好きだから……さよなら」
追いすがるカルエルがクレアを抱き留めようとしたそのとき、夜空から伝う爆音――。空の一族! 空爆と対空砲火により、紅い炎に包まれるセンテジュアル。その炎を背に影絵のように映し出されたクレア。その白い顔からは、感情が失われていた。
「……きみ……は……」
ついにクレアの正体を知ってしまったカルエルは――。
王道スカイ・オペラ「飛空士」シリーズ、衝撃と絶望の最新刊!!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
最果ての空を目指す大遠征、そこで展開される飛空士の戦いと恋の行方を紡ぐ物語です。
2011年に映画化された第1作『とある飛空士への追憶』と同じ世界観ながら、場所も立場も全く違うキャラたちが本作の主役!未知を探求する空の旅路、これだけでも非常に胸高鳴りますが、さまざまな人間模様もまた見どころです。
国を追われた元皇子の主人公は復讐を胸に旅立つも、仲間との交流や好きな女の子への恋心を通じて成長し、やがては誇り高き飛空士へ……。
5巻完結で物語の緩急が上手く構成されているところもいいですね。和やかな日常が一変して残酷な現実に突き落とされる場面など、対比がとても印象に残ります。
今年からアニメも始まり、空戦シーンがどう表現されるのか非常に気になる……!
原作ではキャラの心情や詳細な設定も書き込まれていますので、アニメで映像ならではの演出を楽しみつつ、原作で世界観をより深く味わうのが一番!
激動の時代を翔け抜ける飛空士の物語、どうぞご覧くださいませ!
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Posted by ブクログ
あれ、おっかしいな…すごく心動かされたはずなのに…今思い出せるのがツンデレイグナシオしかない……
ようやくイグナシオが正体を明かしてくれて嬉しい。
物語が動くこと動くこと。重要なシーンがたくさんあるね。ベンジャミンの理系設定がようやく生きた。
全員が全力を尽くしていて、みんな愛おしい。
Posted by ブクログ
4章の見出しがこの本のタイトルになってることからおそらくこの物語のメインとなる4巻。
初めてちゃんと出てきたイグナシオの助けもあり、へたれ皇子が大きく成長する。
互いの正体を知り一度は絶望するが、カルエルはようやく過去の呪縛から解放される。が、このままフィナーレとはいかないらしい。
5巻も楽しみだ。
Posted by ブクログ
青春と戦争が交錯する切なさに心を揺さぶられる一冊でした。カルエルは仲間の死や理不尽な現実に直面しながら、王子としてではなく一人の若者として成長していきます。その姿は痛々しくも美しく、読者の共感を誘います。クレアとのすれ違う想いもまた、身分の壁という重たいテーマを伴い、物語に深みを与えていました。空戦シーンは緊迫感があり、手に汗握る展開が続きます。とりわけ、戦場での選択と喪失がもたらす心の痛みがリアルに描かれており、ページをめくる手が止まりませんでした。甘さだけでなく、現実の残酷さにも向き合ったこの巻は、シリーズの転機とも言える名作です。
Posted by ブクログ
ついに佳境に向けて動き出した第4巻。最終巻が楽しみでしかたない。
作者曰く、シェークスピアをモチーフにしてるとかなんとか。カルエルやクレアには是非とも幸せになってもらいたいものだけど、シェークスピア=四大悲劇程度の知識しか無い私にとっては最終巻発売が怖くもある。BADENDなら死ねる自信がある。
Posted by ブクログ
「革命で両親を殺された皇子が敵である風使いの能力者とお互いに正体を隠したまま、空をとぶ島で出会い、空の果てを目指す冒険の旅を往くお話」の4冊目。
少年と少女がお互いの正体を知り、絶望を感じながら、戦いの中でそれを乗り越えていくというあたりの4巻。
正規兵がやられてしまって、学兵が献身的に重要な役割をヒロイックに演じ、それを受けて、主人公のカルエルが底力を発揮する。そしてついにヒロイン、クレアが失われた力を取り戻す。
というとこが盛り上がりどころだが、
3巻からあまり変わっていないのと、どうにも空賊側敵として魅力が感じられないもので、少年たちの戦いの熱さに乗りきれない。つまらないわけでもないのでは、あるが。
最終巻で、なんでそんな暮らしをして、なんでそんな生産力があるのかさっぱりわからない空賊の秘密に迫れることを、願いましょう。